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夜を乗り越える
作家 / カーソン・ライダー 
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    又吉直樹の初新書となる「夜を乗り越える」(小学館よしもと新書)を読んだ。

    なぜ本を読むのかについて、又吉自身の生い立ちからのエピソードを交えながら率直に書いている。

    一番、心に残ったのは第4章の「僕と太宰治」である。

    又吉直樹が太宰の文学をこの上なく愛していることが伝わってくる。

    それだけでなく、自殺をした日 6月13日の夜さへ乗り越えられていたら「全部嘘でした」ですんだかもしれないと綴っている。

    「死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがあるまでのフリだと信じるようにしている。のどが渇いているときの方が水は美味い。忙しい時の方が休日は楽しい。苦しい人生の方が、たとえ一瞬だとしても、誰よりも重みのある幸福を享受できると信じている。その瞬間がくるのは明日かもしれないし、死ぬ間際かもしれない。その瞬間を逃がさないために生きようと思う。得体の知れない化け物に殺されてたまるかと思う。」

     

    小説を読む意味についてよりもこの文章にKOされた。

     

    誰にでもそういう夜はある。そういう夜を乗り越えるために音楽や小説や絵画がある。

    そう強く思った。

    そして、僕はいま夏目漱石の「こころ」を読んでいる。

     

     

     

     

     

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    書き出しの凄味
    作家 / カーソン・ライダー 
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      JUGEMテーマ:読書

       

      前回のブログで記せなかったことを書く。それは「愛に乱暴」の書き出しの凄味である。

      書き出しの強烈なインパクトに心をつかまれたのは、伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」「重力ピエロ」、村上龍「イビサ」、佐藤正午「ジャンプ」などが思い出される。

      それに匹敵するものである。

       

      セックスをしたか、してないか、なんて関係ない。お互いに心の底から会いたいと思っている時点で「一線」はすでに超えてしまっている。

       

      この言葉に惹きつけられるように350ページをあっという間に読破した。

      流石は吉田修一である。

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      結末に一条の光が差してくる作家 菊池寛を読む
      作家 / カーソン・ライダー 
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        JUGEMテーマ:読書

        今日は先週の土曜出勤の代休であったので、図書館で半日をのんびり過ごした。

        かねてから読んでみたいとは思ってはいながら未読の作家である菊池寛全集を読んだ。

        菊池寛といえば、作家以上に文藝春秋社長であり芥川賞及び直木賞を創設した人物としての存在感の方が大きいかもしれない。

        全集のあとがきで井上ひさしが記しているが、菊池寛=結末で一条の光が差してくる作家である。

        全集に収められている作品として、心に強く残ったのは「恩讐の彼方に」「忠直卿行状記」「島原心中」である。

        いずれも、人間の心の中に潜む弱さ、脆さを描きながらも、最後には善なるものに光をあてる作品となっている。

        彼自身の人生が数奇な周囲の人間の善なる温かさに導かれてきたという背景が潜在的に作品に投影されているのではないか。

        一言でいえば、救われる物語である。

        救いようのない殺伐とした諍いな争いが絶えない現代にあって、菊池寛の作品はもっと評価されて良いのではないかと感じた。

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        ディスコミュニケーションの小説
        作家 / カーソン・ライダー 
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          JUGEMテーマ:読書

           

          今日は七草粥である。

          新しい年を迎えて、一週間が過ぎた。

          今日も図書館で読書に耽っていたのであるが、既に3冊の本を読んだ。

          「ピアッシング」「ラッフルズホテル」「KYOKO」である。全て、村上龍の未読の作品である。

          一番、読後感が良かったのは「KYOKO」である。

          村上龍自身が監督として撮った映画の元本である。だが、映画は見ていない。

          一言でいえば、希望と再生のロードノベルという括りになるのだろう。

          アメリカの大地において日本からやってきた無垢なKYOKOのもつ純粋な善に惹かれる人々。

          そして、ラストの一条の光。

          村上龍にしてはストレイトに心に届く分かりやすい物語である。

          村上龍初心者や「限りなく透明に近いブルー」に拒絶反応を示す人たちに読んでもらいたい小説である。

          3冊の中で一番、刺激的だったのは「ピアッシング」である。

          一種のサイコスリラーのような内容であるが、その背景にあるものは児童虐待であり、殺人衝動、多人格障害など現代の病巣が横たわっている。

          「僕は人間はお互いにコミュニケーションするのがほぼ不可能な存在なんだという認識から小説を書くべきだと思っています。」

          だからこそ、他者とかかわるときに言葉を探さなくてはならないのだという考えに共感する。

          「ピアッシング」は密室心理劇である。

          登場人物はふたり。そして、ふたりの会話は全く成立しない。最初から最後まで。

          そのズレの中でのふたりの緊張感を孕んだ対峙が脳を鋭角に刺激して止まない。

          そこが村上龍の最大の魅力である。

           

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          村上龍の言葉 最新エッセイより
          作家 / カーソン・ライダー 
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            村上龍の最新エッセイ「星に願いを いつでも夢を」(kkベストセラーズ)を読んだ。

            タイトルとは相反するいつにもましてシニカルな内容である。

            政治体制や既成メディアに対して批判をしても何の意味もないという心境が綴られているのが、いささか寂しい気もしたが、日本がどんづまりの状況であることには違いはあるまい。

            そんなエッセイの中、心に強く残った文章があった。

             

            「小説を書くということに対して素人」というわけでもなく、プロの作家だという自覚はあるが、それは「慣れる」とは違う。似たようなネタで書き続ける作家は「慣れる」ということがあるかもしれないが、わたしは似たようなネタ、文体を使うことはほとんどないし、そんなことはしないと決めている。そんなことをしたら飽きてしまう。

            小説のアイデアが枯渇したら盆栽でもやるかなと真剣に考えたこともあるが、幸か不幸か、アイデアがつきることがない。

            アイデアが尽きないということは、自分が小説を通して伝えたいと思っていることが、読者にいまだに伝わっていないという自覚があるからだろう。伝わったと思ったら、たぶんもう書かないかもしれない。」

             

            深く共感した。だからこそ、村上龍の小説は刺激的であり続けているのである。

            「五分後の世界」「コインロッカーベイビーズ」「愛と幻想のファシズム」「イビザ」「イン ザ ミソスープ」「昭和歌謡大全集」挙げていけばきりがない。

            村上龍にとって、小説を通しての表現活動そのものが趣味では得られない充足感やカタルシスをもたらすマグマの放出であることが、読者としてはこの上なくうれしいのである。

             

            いま、未読だった「半島を出よ」を図書館で借りて読んでいる。一気に上巻も残すところ70ページである。

            半端なくおもしろい。11年前に書かれたものだが、今読んでもその目の付け所はシャープであり、説得力がある。

            流石である。

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            全てを吹き飛ばす力 北町貫太の物語
            作家 / カーソン・ライダー 
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              JUGEMテーマ:読書

               

              本好きを自認する自分にとっての今年一番の収穫は「西村賢太」との出会いである。

              私小説は基本的にはあまり読まないのであるが、西村賢太の小説のもつむき出しの熱量に圧倒されてしまった。

              昨日、今日とで立て続けに2冊を読了した。

              「やまいだれの歌」と「蠕動で渡れ、汚泥の川を」である。

              北町貫太、17歳から20歳までの行状記である。

              孤狼気取りでスタイリスト。しかし、見掛け倒しで小心者。

              働くことが嫌いで、コンプレックスの塊。

              日払い労働で稼いだお金は、その日の内に酒代で消える自堕落な生活。

              家賃滞納を繰り返し、挙句のはてに踏み倒しては夜逃げ同然で彷徨を続ける日々。

              そして、冷酒が入れば、必ず職場において暴言・悪態の数々。

              自己嫌悪にさいなまれながら生きる姿が痛々しく、そして切なさすら感じる。

              この2作は西村賢太の長編小説といわれる2作であり、代表作であると思う。

              貫太の行動は、幼稚かつ短絡であり、10代にして踏み外れた人生の軌道を何とかして修正しようともがくさまな無様ではあるものの、希望を決して失わない姿を応援したくもなる。

               

              思えば、自分自身も貫太に似ている部分がたくさんある。

              貫太ほどではないが、激すれば怒りをぶちまけてきた経験もあるし、深い自己嫌悪に苛まれたこともある。

              上司にこびへつらうこともできず、下衆な気持ちを抱きながら超然と孤狼を気取ってみたことも・・・

               

              あまりに人間的すぎる貫太は社会にうまく順応できぬ存在ではあるが、あながちそれは悪いことばかりでもないだろう。

              学歴社会の落伍者であっても、人生の落伍者にはなっていないという貫太の気概に共感している自分がいる。

              私小説は基本的に自爆小説であると誰かが言っていたが、西村賢太が描く北町貫太の物語は暗いだけではなく、すべての陰湿なものをも吹き飛ばすほどの力を秘めている。自分が心惹かれる理由はそこにある。

               

               

               

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              フェイバリットの規準
              作家 / カーソン・ライダー 
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                JUGEMテーマ:読書

                 

                フェイバリットの規準とは何だろうか?

                自分にとって好きな作家とはと問われてその規準になるものとして、自分はその作家の本を10冊以上読んでいるかということを目安にしている。

                その規準をクリアーした作家を列記してみると・・・

                偉大な先人では芥川龍之介、志賀直哉、太宰治。

                現代作家では、松本清張、村上龍、村上春樹、椎名誠、重松清、伊坂幸太郎、西村京太郎、白石一文、柳広司、西村賢太、東野圭吾となる。

                あと数冊で仲間入りを果たすのが、佐藤正午、中村文則である。

                好きな作家が増えていくことは、読書好きにはたまらない幸せである。

                 

                今日は、図書館で佐藤正午のエッセイ「豚を盗む」と短編集「スペインの雨」を読了した。

                物語を紡ぐ稀代の作家、佐藤正午のエッセイは淡々とした味わいは伝わるものの、期待していたほどの「シニカルさ」「乾いたウィット」があまり感じられず、出来としては平均的なものではないかと感じた。

                やはり、この作家の魅力は物語、特に長編にある。

                そう思いながらも未読の短編集「スペインの雨」を一気に読んだのだが、読み終えた後でほろ苦さが胸に残る恋愛集であり、佐藤正午らしさは十分に表現されていると思う。手放しで傑作とは呼べないが。

                 

                特に印象的だったのは、表題作の「スペインの雨」である。

                恋人がいるにもかかわらず、テレクラで出会った人妻の電話を待ち続けている主人公。

                合言葉は「スペインの雨はどこに降る」。

                プロセスを経ない一夜の恋。

                プロセスがないからこそ余韻が心を締め付ける。刹那だから永遠なのだ。

                主人公の心情に共感を覚える自分が確かにいた。

                 

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                必要になったら電話をかけて
                作家 / カーソン・ライダー 
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                  レイモンド・カーヴァーが亡くなってから10年以上たって発掘された作品がある。

                  短編集「必要になったら電話をかけて」(中央公論新社)である。

                  発掘された作品は、彼の名作といわれる作品に比肩するものとは正直いえない。

                  訳者の村上春樹もあとがきでこう記している。

                  特にタイトルにもなっている「必要になったら電話をかけて」は後の名作の原型ともいえるエピソードが詰め込まれている。

                  しかし、カーヴァー自身がこの作品を徹底的に掘り進めていくことよりも、あくまでもスクラップとして再利用しようと考えたのではないかと述べている。

                  確かに、最後の一文の皮肉さはカーヴァーの独特かつ乾いた滑稽さというものを表出してはいるが、「頼むから静かにしてくれ」などの傑作に比べて、短絡的で深みにかける大きな一因となっている。

                  しかし、逆に現実的に考えた時に、この主人公のとった行動以外にとるべき行動があるのかともいえるのだが・・・

                  つまり、現実世界の無味乾燥さを小説世界がどう超えていくかということに小説家の懐の深さというか表現力がかかっているということを改めて考えさせられた作品である。

                  そうはいっても、自分はこの作品も好きである。

                  抑制された文体から、あたかも無造作に放り出されたような言葉。

                  行間にあふれる夫婦の内面の機微。感情の揺れ動き。

                  カーヴァーにしか描けない世界が確かにある。

                   

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                  圧倒的なリアリティ 西村賢太を貪り読む!
                  作家 / カーソン・ライダー 
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                    JUGEMテーマ:読書

                    これだけ同一作家の作品を立て続けに読むというのもここ20年ではなかった。

                    その作家とは西村賢太である。

                    私小説の新たな旗手といわれている。

                    作風は一言でいえばワンパターン。しかし、それでいてひきつけられるのは、会話の切実なまでのリアリティであろう。

                    借り物、作り物ではない言葉がずしりとどてっぱらに響くのである。

                    特に「秋恵」ものといわれる、同棲相手とのやりとりは秀逸である。

                    今日も図書館で創作集のデビューとなる「どうで死に身の人踊り」と「暗渠の宿」を一気読みした。

                    大好きな秋恵がそばにいなければ、捨て犬のごとく寂しさに打ちのめされるくせに、生来の短気が高じて、些細な言い争いから暴言・暴力の限りを尽くす北町貫太。

                    そのくだりは、同じ男として「何してんだ!」と思いつつも、幾度となく繰り返す後悔に打ちのめされる姿には「バカだな」と思いながらもなぜか共感してしまうのである。どこか憎めない男なのである。

                    女性の読者は嫌悪しか覚えないかもしれないが・・・

                    暴力に及んだがために、実家に戻ってしまった秋恵を思い、ふと目についた部屋の片隅におかれた秋恵の下着を手にしながら、手淫に及んでしまう姿は滑稽でありながらも、狂おしいまでの切なさを感じてしまうのである。

                    和解したあとでも、嘘のつけない貫太はその一切合切を吐露してしまい、結局は変態呼ばわりされ、不貞腐れてしまうのであるが・・・

                    女性との関わりだけでなく、時代の流れそのものにうまく順応できないその生き方が彼の敬愛する大正期の作家、藤澤清造に傾倒する根源になっているわけだが、その傾倒ぶりの真摯さに男気が溢れ、その点も魅力となっている。

                    図書館を出た後で、新作が無性に読みたくなり書店に馳せ参じた。

                    「蠕動で渡れ 汚泥の川を」(集英社)を早速読んでいる。

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                    空より高く
                    作家 / カーソン・ライダー 
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                      JUGEMテーマ:読書
                      数年ぶりに重松清に浸っている。
                      今日も図書館で「空より高く」(中央公論社)を読み終えた。
                      かつての賑わいを見せたニュータウンの造成地に建つ高校も、入居者が予想を大きく下回った影響を受け廃校が決まるところから物語が始まる。
                      熱血教師「ジン」先生の「レッツ ビギン」の掛け声のもと、高校生が最後の花をさかせるべく立ち上がるという、いかにも重松清らしい青春小説である。終わりから始まる物語でもある。
                      重松清の小説を音楽に例えるなら、大瀧詠一作曲の「少しだけやさしく」がぴったりだと思う。
                      ちょっと落ち込み気味で、テンションが上がらないときにはまるで傷口を優しく包んでくれる包帯のような味わいである。
                      登場人物はみな善良な人々であり、言ってみればどこにでもいる普通の人たちである。
                      そして、心にちょっぴり不安や悩みを抱えながら生きている。その健気さに共感するのである。
                      もしかしたら、重松清が描く普通の善良な人々こそが今の時代には稀有な存在なのかもしれない。
                      だからこそ、読んでいて心がほっこり温かくなるのだろう。
                      かつての名作「流星ワゴン」「きみの友達」「その日の前に」「疾走」ほどの物語の深みや力は感じられないが、それでも安心して読める、外れのない作家である。
                      刺激的なテーマを求める読者には物足りないかもしれないし、昔の青春ドラマの脚本を読んでいるような昭和の匂いを感じさせる作風ではあるが・・・
                      とにかく読後感は爽快であり、私は大満足で図書館を出た。
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