ゆけ、おりょう

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    このところ軽いスランプというかブログを書こうという気が起きない。

    読書はしているのであるが・・・

    今年に入りというか昨年から司馬遼太郎の歴史時代小説にはまったことが契機になり、そのジャンルの本を中心に読んでいる。

    今は最近注目している門井慶喜の「シュンスケ」と司馬遼太郎の「国盗り物語」を読んでいる。

    今日は先日読み終えた同じく門井慶喜「ゆけ、おりょう」(文藝春秋)を紹介したい。

    おりょうとは坂本龍馬の妻のおりょうさんのことである。

    幕末期を描いた小説の中では必ず竜馬と同じくおりょうさんも登場する機会が多いので、大酒のみできっぷのよさという女性像は有名である。

    ただ、今回じっくり読んでみて、竜馬亡きあとの「おりょう、竜馬なしでも」の章がとくに心に残った。

    明治に入り、おりょうは横須賀に流れてくる。

    そこで出会ったてきやの西村松兵衛の妻におさまり生涯を終えることになる。

    しかし、そこまでの経緯が複雑であった。

    竜馬の実家では乙女姉さんは歓迎してくれたものの、坂本家の当主である兄の権平とその妻に陰湿に嫌われ、その後菅野覚兵衛の実家に身を寄せ、心休まる時間を過ごすのだが、鳥撃ちや魚釣りなど何をしても心は竜馬のことを思い出し、揺れ動く始末。

    そして、竜馬からの手紙を燃やして出立するのである。

     

    ほうっておいたら人にだまされるか、いじめられるかして野垂れ死にするに違いない、そういう男の世話を焼くのが何より心が張るのだろう。誰かを生きさせてやることのよろこび。それがおつるの・・・・いやおりょうという女の、一番の芯や。

    26年連れ添った松兵衛のこのつぶやきの中にこそ、おりょうの真髄があるような気がしてならない。

     

    贈正四位阪本龍馬之妻龍子之墓 

    浄土宗・信楽寺にひときわ高く建てられている。


    熱狂のW杯を終えて・・・

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      JUGEMテーマ:スポーツ

       

      熱狂のスポーツの祭典 サッカーW杯が終わって1週間が過ぎた。

      決勝戦の実況を担当していたアナウンサーが「ずっと続いていてほしい。そんな気持ちになります。」というコメントを残してのがとても印象的であった。

      フランスが20年ぶりの優勝を果たして幕を閉じたが、今大会で一番魅力的なサッカーを見せてくれたのは私が戦前、優勝候補に挙げていたベルギーだろう。

      エデン・アザールのきれきれの相手を数人引き連れてのドリブル技術、創造性豊かなピンポイントクロスから豪快なミドルシュートまでも放つデブライネ、猛スピードの冷蔵庫と称されたルカク。まさしくベルギー黄金世代と呼ばれるタレントたちは毎試合で魅力を振りまいていた。

      クロアチアはモドリッチを中心にしたいいチームであったが、決勝までの時間がかかりすぎた。

      相次ぐ延長戦を経てのPK戦による勝利による疲れは選手たちを蝕んでいたように思う。

      フランスの負けないサッカー=勝ち切るサッカーは見事であったが、ベルギー戦での後半のあまりにも守備的なサッカーや決勝前半におけるグリーズマンへの疑惑のFKや故意とは到底思えないハンドによるPKなど、すっきりしない部分も残った。

      しかし、どん底から立て直しを図ったデシャンの監督としての手腕やまだ平均年齢25歳ということを考えると、フランスの時代がしばらくは続きそうな気もする。

      それにしても南米のチームのふがいなさが正直歯がゆかった。

      主力選手の大半がヨーロッパのリーグで戦っていることも大きく影響しているのだろうが、戦術的に見てもヨーロッパと変わらないのであれば、その魅力をどう発揮するのか?

      大きな課題が残ったともいえる。


      感動!東京都交響楽団定期演奏会Cシリーズ

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        JUGEMテーマ:音楽

         

        昨日は池袋にある東京藝術劇場に出かけた。

        アラン・ギルバート指揮による東京都交響楽団の定期演奏会である。

        演目はドヴォルザークの交響曲第9番とバーンスタインの「シンフォニック・ダンス」、ガーシュインの「パリのアメリカ人」であった。

        先週もサントリーホールでこの組み合わせによるクラシックコンサートに行ったばかりなのであるが、今回も素晴らしかった。

        アラン・ギルバートの指揮は本当にオーケストラをドライブさせるという印象を改めて強くした。

        ドヴォルザークの交響曲第9番は「新世界より」というタイトルがつけられ、耳に馴染みの深い名曲であるが、情緒に流されない明快なテンポで進んでいくスタイリッシュな演奏で小気味よかった。

        特に第4楽章の終盤はずつと鳥肌が立ちっぱなしであった。

        「シンフォニック・ダンス」にしても「パリのアメリカ人」にしてもメリハリが効いていて、自然に体が動くという感じであった。

        アラン・ギルバートの指揮によるCDはまだあまり発売されていなのが残念なのであるが、まさにいま、大注目に値する指揮者であることには違いない。そう確信した。

        感動の拍手はいつまでも鳴りやまなかった・・・


        圧巻のタクト アラン・ギルバート

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          JUGEMテーマ:音楽

           

          この三連休は有意義な時間を過ごすことができた。

          昨日はクラシックコンサートを聴きに行った。

          場所は日本が誇るサントリーホールである。

          アラン・ギルバートが東京都交響楽団(都響)の首席客演指揮者に就任するのを記念してのコンサートであった。

          アラン・ギルバートはニューヨーク・フィルの音楽監督を8シーズン務めた実力者である。

          40台という若さで就いたのはあのバーンスタイン以来であり、指揮者としてだけでなく、芸術性を広げる活動が高く評価されている音楽家である。

          この日の演目はシューベルトの交響曲2番とマーラーの交響曲1番「巨人」。

          実に素晴らしい演奏であった。

          今年に入り、クラシックコンサートを聴きに行くのは4回目であつたが、正直、一番感動した。

          アラン・ギルバートの指揮は躍動的でメリハリがきいており、オーケストラを巧みにドライブさせていた。

          シューベルトもマーラーもメロディが芳醇であり、オーケストラにうたわせることが巧みでないとぎこちなくなってしまうのだが、見事なタクトさばきでうたわせていた。

          特にマーラーの1番の最終楽章の音の絢爛たる洪水ともいえるコーダには鳥肌がたった。

          いつまでも観客の拍手と「ブラボー!」という声がなりやまなかった。

          都響はやはりうまい。

          いくつかCDをもっており、その実力は知ってはいたが、やはり生の音に触れるとその感動の大きさは一入である。

          圧巻の2時間であった。


          快作!「家康、江戸を建てる」

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            最近、特に注目している作家がいる。

            門井慶喜である。「銀河鉄道の父」で見事に直木賞を受賞した作家である。

            最新作である「新選組の料理人」についてはこのブログ上でも紹介したことがある。

            まず、題材への目の付け所がユニークであり、おもしろい。

            今日、読み終えた「家康、江戸を建てる」(祥伝社)にしてもそうである。

            1590年、秀吉から国替えを要求された家康。関八州240万石は名目とは違い、湿地だらけの場所であった。

            到底、人が暮らすにうえで好適とはいえない場所である。家臣団が猛反対をするなか、「関東に未来あり」と決断をし、類のない国家的プロジェクトに着手し、適材適所とばかりに人材を配し江戸のインフラ作りに取り組む家康。まさに快作である。

            描かれるのは、武をもって名高い将とは違い、名もなき職人たちのプライドや真摯な仕事にかける熱い思いである。

             

            特に興味深かったのは江戸城の天守を白無垢に染めた家康の着想とその問いをかけられた2代将軍秀忠のやりとりである。

            信長の安土城も秀吉の大阪城も天守閣の色は黒。

            黒とは土の色であり、死肉の貪る烏の群れの色であり、総じて戦争の色。

            白とは、平和の色。

            戦は終わったことを天下万民に知らしめる「平和宣言」。

            そう解釈する秀忠に「半分じゃな」と答える家康。

            ここら辺のやり取りは小説ゆえの面白みであろうが、なかなか説得力のある問答でもある。

            「白は生のみの色にあらず。死の色でもある。」

            「わしの今日あるのは、無数の死者のおかげなのじゃ。」

            70有余年の人生において、50年以上戦に身を投じ、人生は重荷を背負いて歩くが如しと遺した家康らしい、天守を白御影の墓石ととらえる言葉が胸に強く残る一冊である。


            僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう

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              「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」(文春新書)を読んだ。

              各界の著名人が語る、何者でもなかった時代の話に思わず引き込まれた。

              今年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和さんの「先入観が崩れたときに、世界を発見する」という話はとても心に響いた。

              そして、日本の霊長類研究の第一人者であり、京都大学の総長でもある山極壽一さんの大学生に向けてのメッセージにはとても共感した。

              「自分にしかできないことは何だろうと、思ったほうがいい。あなたというのは、この世にひとりしかいないんだから。自分だからこそできることを探してみてほしい。」「人間の一番重要な能力は諦めないということです。動物はできなかったら諦めちゃう。人間はなかなか諦めない。失敗しても失敗しても諦めない。だから、人間は空を飛べるようになったし、海中深く潜れるようになったし、様々な道具を発明し、人間の身体以上のことができるようになった。諦めなければ、いつかきっとできる。これは、我々人間がみんなもっている能力なので、使わない手はありません。」

               

              このメッセージは学生だけではなく、仕事に就いている私たち社会人にもあてはまる心強いエールである。

               

              その他にもサルの生態について語られら人間にある白目の果たす意味の大きさやゴリラのホモセクシャル行動など好奇心そそられる話題も多く、楽しめる一冊になっている。


              軽い燃えつき症候群 心癒す音楽

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                JUGEMテーマ:日記・一般

                 

                7月になって初めての書き込みである。

                仕事関係の大きなイベントが終わり、虚脱状態というか軽い燃えつき症候群のような心境である。

                活字に触れたいという気分もわかず、クラシックを静かに聞いて過ごしている。

                久しぶりにマーラーの交響曲1番「巨人」ベートーヴェンのピアノ協奏曲5番「皇帝」を繰り返して聴いていた。

                マーラー交響曲録音の金字塔的存在となったテンシュテットとロンドン・フィルによる演奏である。

                バーンスタインのような少しドラマがかった仰々しさはなく、めりはりの効いた若々しい情感の溢れる名演である。

                 

                ピアノ協奏曲「皇帝」は数多くのピアニストによる名演奏があるが、個人的に最近ではアンスネスばかりを聴いている。

                何気なく立ち寄った本屋でクラシック雑誌の「レコード芸術」を見ていたら、ピアニストベスト200選という特集が組まれていた。

                アンスネスは現存するピアニスト部門で堂々の6位に輝いていた。

                彼のピアノのスタイルを評者は「王道」という言葉を用いて評していたのが印象的であった。

                力強い打鍵にありながら、温かみを感じさせる音の感触が心地よいのである。

                 

                J POPでは平井大の新譜が出たのでダウンロードした。

                先日、FM放送で「個人的にはアルバムにテーマを求めない。コンセプトを決めすぎると、枠にとらわれてしまって自由な発想での楽曲づくりを楽しめない。」と彼自身が語っていた。

                今回もバラエティ豊かな楽曲が楽しめる。特に気に入っているのがヴァイオリンの葉加瀬太郎をフューチャーした「はじまりの歌」である。

                 

                はじまりの歌 口ずさんで 止まらず行こう

                見上げた空 砂を蹴って 行けるところまで

                振り返れば一人じゃない 愛はいつだって


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