どうしようもなく逢いたい人がいるんだ

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    JUGEMテーマ:音楽

    丸12年もブログを書いていると、同じことを書いてしまっていることもあると思う。

    多分、今回もその内の一つだろう。

    今から、7〜8年前、精神的に不安定な時期があり毎日、繰り返して聴いていた曲がある。

    それは、忌野清志郎のアルバムである。

    中でも「雑踏」には激しく心を揺さぶられた。

    曲を提供したのは三宅伸治である。一昨年、三宅伸治のデビュー30周年を記念してのトリビュートアルバムが発売されたのだが、その中に収録されているのがBIGINのバージョンである。

    確か、清志郎と共演した動画を見たことがあるが、鳥肌ものであった。

    その当時、一人の女性に恋をしていて、なかなか会えない日々が続いていた心境に覆いかぶさるように、この曲にすっぽりと包まれていた記憶がある。

     

    朝の街の雑踏の中で 

    全てが消えて なくなったように感じる

    気のせいだろう 君がいないことも

     

    Hey 逢いたい人がいるんだ どうしようもなく

    どうしようもなく

    どうしようもなく 逢いたい人がいるんだ

     

    たったこれだけのシンプルな詩であるが 心に突き刺さってくる

    そして、逢いたい どうしようもなくの部分が

    魂の叫びにようにずっと繰り返される

     

    どうしようもなく どうしようもなく

    そして、痺れたように動けなくなる自分がいるのだ

    これ以上に切実なラブソングはない 

     

    「真夜中」という曲では 『泣きたいほどの淋しさだ』というフレーズが出てくる

    そして、闇を突き破る力をくれと叫ぶ

    曲を聴きながら歌の中の主人公の心と共振している自分がいる。

    だから、僕は三宅伸治の歌を愛し、信じているのだ。

    日本のミュージシャンの中では稀有な存在である。

     

     


    ジャズばかり聴いている5 〜スイング感が堪らない ボビー・ハケットライブ盤〜

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      本当に、連日ジャズばかり聴いて過ごしている。

      村上春樹のようにジャズとは何かという質問に対して、見事な例えを引いて「うまい」と思わせるようなことなど言えないが、煎じ詰めれば余白のたっぷりある懐の深い音楽であるということに行き着く。

      ジャズのスタンダードと言われる名曲は山ほどあるが、演者の解釈一つで似て非なるものに変わるし、そこが醍醐味の一つでもある。

      即興の熱いプレイもクールに決めるフレーズもジャズという音楽が持っている特性である。

      だから、聴いていて肩が凝らないし、構える必要もない。

      前にも書いたが、しつこく心に纏わりついてくるようなこともない。そこがいい。

      多分、今の自分の心境がジャズにビッタリあっているということなのだろう。

      昨日は、ボビー・ハケットのライブ盤「Sextet &Quintet」を聴いていた。

      ピアノが自分の大好きなデイブ・マッケンナということも決め手の一つであるが、クラリネット奏者ボブ・ウィルバーが実にいい味を出しているのである。まさに二人揃えば、思う存分にスイングしかないといった感じで、聴いていて自然と体が動くのである。

      音楽を聴いていてこんなにご機嫌な気分になったのは久しぶりである。

      因みにジャズとという質問に対して村上春樹がどう語ったか知りたい人は「雑文集」を読んでください。


      村上春樹のエッセイと極上のジャズと・・・

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        友人と会う予定がキャンセル、延期になり、突然何もない状態に放り出されたような気分になり、終日ゴロゴロとジャズを聴き、起きれば村上春樹のエッセイを読んで過ごしていた。

        それを怠惰と呼ぶのか贅沢というのか分からないが、真実は確実に時間は過ぎていくということである。

        エッセイは「村上ラヂオ2 おおきなかぶ、むずかしいアボカド」(新潮文庫)である。

        最終章は音楽に関する話題であった。

        「この人生においてこれまで、本当に悲しい思いをしたことが何度かある。それを通過することによって、体の仕組みがあちこちで変化してしまうくらいきつい出来事。言うまでもないことだけど、無傷で人生をくぐり抜けることなんて誰にもできない。その度にそこには何か特別な音楽があった。というか、そのたびにその場所で、僕は何か特別な音楽を必要としたということだろう。

        ある時にはそれはマイルス・デイヴィスのアルバムだったし、ある時にはブラームスのピアノ協奏曲だった。」

         

        この文章を読んで、深く頷き、共感する自分がいた。

        まさにその通りだと。

         

        今の自分にとって聴くべきその音楽はジャズである。今日もひたすら聴いていた。

        白人ドラマーの最高峰の一人と言われるシェリー・マンのリーダー作である「マイ・フェア・レディ」である。

        村上春樹もジャズにはまった時期に朝から晩までこのアルバムを聞いていたと述べているが、実に素晴らしいアルバムである。

        シェリー・マンの決して前面に出すぎることはない的をえたシャープなリズムはマックス・ローチでは味わえない粋な味わいに溢れている。断っておくがマックス・ローチも大好きである。

        個人的な意見であるが、ジャズは決して内面までまとわりついて来ないところが魅力である。

        寡黙でありながらも、そばで見守ってくれているという人間の包容力と似ている。

        そのままシェリー・マンのドラムと共通している。

         


        『人情が、したたる。』山本周五郎の傑作短編集

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          「児次郎吹雪・おたふく物語」(河出文庫)を一気に読んだ。

          山本周五郎の人情物の傑作短編集である。

          特に、タイトルにもなっている児次郎吹雪は初の文庫化である。

          何と言っても一番の読みどころは「おたふく物語」の3部作が全て収録されているところにある。

          善意の塊のようなおしずとおたかの姉妹の姿に、素直に心打たれる。

          3部作目の「おたふく」では貧しく、倹しい暮らしを続けてきたおしずが高価な簪や帯留め、男物の袷などを持っていることに懐疑の目を向け、嫉妬心を抱き始めた亭主の貞次郎に対して、その経緯を妹のおたかが切々と語るシーンに、胸の中からこみ上げてくるものがあった。

          図書館で読んでいたのであるが、目頭が熱くなり、涙がこぼれてしまった。

          同収録作「かあちゃん」にしてもそうである。

          たとえ、強盗に押し入ってきた者でさえ、その苦しい境遇に想いを馳せ、捨てておくわけにはいかないお勝の心情にグッとくるのである。

          特に最近、児童虐待に関するニュースが世間を賑わせ、実子でありながら、酷い虐待を繰り返し、死にまで追い込んだ事件があるだけに、周五郎の描く人情物を読むことで静かな感動に満たされるのである。

          今日は小雪も散らつく寒い一日であったが、周五郎の作品に触れ、心は温まった。

           

          「人情が、したたる。」

          帯のキャッチコピーがこの作品の全てを語っている。


          呼吸を止めて1秒 あなた真剣な目をしたから

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            呼吸を止めて1秒 あなた真剣な目をしたから

            そこから何も聞けなくなるの 星屑ロンリネス

             

            久しぶりに聞いた「タッチ」

            この冒頭の歌詞のインパクトに震えを覚えた。

             

            涙くん 彼に告げて ずっと愛がひとりぼっちよと

             

            これは同じタッチの続編の主題歌「愛がひとりぼっち」である。

             

            どちらも名作詞家 康珍化の手によるものである。

            ストレートに胸に響き、共感するのは、恋愛においてこの歌詞のような場面を誰もが一度は経験したことがあるからだろう。

            甘酸っぱくも、心かき乱される経験である。

             

            それを「心のあざ」とこの作詞家は名付けている。

            あざはかさぶたと違い、消えて再び綺麗に再生することはない。

            ずっと心の内側にあり続ける。そして、時間をかけて薄く目立たなくなっていくものであろう。

            しかし、青春時代だけでなく生きている限り、人と出会い、時には恋をし苦い思いを味わい、新しい心のあざは出来る。

             

            「ため息の花だけ束ねたブーケ」はどんどんかさを増していく。

            そのブーケの受取り手はもういないのに・・・

             

             


            ジャズばかり聴いている・・・4 ポール・デスモンド&ハービー・マン

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              本当に最近はジャズばかり聴いている。

              今日は、ポール・デスモンドとモダンジャズカルテットが共演したライブ「LIVE IN NEWYORK1971」である。

              これが実にいいのだ。

              モダンジャズカルテットはやはり上手いなあと素直に感じるのであるが、そこにハートウォームなデスモンドのアルト・サックスが絡むことで一段と小粋でお洒落な音世界が展開するのだ。

              デスモンドのサックス演奏には革新性などないので、スムースジャズやBGMという低評価を下す評論家も多いが、BGMにしろこんなに質の高いBGMなど他にないと断言できる。

              とろけそうになるほどの甘い音色に身を委ねるのも悪くない。

              勿論、それぞれの楽器同士が火花を散らすようなアドリブの応酬もジャズの醍醐味ではあるが、デスモンドはデスモンドなのである。

              CTIレーベルから発表した晩年作である「Skylark」も合わせて聴いているのだが、「禁じられた遊び」の演奏は白眉である。

              ジャズといえば、楽器としてはマイナーなフルート演奏の第一人者ハービー・マンのアルバムも聴きまくっている。

              飽くなき探究心の塊であった彼は、ジャズにとどまらずレゲエ、ディスコ、ロックといった領域へも音楽の志向を伸ばした人である。

              金管楽器のように大きな音で存在感を示すことができないマイナー楽器であるフルートを自由自在に操ったその意義は大きい。

              特にお気に入りはイギリスのロックミュージシャンと共演した「LONDON UNDERGROUND」である。

              もう廃盤になっているので、中古でもあまり数が出回っておらず、Amazonで調べたら最安値でさえ23000円である。

              仕方がないので、iTUNESでDLして聴いている。

              とにかくカッコいいの一言である。


              村上朝日堂 スメルジャコフ対織田信長家臣団

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                JUGEMテーマ:読書

                今日は珍しく仕事が休みなので、いつもの図書館に来ている。

                村上春樹の「村上朝日堂 スメルジャコフ対織田信長家臣団」(朝日新聞社)をのんびりと肩の力を抜いて脱力状態で読んでいる。

                ジャズの話が多く出てくるかと思いきや、音楽に関してはPopsとお約束のビーチボーイズについてが多い。

                大傑作と呼び声も高い「ペットサウンズ」は自分もCDを持っているが、大好きというアルバムではない。

                やはりビートルズの方が遥かに心を奪われた。

                 

                村上春樹のこの作品はちょうど「スプートニクの恋人」が書き上げられた時期と重なる。

                勿論、読んだのだが、再読していないので細かな内容までは覚えていない。

                ある種の「パワー」を感じたという漠然とした印象は残っている。

                しかし、村上春樹の作品としては自分の中では凡庸という評価の域を出ることはない。

                他に相応のインパクトを与えられたりインスピレーションを喚起されたりした作品が多くあるから致し方ないことであろう。

                 

                「村上ラジオ」にはダンキン・ドーナツの話題が多く出てくる。

                ダンキンが英語ではdunkinでドーナツをコーヒーにつけて食べるところからつけられた名前であることを初めて知った。

                こういう小洒落た薀蓄話は好きである。

                 

                昨年は1年間を通じて、時代歴史小説に明け暮れた毎日だったので、今年は未読の村上春樹の作品を片っ端から読み耽っていこうかなと思っている。と言ってもほとんど読んでしまっているのだが・・・

                 


                走ることについて語るときに僕の語ること

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                  JUGEMテーマ:読書

                  久しぶりに村上春樹の本を読んだ。

                  「走ることについて語るときに僕の語ること」(文藝春秋)である。

                  あとがきで本人が述べているように、この本は彼によっての「メモワール」である。

                  そんなに厚い本でもないし、軽妙なタッチで書かれているので、すらすらと読めるのであるが、内容はある意味哲学的でもあり示唆に富んでいる。

                  例えば、こんな文章が出てくる。彼はひとつの結論としてこう語るのだ。

                   

                  『ロッキーのテーマ』はどこからも聞こえてこない。向かっていくべき夕日もどこにも見えない。

                  まるで雨天用運動靴のような地味な結論だ。それをアンチ・クライマックスと人は呼ぶかもしれない。

                  ハリウッドのプロデューサーなら、映画化の企画を持ち込まれても、最後のページをちらっと見ただけで相手にしないだろう。

                  しかし、詰まる所、このような結論こそが僕という人間に相応しいのかもしれないな、という気もしないでもない。

                   

                  現実の人生にあたっては、物事はそう都合よく運ばない。我々が人生のあるポイントで、必要に迫られて明快な結論のようなものを求めるとき、我々の家のドアをとんとんとノックするのはおおかたの場合、悪い知らせを手にした配達人である。

                   

                  私はこの本に対して激しいシンパシーを覚えた。

                  そして、心の中で深く頷く自分を発見した。

                   

                  そして、視線を向けるべきは空ではなく、自分の内側だと語る。深い井戸を覗き込むみたいに。

                  そこにあるのは希望のかけらなどではなく、あくまでも自分自身そのものを形成している性格(ネイチャー)だ。

                  重たいボストンバックのように、ずるずると引きずって来た己の性格(ネイチャー)である。

                  それをこれからも引きずりながら生きていくのだ。

                  村上春樹の場合、それは続けられる限り続けるというスタンスである。走ることも、小説を書くことも。

                   

                  そして、本を静かに閉じてふと考える。さて、自分は自分の何を引きずってこれから生きていくのだろかと?

                   

                   

                   


                  ジャズばかり聴いている・・・3「Rockin'the Boat」

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                    JUGEMテーマ:音楽

                    何だか無性にジミー・スミスのオルガンが聴きたくなった。

                    今、このブログを認めながら聴いているのは1963年発表の「Rockin'the Boat」である。

                    1曲目の「Dreamboat」からしてもう中毒性を帯びている。

                    楽器の王様はピアノだと思っているのだが、ジミー・スミスのオルガンの音色が大好きである。

                    いつ、何をきっかけに聴き始めたのかは覚えていないのだが、ウェス・モンゴメリーとの共演作に感動したのは記憶している。

                    「The Dinamic Duo」ともう1枚あったはずである。

                    今でも自分にとってのジャズの名盤の一つである。

                    今から15年くらい前、ひたすらにジミー・スミスばかり聴いていた時期があるのを懐かしく思い出した。

                    とにかく、その当時自分の心象風景と重なり合うものが何かしらあったのだろう。

                    電気オルガンの音色は澄み切ったものではなく、どちらかといえば内にこもる性質のものである。

                    クリアさはない代わりに、まとわりついて離れない粘っこさを持っている。

                    ひとたび、心を掴まれるとなかなか振り払うことのできない特性がある。

                    しかし、自分の周囲を見渡してもクラシック以上にジャズを聴いている人は少ないような気がする。

                    まして、オルガン奏者などに目を向ける人はほとんどいない。

                    今、突然思いついたのだが、電気オルガンの音色ってどう考えても太陽が降り注ぐ午前中には合わないなと感じた。

                    夕暮れ時か夜更けではないかと思う。あくまでも個人的な意見だが。

                    だから、今のこの時間はぴったり合うのだ。


                    ジャズばかり聴いている・・・2

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                      JUGEMテーマ:音楽

                      村上春樹と和田誠の共著となる「Portrait in Jazz」には私の大好きなポール・デスモンドもデイブ・ブルーベックもズート・シムズもジミー・スミスも紹介されていない。

                      嗜好の違いといえばそれまでだが、少し残念な気もする。

                      それは置いといて、今まで未聴だったことが不思議なくらい、凄いアルバムに出会った。

                      1953年のデイブ・ブルーベックカルテットの大学でのライブ盤「Jazz At Oberlin」である。

                      何が凄いって、これほどまでにスイングするポール・デスモンドを聴いたことがない。

                      特に2曲目の「Perdido」などはその最たるもので、1958年の「Newport1958」のそれと比べてみるとその差は歴然としている。

                      それから4曲目の「The Way You Look Tonight」も圧巻である。

                      思わず「ご機嫌だぜ!」と声をかけたくなるほどの演奏である。

                      一方で、クラシックの影響かどうかは分からないが、ノリがいいとは決していえない無骨なブルーベックのピアノのタッチと合わさることで、一種独特の雰囲気を醸し出すのがこのバンドの魅力である。

                      おそらく村上春樹はブルーベックのピアノがあまり好きではないのではないかと想像する。

                      あえて不協和音を奏でてみたり、ただ叩きつけていたるするようなピアノタッチは好悪がはっきり分かれるところであろう。

                      しかし、ファンにとってはそこもまた他のバンドでは味わうことのできない魅力なのである。

                      ジャズの魅力をここにきて改めて再確認している日々である。

                       


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