JUGEMテーマ:読書
年の瀬を迎え、体調を崩してしまった。
楽器を練習する気にならないので、読書に耽っている。
今日は西村賢太の最新刊「瓦礫の死角」(講談社)を一気読みした。
収められている4編の内2編は今年の7月号の「群像」に掲載されていかもので、以前、このブログでも紹介したことがある。
犯罪被害者が出所した加害者に脅えることはあっても、加害者家族がその罪の張本人の陰に恐れ慄くと云うのは、見ようによってはなんとも滑稽な話である。
主人公の北町貫太の父親は許しがたい性犯罪を犯し、挙げ句の果てに警察官にも傷害を働き7年の懲役刑を言い渡された。
その父親の出所が迫っている中での、貫太と母親の克子の心の中の怯えが日々大きくなっていく過程の中で、貫太はこう悟る。
わけのわからぬ罪なき罰を背負わされ、一生消えぬ引け目をハンディキャップを課せられただけで、もう充分である。解体した瓦礫の中から自分の人生の模索を続けることのみが、彼にとっての目今の重要事である。とてもではないが、これ以上の肉親間のしがらみに足を引っ張られている場合ではなかった。
今やわが国において私小説にこだわり、そのスタイルを透徹しているのは西村賢太だけだろう。
ほとんど実話かと思わせるような圧倒的なパワーがそこにはある。
衝動的に読みたくなる作家である。