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私の恋人
読書 / カーソン・ライダー 
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    第35回三島由紀夫賞を受賞した上田岳弘の「私の恋人」(新潮社)を読んだ。

    あの又吉直樹の「花火」と賞を争った作品である。

    まず、物語の設定がおもしろい。

    10万年前、クロマニョン人であった主人公の「私」が、第二次世界大戦前のドイツ ベルリンではユダヤ人 ハインリヒ・ケプラーに生まれ変わり、そして、現代の世では日本人 井上由祐と生まれ変わりを遂げ、永遠の恋人との出会いを求めるのである。

    だが、タイトルに騙されてはいけない。

    時空を超えた甘い恋愛小説ではない。

    人類が進化発展を遂げていく過程の中で、同じ過ちを繰り返しながら生きて行くのが人類そのものの歴史であるという事実を例証しながら突き付けてくる。その代表が虐殺をはじめとする殺戮である。ナチスのユダヤ人虐殺しかり、アメリカのインディアン虐殺から原爆投下。現代におけるイスラム原理主義に基づくテロ行為などなど。

     

    そんな人類の行く着く先のことなど、聞くまでもなく分かり切っていたことだと語る主人公。

     

    それなのに、なぜだろう?私はあの時、私の恋人に呼びかけずにはいられなかった。

    10万年前になした私の問いかけの答えさえ、それが眼前に現れると、きっと躊躇なく踏んづけて粉々にしてくれる、諦めを知らない、たまらなく可愛い、私の恋人。

     

    情け容赦のない不寛容な人類の歴史の繰り返しの中にあって、好きな人に逢いたいと素朴に思う真情こそが救いになる。

    ラストにそんな光を見たような気がした。

     

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    きみはいい子
    読書 / カーソン・ライダー 
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      JUGEMテーマ:読書

       

      一週間前に読み終えていながら、書きそびれていた本がある。

      数年前に話題になった中脇初枝の「きみはいい子」(ポブラ社)である。

      確か、2013年の本屋大賞の第4位にランクインした本である。

      なぜ、書きそびれていたのか?

      それはこの本の扱っているテーマの重さである。

      「虐待」。実際に大阪でおきた児童虐待の事件にインスパアされたという話も聞いた。

      連作短編集であり、読みやすいのであるが、読み進めていくことが辛い自分がいた。

      実際、自分も少年期において父親からの虐待を体験している。

      自分に対してというより、母親に対する暴力のほうがすさまじかったのであるが、その体験は今でも心の中に巣食う「悪夢」である。

      そんな記憶も呼び覚まされてしまった・・・

      子どもを愛したいのに、愛せない。

      虐待されたつらい体験があるにも関わらず、母になったいま、子どもに対して同じ虐待を続けている女性。

      虐待された体験を乗り越えることが出来ないで、認知症になった母親と向き合う女性。

      この話に出てくる心の闇をかかえた主人公たちの思いが痛い。

      読んでいて、何度も何度も立ち止まる自分がいた。

      個人的に一番、心に残ったのは最後の「うばすて山」である。

       

      痛くて閉じようとする目を、おかあさんが無理に指で広げた。わたしは、のけぞって逃れようとしたが、おかあさんの力は強かった。わたしをおさえつけて、わたしの目を舌でぺろんとなめた。

      わたしは目を開いた。もう、どこも痛くなかった。

      おかあさんは笑っていた。顔全体で。

      ブランコが揺れていた。一瞬のことだった。

      (中略)これからおかあさんを捨てていく。みわの家にすてていく。

      おかあさんを捨てても、わたしはこの記憶を持っていこう。

      雨にけぶるブランコをふりかえって、誓った。

       

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      死神の浮力 
      読書 / カーソン・ライダー 
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        JUGEMテーマ:読書

         

        久々にミステリーを読んだ。

        伊坂幸太郎「死神の浮力」(文藝春秋)である。

        25人に1人ともいわれる良心をもたないサイコパスVS死神である。

        前作の「死神の精度」は短編連作集であったが、今回は400ページ超の長編である。

        一度読んだら忘れられないキャラともいえる死神の千葉の存在感は今回も際立っている。

        巧妙な奸計により、少女殺害の犯人であるサイコパス 本城が一転無罪釈放されたところから物語は動き始める。

        復習を誓う山野辺夫妻。そして、山野辺の調査を請け負い、死か否かの可否判定を下す死神 千葉。

        荒唐無稽といえばあまりにも荒唐無稽な物語ではあるが、嚙み合わない会話の妙を軸にしながらも、ハラハラドキドキ一気に読ませるところは、伊坂幸太郎の筆力のなせる業であり、「流石」である。

        物語のいろいろな伏線が絡まりながら進んでいく展開も伊坂幸太郎らしい。

        終盤の加速度的に盛り上がる対決シーンはさながら映画のようだ。

        カーチェイスではなく車VSママチャリというのも想像すると凄い絵面である。

        物語のエピローグに関しては賛否があるようだが、自分は好きだ。

         

        「殺伐とした世の中に、殺伐とした話では、芸がないですよ。」

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        スマイル!笑顔と出会った自転車地球一周 157か国 155,502km
        読書 / カーソン・ライダー 
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          JUGEMテーマ:読書

          時々、無性に物語ではなくノンフィクションの世界に強く触れたいと願うときがある。

          書店で、手にして衝動的に買った一冊の本。

          「スマイル!笑顔と出会った自転車地球一周 157か国 155,502km」(河出書房新社)である。

          今までにもサイクリストの本は読んだことがある。

          そして、感じるのはどの本にも共通しているのは人との出会いの素晴らしさ。言葉を超えた人間としてのつながりの温かさである。

          15万キロ以上というのは、単純に計算しても地球4周分に相当するわけで、ただ凄いとしか思えないのであるが、不思議と読み終えたあと、自分とは全く異質のヒーローという感覚にならないのは、自転車という身近な存在があるからだろうし、小出さんの飾らない人柄によるものであろう。

           

          印象に残った場面はいくつもあるが、ボリビアのウユニ塩湖でのテントの写真で決まりだ。

          ここにたどりつくまでの苦難や周囲100kmに渡ってなにもない世界観に圧倒される。

          プロガイドでさえ、GPSを保持していても自分がどこにいるのかが分からなくなってしまうらしい。

          まさに蜃気楼のなかの塩湖である。

          「なんで、こんなところまで来ちまったんだよ。」

          天に向かって咆哮を繰り返しながら進むなかで、突然廃墟のような家から「メリークリスマス」の声。

          そこは先住民のインディヘナの家。そして、差し出されたスープ。

           

          僕はこの地球一周の旅で「誰もいない世界」を見たかったのではなく、「誰もいない世界などこの地球上にはなく、誰かが元気に暮らしている」ことを確認したかったのだ。

           

          自転車に乗って旅をしてみたいと素直に思わせてくれる本である。

          僕は好きだ。

           

           

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          劇場 切なさに胸がしめつけられるラスト
          読書 / カーソン・ライダー 
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            作家 又吉直樹の待望の第2作目「劇場」(新潮社)を一気読みした。

            もともとは芥川賞を受賞した「火花」の前に書いていたという内容である。

            最後の永田と沙希の別れの場面では、思わず目が潤んでしまった。

            何年ぶりのことだろう。

            あまりにも純粋な結晶のような恋愛小説である。

             

            他人から見れば、馬鹿同士が戯れている光景にしか見えないことだろう。でも、僕は沙希が笑っているこの時間が永遠に続いてほしいと願った。この沙希が笑っている時間だけが永遠に繰り返されればいいと思った。

             

            「手つないでって言うたら、明日も覚えてる?」

            「うん? どういうこと?」

            「明日、忘れてくれてんねやった手つなぎたいと思って」

            「手をつなぐことを恥ずかしと思っている人、永くんだけだよ」

            沙希の手はとても温かかった。

             

            感覚的に共感できる表現が多く、読んでいて大好きな女性を思い浮かべることが多かった。

            そして、何といっても最後の場面。

            ふたりにとっての思い出深い舞台公演の脚本にそって、お互いがセリフを交わしながら互いの思いを即興でつないでいくのである。

            正直、やられたと思った。

            特に、永田の言葉。切ない思いが溢れ出てくるその言葉は途中から読むのが苦しくなってきた。

            「一番 会いたい人に会いに行く。こんな当たり前のことが、なんでできへんかったんやろうな。」

            その苦しさは、その言葉を聞いている沙希自身の苦しさでもある。

            沙希の嗚咽がはっきり聞こえた気がした。

             

            ただ、欲をいえば、こんなに切なくも愛おしく相手を想っている二人なのだから、不器用だけれどお互いを求めてやまない狂おしいほどの性愛を描いてほしかった。おそらく、又吉直樹は意図的にそこを外したのだろうが、愛しているからこそ、些細な言動や行動で嫉妬に狂うし、暴力的に相手を欲するむき出しの思いもあるのではないかと思う。

             

            しかし、あくまでも個人的な意見であり、そういった描写がなくとも優れた恋愛小説であることには間違いない。

            又吉直樹の作家としての力を改めて再確認することができた。

            読み終えた後、大好きな女性に素直に逢いたいと思える小説である。

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            「学問のすすめ」 いまの時代の必読の書
            読書 / カーソン・ライダー 
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              JUGEMテーマ:読書

               

              350万人が読んだという明治期の大ベストセラー 「学問のすすめ」の現代語訳を一気に読んだ。

              言わずと知れた著者は近代日本の啓蒙思想家 福沢諭吉である。

              「歯に衣着せず」という言葉がぴったりのある意味痛快な書である。

              偉そうぶることもなく、難解な言葉も出てこずまさに直球として心に届く内容である。

              特に印象に残ったのは、第9編の「よりレベルの高い学問」についてである。

               

              独立して生活するのは、人間にとって重要なことであり、「自分の汗で飯を食え」とは、古人の教えではあるけれども、私の考えではこの教えを達成したからといって、人間たるもののつとめを果たしたとは言えない。この教えは、ただ動物に負けていないというだけのことだ。

              動物、魚、虫、自分で食をとらないものはない。食料を得て、一時の満足を得るだけでなく、蟻に至ってははるかに未来のことを考え、穴を掘って住処をつくり、冬の日に備えて食料を蓄えるではないか。なのに、世の中には、この蟻レベルで満足している人もいる。

               

              自分の心身の働きを使って、達すべき目的を達しないのは、虫けら同然のバカである。

               

              人間として産まれたからには、自分の職分に則って社会のために目的をもって貢献することが求められていると熱く説く、福沢諭吉の言葉は、いまの時代にこそ当てはまる言葉ではないか。

              政治家にしても、企業家にしても、大所高所に立ったビジョンもなく、その日の身銭を稼ぐことに汲々として過ごしている。

              理想も気概もあったものではない。

              虫けら同然のバカが跋扈する時代だからこそ、「学問のすすめ」は胸に刺さる。

              まさしく刺激的な名著である。

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              ふくわらい
              読書 / カーソン・ライダー 
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                Amazonなどの書評を読むと、西加奈子の最高傑作のひとつに挙げられている「ふくわらい」(朝日新聞出版)を一気に読んだ。

                一気に読めるということは「物語」としての力が強いということである。

                暗闇の中での福笑いをこよなく愛した主人公の鳴木戸 定。

                恋愛も友情も知らずに生きてきた女性が、ありのままの自分の姿で生きていくことの意味を見つけ、新しい自分探しをしていく物語である。

                定の心情の変化に大きな影響を及ぼすのはプロレスラー「守口廃尊」の存在である。

                 

                西加奈子とプロレスとの関りは「こうふく あかの」「こうふく みどりの」でも記されており、重要なモチーフになっているのだが、今回も同様である。

                リアルタイムで新日本プロレス全盛期の「猪木イズム」をテレビ中継を通して目の当たりにしてきた自分にとっては、たまらない隠し味になっている。

                 

                終盤の守口の部屋での定との会話シーンが強く心に共鳴した。

                「プロレスのせいで鬱になったのに、鬱を忘れるのはプロレスやってる時だけだった。人と会うのが怖くて、だって人に会うと、キャラ作らなくちゃなんねぇって思うんだもの。怖い、怖かった。でもリングに立つと、飛ぶんだ。そういうことが、全部。相手の目をまっすぐ見れる。なあ、プロレスは言葉を使わない。言葉を、きちんと文章にしなくていいんだ。体がそれをやってくれるから。何万語駆使して話すより、一回関節技を決められたほうが伝わることがあるんだ。」「体があればいい。」

                「言葉が怖いとか、いらねぇとか言ってるけど、好きなんだ。言葉を組み合わせて、文章ができる瞬間に、立ち合いたいんだ。」

                 

                プロレスも言葉も好き。どっちもあってこそ、自分自身だと言い切る廃尊の言葉は心に沁みとおった。

                自分の好きなことに全力で取り組む。それが生きるということ。

                現実の世界では、難しいテーマではあるけれど、原点に立ち返ればそこに行き着く。

                自分の体があって顔があって。傷つくたびに変化していくけれど、自分自身が変わるわけではなく、その変化こそが生きてきた証。

                それを大事にしようって励まされるような気持になった。

                 

                最後のシーンは書評でも賛否が分かれているが、定が今まで抱えていた硬い殻を破って新たな一歩を進む象徴であるような気がして自分は好きである。

                 

                 

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                ごはんぐるり
                読書 / カーソン・ライダー 
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                  西加奈子の食に関するエッセイ「ごはんぐるり」(文春文庫)を楽しく読んだ。

                  その中でも一番共感したのは「カイロの卵かけごはん」である。

                   

                  帰国してから、もう20年ほど経つが、実はカイロで食べたあの卵かけごはんほどおいしいものには、まだ出会えないでいる。

                  あの時の私にあって、日本に住んでいる私にないもの。それは、「不自由さ」だろう。

                  手間がかかつたり、何かが足りなかったり、だからこそ、一度の食事がとても美味しく有難く感じられたカイロの生活。

                   

                  この文章を読んでいて、深く頷いてしまう自分がいた。

                   

                  自分にも似たような経験がある。

                  大学3年生の時、ワンダーフォーゲルクラブの夏合宿で南アルプスを縦走していた時のことだ。

                  あれは確か荒川三山あたりか。

                  何と台風10号の直撃を受けたのである。3000メートル付近である。

                  当たり前だが、暴風雨の襲来である。テントは水浸し、雨漏りを防ぐためにテントの中で折り畳みの傘をさしていたのだが、一陣の風でなんと、金属の柄が中央部分からばきっと折れてしまった。そして、あろうことか、テントが飛ばされてしまったのである。

                  幸いなことに、嵐の中をはい出て、テントを拾うことができたが、気温は真夏でも15度くらい。

                  寒さで震え、水浸しのシュラフの中で最悪な一夜を過ごした。

                  翌日は台風一過で見事な晴天であったのだが、自分たちがいた地点より下の三伏峠(標高2700メートル)当たりではさらにひどいことが起きていた。下山しようと思っていたグループが渡ろうとした橋が台風で破壊されて、川を渡れなくなってしまい立往生していたのである。無理に渡ろうとした女子大生が川に落ち、心臓まひで亡くなるという傷ましい事故も起きた。

                  自分達の食糧も底をつき、予定の計画も中途で断念せざるを得なくなった。山岳警備隊の方の誘導で折れた大木を橋代わりに渡してもらい、這いつくばって川を多くの登山者はみな渡った。

                  その前日のテントの中での会話は下山地 長野県松本に下りたら何を食べたいかでもちきりになつた。そして、不思議なことにみなが口にしたのが、あったかい握りたてのおにぎりと味噌汁であった。

                   

                  つまり、西加奈子も語っているように、人間は不自由な中にいると、決して贅沢なものではなく、当たり前のシンプルな食事を求めるものだということだ。だから、深く頷いてしまったのである。

                  しかし、いざ松本に下りて、ひとたび食事処に入れば、結局は極上とんかつ定食を注文してしまうのも哀しいかな人間の性である。

                  そんな昔のことをこのエッセイを読んで思い出してしまった。

                   

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                  報われない人間は、永遠に報われない
                  読書 / カーソン・ライダー 
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                    「報われない人間は、永遠に報われない」(河出書房新社)を一気読みした。

                    書店で何気なく平積みの本をながめていたら、その鮮烈なタイトルと帯に引き込まれたのである。

                     

                    ーこの世で一番「最低」な愛のはじまりから終わりまでー

                     

                    自尊心の肥大した男と自己を卑下することでしか自分の存在理由を見いだせない女性。

                    「嫌悪」するが惹かれ合う。「罵倒」するが赦し合う。

                    孤独になることを恐れるがあまりに、緊張の糸を歩くように。

                    女性の名は諸見映子。

                     

                    「ただ私は必死なだけ。どうかわかって。それでどうか私を一人にしないで。私を暗闇に落とさないで。」

                    「こんなにあなたのこと大事に思って、こんなにあなたのことを地獄のように愛している女を、あっさり天涯孤独の身に落とすような真似したら、きっと後悔するからね。」

                     

                    疑似恋愛から始まったこの二人にとって出口の見えない恋愛は本当に恋愛といえるのか?

                    孤独から目をそらせるためだけの逃げ道にしか、いや逃げ道にすらなっていないのではないか。

                    自己否定はエスカレートし、自尊心が鎌首をもたげる二人の関係は読むのがつらくなるほどに痛々しい。

                    それでも依存し合っている。

                     

                    そして、二人にとって決定的なことが起きる。

                    そこから、別れの場面までは疼痛のように心に刻まれる。

                    「私は凡庸の女王。私は諦めの女王。巣の奥で動けない、怠け者の女王で、泣き言の女王で、その他大勢の幼虫の栄養分になるためだけの女王。で、誰からも愛される資格のない頂点にいる。」

                    「同情だけが私にふさわしい宝石なのよ。」

                     

                    しかし、これで物語は終わらない。

                    出口の見えない暗い道はどこまでも延びている・・・

                     

                     

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                    ふる
                    読書 / カーソン・ライダー 
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                      JUGEMテーマ:読書

                       

                      西加奈子の書下ろし作品「ふる」(河出書房新社)を読んだ。

                      正直、印象の薄い作品である。西加奈子にしては平凡作ではないかと思う。

                      モチーフは女性器である。

                       

                      誰かの子どもとして産まれて、いろんな人に出会って、いろん経験をして、それを簡単に忘れ、手放し、それでも私たちは、祝福されているのだ。

                       

                      全身麻痺の老いた祖母の介護をしている中で、祖母の性器を見つめ、同じ女の人であるという思いを深く得る。

                      そして、生きていることの意味を主人公の池井戸花しすは改めて知る。

                       

                      この作品に込めた西加奈子の伝えたい思いは分かるのであるが、それぞれの登場人物や花しすのかかえる心的な葛藤のようなものがあまり伝わってこないために、なかなか他の作品のように共感したり、感情移入したりすることができなかった。

                      題材としては面白いと思うので、もう少し丁寧に書き上げるともっと素敵な作品になったのではないかと思う。

                       

                      今は、エッセイの「ごはんぐるり」を読み始めている。

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