音楽史上不滅の作品 ベートーヴェン交響曲第九をひたすらに聴く

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    JUGEMテーマ:音楽

    交響曲の頂点に君臨する曲はやはりベートーヴェンの第九ではないか。

    その思いを強くしている。

    それくらい、この2週間はほぼ毎日第九を聴いていた。勿論、いろいろな指揮者による、いろいろなオーケストラの演奏である。

    その中で、やはり一番心に響いたのは、ゲオルグ・ショルティの1989年録音のものである。

    その年の最優秀クラシックアルバム録音賞を受賞した名演である。

    だが、衝撃度でいったら1951年のバイロイト音楽祭でのフルトヴェングラー指揮によるものではないか。

    第2次世界大戦で中止されていた音楽祭の復活を期して演奏されたこの曲の特に第4楽章のフィナーレに向かっての高揚感は凄まじいものがある。

    長い戦争という重苦しい鎖から解き放たれた「歓喜の歌」。

    クラシックの曲という概念を超えた時代の賛歌そのものである。逆にいえばこの演奏を超えるものはおそらくないだろうとさえ思う。

    思えば、ベートヴェンにとって最後の交響曲のお披露目の際には、聴覚は完全に奪われており、最後に舞台にそう指揮者として登壇した時も、初めは大歓声が聞こえずに聴衆の姿を見て大成功を確信したという記録が残っている。

    音楽史上永遠に不滅の作品である。


    功名が辻

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      JUGEMテーマ:読書

      正直、スランプである。読書もしているし、音楽も聴いているのだがブログに書こうという気持ちがなかなか湧いてこない。

      まあ、そういう時もあるさと思うしかないのだが・・・

      このところ、久しぶりに司馬遼太郎を読んでいる。

      功名が辻(文春文庫)である。

      大河ドラマの原作にもなった山内一豊とその妻千代の物語である。

      戦国期の権謀術数の時代において、取り立てて武辺においても格別な手柄を立てたことのないボロボロ伊右衞門こと山内一豊。

      豊臣秀吉に仕えるものの40歳にして初めて大名に取り立てられるほど、出世は遅々としており、取り柄といえば、謹厳実直そのもの。その一豊を支える千代の奮闘が小気味よく語られていく。

      しかし、物語を紡がせたら司馬遼太郎がやはり随一ではなかろうか。

      文庫本4冊の分量もあっという間に3冊読み終えた。それほどの面白さに溢れている。

      また、司馬作品には物語には直接関係のない余談も多いのが特徴の一つなのだが、それが良い味を出している。

      特に、秀吉の催した仮装園遊会であるとか千代紙の語源が妻の千代の名前に由来している、はたまた日本の女流服飾デザイナーの草分けであるなど、歴史好きにはたまらない薀蓄話も面白い。

      この作品を読んで初めて知ったこととしては秀吉の次の関白となり家督を短期間ではあるが譲られた殺生関白と異名をとる豊臣秀次の運命である。

      司馬遼太郎は精神的に問題のある人間として取り上げており、悪行非道のほどを記しているものの、現代の歴史家の中には真っ向から否定している人もおり諸説ある。しかし、確かなことは秀頼誕生前において秀吉の養嗣子となったことが彼の運命を大きく変えたことは間違いのことであろう。運命のいたずらというか残酷さを彼の人生から考えさせられてしまう。

      さて、山内一豊であるが宝島社が6年前に発刊した「完全決着 戦国武将ランキング100」において、彼は100位内に入っていない。命がけの戦国時代において、武辺に全くさえのない男が最終的には土佐藩22万石の領主に上り詰めたことは、やはり奇跡と言わざるを得ない。


      林修先生の語る仕事のできる人の机

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        JUGEMテーマ:日記・一般

        いま、何気なくYOUTUBEを見ていたら、気になるサムネが飛び込んできた。

        林修先生の「仕事のできる人の机」である。

        すぐに視聴してみた。

        2分30秒ほどの短い動画であったが、心に響くものがあった。

        彼はこう語っていた。

        「私は仕事が出来るなと思った人の机を見て、あたかも落城寸前かのような机や、付箋が意味もなくペタペタ貼ってある机というものを見たことがない。」

        自分も36年教職を続けているが、初任時代、かつての教務主任の先輩から「机上無一物」という助言を受けたことがある。

        きっとその当時、いろいろな本や書類等で乱雑だったのであろう。

        その様子を見て、叱責するのではなく柔らかい物腰で「机上無一物」とだけ言われたことが逆に強く胸に届いた。

        また、ある先輩からはこんなアドバイスを受けた。

        授業の参考資料となる副教材の参考書を職員室の机上に無造作に立てるなとも。

        出版社名を見れば、右か左かが明らかであるし、特に社会科の教材の中には極左や極右系のものも含まれており誤解を招くこともあるので注意した方が良いということであった。

        教職公務員としての信念を持つことはいいが、極端な主義思想に流された授業をしてはいけないという助言であったのだと思う。

        そして、いつしか他の仲間から「いつも片付いていますね。」と言われるような机になった。

        だからと言って、仕事ができるというアピールをしたいのではない。

        ただ、自分の机の上も片付けられない人間に重要な仕事などできるはずもないという思いはある。

        簡単なことではないか。

        一日の仕事終わりにさっと片付ければいいだけだ。

        林先生はこうも言っていた。付箋を使うのであれば、緊急度と重要度という2つの軸を使って使い分けなくては意味がないとも。

        私はほとんど付箋を使わないのであるが、確かに頭の中ではそういう軸を想定して仕事に取り掛かっていたと思う。


        「壬生義士伝」言いようのない深い感動に包まれている・・・

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          JUGEMテーマ:読書

          前に、今年読んだ本のベスト候補として葉室麟の「秋霜」について述べたことがある。

          しかし、その「秋霜」を上回るどころか、軽く凌駕する作品に出会った。

          浅田次郎のベストセラー「壬生義士伝」(文藝春秋)である。

          百田尚樹の「永遠の0」はこの作品のオマージュであり、彼をして「昭和の壬生義士伝」を書きたかったと言わしめた作品である。

          新選組において異彩を放つ南部藩の吉村貫一郎の物語である。

          彼にゆかりのある人物を訪ね、彼の死後50年経った大正時代に、その生き様を語らせるという構成の軸は見事である。

          一人称の物語以上に重層的に人物像が浮かび上がり、物語に深みと厚みが増している。

          また、一つ一つの言葉や一文一文が心に響くというよりはむしろ刺さってくる感じがする本に久しぶりに出会えた。

           

          新選組3番隊組頭である斎藤一との確執の中で、最後に斎藤がつぶやく次の言葉が強く心に残った。

           

          人それぞれに、生まれついての宿命はあろう。いかんともしがたい苦悩を抱えてもおろう。将軍も足軽も、苦悩の糧は同じじゃ。じゃが、これほどおのれの宿命に屈せず、苦悩に抗い続ける侍が他にあろうか。神に挑み続ける人間が、他にあろうか。

          妻子を養うために主家を捨てる。しかし、恩と矜りとは決して忘れぬ。

          守銭奴と罵られ嘲られても、飢えた者に一握りの飯を施す、

          一見して矛盾だらけのようでありながら、奴はどう考えても、能う限りの完全な侍じゃつた。

           

          脱藩という武士としての汚名にまみれながら、飢えから愛する妻と子を守るために人を斬る貫一郎。

          そして「鬼貫」と恐れられ、斬るたびに褒賞金は増え、そのほとんどを国許に仕送り続けるその姿。

          全ては、妻と子供のため。

           

          わしはお前たちのためならば、いつ何時でも命を捨つることができたゆえ。さしたる覚悟もいらず、士道も大義もいらず、お前たちに死ねと言われれば、父は喜んで命ば捨つることができたゆえ。んだから、お前たちこそがわしの主君にちげえねえと思うた。

          女房に忠義を尽くすなど、人が聞いたら笑うじゃろう。じゃがわしは、心の底から感謝ばしておった。

          男が惚れた。惚れて、惚れて、この気持ちどうしたらよがんべえと思い続けるほど惚れ抜いておった。

           

          この小説は哀切極まる「愛の物語」とも言い換えることができる。

          久しぶりに言いようのない深い感動に包まれている。


          グラミー賞最多受賞 ゲオルグ・ショルティの振るベートーヴェン

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            今日、最も知られている世界的権威の音楽賞といえばグラミー賞であろう。

            そのグラミー賞の最多受賞者はという問いに対して、即答できる人がいれば相当の音楽通と言える。

            なんと受賞回数31回、ノミネート76回。圧倒的な世界記録である。

            2位のソウルシンガー アレサ・フランクリンの16回のおよそ2倍であり、大きく引き離している。

            その答えは、このブログでも何度か紹介した、ゲオルグ・ショルティである。

            残念ながら、ショルティの我が国においての評価は低い。

            クラシック界の指揮者といえば、カラヤン、バーンスタインの知名度が日本では飛び抜けて高いのに比して広く知られていないのが現状である。

             

            好みの指揮者というのはビールに似ている。

            数多あるビールの銘柄でも大好きというビールは限られており、私はその筆頭格がショルティである。

            特に、ベートーヴェンの交響曲の全曲録音盤を頻繁に聞いている。

            彼はこの録音を生涯を通じて二度行った。1970年代初頭と1980年代後半である。

            オーケストラは勿論シカゴ交響楽団である。

            当時のオーケストラの中にあり、技術力では世界一と言われ、カラヤン率いるベルリン・フィルと双璧をなしていた。

            カラヤンはショルティのことを特に意識していたという(ライバル視)話も伝えられている。

             

            最近聞いてるのは後年の方のベートーヴェン全集である。

            ショルティは原典を重視する指揮者である。書かれた音符を忠実に再現する安定感と「良く鳴る」オーケストラであるシカゴの達者な演者の力量をダイナミックに引き出す再現性にこそその魅力はある。

            聴き終わった後の何とも言えない愉悦感がたまらない。

            特に、ゆったりとしたテンポの中に、深いメロディが心に沁みる第九の第3楽章などがその好例であろう。


            「ずっと晋作が描きたかった。」春風伝を読む。

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              JUGEMテーマ:読書

              本は堅実に読んでいるのだが、ブログに認めるのが億劫になっていた。

              最近、読んだ本の中で心に残ったのは葉室麟の「春風伝」(新潮社)である。

              歴史上の人物である高杉晋作を取り上げたこの作品の大きな軸になっているのは、太平天国の乱で揺れていた上海に渡っていた時の出来事である。

              高杉晋作といえば、司馬遼太郎の「世に棲む日日」が有名であり、私の愛読書でもある。

              高杉の疾風迅雷の生き方に感銘を受けた。

              しかし、司馬作品にはほとんど上海での出来事には触れられていない。

              そういう意味においても、新しい角度から高杉を捉えた作品であり、大変興味深いものがあった。

              太平天国の乱においては男だけでなく、女も子供も見事に戦った。

              晋作の師でもある吉田松陰の思念「草莽崛起」とも共通する姿を目の当たりにした晋作は深い感銘を受けるのである。

              「草莽崛起」とは「国に在るを市井の臣といい、野に在るを草莽の臣という。皆庶人なり」という孟子の書から取られている。つまり、地方の草深い地に住み、身分が低く、貧しい者の中から世を変えるものが出てくるということで在る。

              その上海の地で一人の女性に会う。周美玲である。

              命を懸けて、戦うその姿に晋作が後年まで大きな影響を受けた人物である。

              上海でのその出会いと別れまでに大きな紙幅を葉室麟は割いている。いかに、隣国中国における欧米列強およびその傀儡政権となった政府と対抗する草莽の臣としての名もなき人々の姿が高杉のその後の行動の大きな原動力になったかを伝えているのだ。

              「ずっと晋作が描きたかった。」と語っていた葉室麟のその強い思いが直接的に伝わってくる作品である。


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