「クリーブランドは自分の楽器」

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    JUGEMテーマ:音楽

     

    読売日本交響楽団の演奏の余韻が心に残り、そのままの気持ちで横浜のタワーレコードを訪れた。

    そして、なかば衝動的にドヴォルザークの交響曲を収めたアルバムを購入した。

    指揮はジョージ・セル、楽団は言わずとしれたクリーブランド管弦楽団である。

    「白鳥の歌」となった1970年盤が円熟の極致であるならば、このCDに収録されている1958年盤はまさに「クリーブランドは自分の楽器」と言わしめた、指揮者セルの思い通りという規律の中にも、一切の無駄な音が存在しない端正さ。芳醇な香り。まさにオーケストラ全体としての力をまざまざと見せつけた演奏となっている。

     

    コンサートマスターのダニエル・マジェスタがこう語っている。

    「一にも二にもリズムが最優先し、それにきれいで正確なイントネーションを求め、さらに自然で誰だ聴いても柔和なアンサンブルの精密さを加えて、自分なりに納得のいく音を完成していく」。

     

    指揮者と演奏者がこれだけ緊密な関係にあったのは彼以外ではムラヴィンスキーとレニングラード・フィル以外にない。

    今日もドヴォルザーク8番・9番をずっと聴いている・・・

    時折FM放送から流れてくるJ POPのあまりの陳腐さに苦笑せざるを得ない。

    不滅の演奏がここにある。

     


    心の洗濯、魂の浄化

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      JUGEMテーマ:音楽

       

      最近のストレス発散の一番の特効薬は「クラシックコンサート」である。

      先週に引き続き、今日もみなとみらいホールでのコンサートを堪能した。

      読売日本交響楽団による 第105回みなとみらいホリデー名曲シリーズである。

      スメタナの歌劇「売られた花嫁」序曲、ブルッフの「スコットランド幻想曲」そして、今回のプログラムの中では一番のお目当てであったドヴォルザークの交響曲8番、俗に言われている「イギリス」である。

      指揮者は新進気鋭のコルネリウス・マイスターである。

       

      やはり、交響曲8番はよかった。

      ドライブ感溢れる指揮、そしてめりありのある演奏。瑞々しさの感じられる8番であった。

      この8番の演奏で大好きなのはセル率いるクリーブランド管弦楽団の演奏である。

      特にセル自身の「白鳥の歌」となった演奏を聴いてからコンサートとなったのだが、なかなかの掘り出し物といった演奏であった。

      フルートおよびクラリネットの演奏が際立っていた。

      やはり、生の音に触れると正直どんな高音質のCDも及ばないということを実感した。

       

      コンサートを終え、家路に向かう時、街はひどい雨模様であった。

      また、仕事面などで嫌なこともあり心塞ぐ思いでコンサート会場に向かった。しかし、そんな鬱な気分も吹き飛んだ。

      コンサートにきてよかった。

      心の洗濯。魂の浄化。

      クラシックの音楽の力の大きさである。


      生命の連綿たるつながり 写真家「星野道夫」の哲学

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        JUGEMテーマ:読書

        珍しくこの土日は図書館に行かなかった。

        昨日はクラシックコンサートを堪能し、テレビやネット放送でサッカーを楽しんだ。

        それでも、星野道夫の写真集を見ていた。

        福音館の「たくさんのふしぎ傑作集」の「クマよ」「森へ」「アラスカたんけん記」である。

        これらのシリーズは子ども向けに編まれたものであるが、その内容=写真や紀行文は大人の私たちであっても思わず引き込まれる内容である。

         

        没後20年特別展 星野道夫の旅(朝日新聞社)にこう記されている。

        「人間はクジラに向かってもりを投げ、クジラはサケをのみこみ、サケはニシンをのみこむ。−生まれかわっていく、いのちたち。」

        そして、「いつの日か、わたしたちは、氷の世界で出会うだろう。その時、おまえがいのちを落としても、わたしがいのちを落としても、どちらでもよいのだ」と。

         

        これは写真絵本「ナヌークの贈りもの」の中で語られている言葉だ。

         

        生命の連綿としたつながりを写真や文を通して描き切ろうとしたのが星野道夫の哲学であろう。

         

        数多くの写真の中で、私が一番好きなのは白頭鷲が飛翔する瞬間をとらえたものだ。

        森の主たるその気高くも勇ましい風貌が心を惹きつけてやまない。

         


        魂のサッカー アイスランドの戦い

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          JUGEMテーマ:スポーツ

           

          いよいよサッカーW杯が開幕した。

          早くもポルトガルVSスペインのように歴史に残る試合が生まれている。

          昨日は優勝候補の一角であるアルゼンチンVSアイスランドの試合をテレビで見た。

          先日FM放送において某サッカーライターがアイスランドを評して、全員攻撃、全員防御の見ている人間の心に感動を与えるサッカーと語っていたことが頭に残っていた。

           

          その言葉がフロックでないことを証明する「魂のサッカー」がそこにはあった。

          人口35万人、その中から女性や子供、高齢者の男性を除けば、サッカー人口そのものが本大会の参加国の中では最少である。

          だからこそ、自分たちのできることを全員でやり遂げようというその姿勢に心打たれるのである。

           

          メッシがPKを外したのではなく、無名のキーパーがコースを読み切りしっかりセーブしたのだ。

          そういうプレイが生まれる素地が90分の中に息づいている。

          解説者の岡田武史氏もしきりに見ている者に感動を与えると絶賛していた。

          私たちサッカーファンが日本の選手たちに期待しているのはそういう姿勢なのだ。

          コロンビア、セネガル、ポーランドと同じ組に入っている国は圧倒的に日本の格上である。

          3敗もあるということを戦前から覚悟しておかねばらなない。

          勝利を願ってはいるが、それ以上に見ている人間の心に熱い火を灯すサッカーができるかである。

          そういったことを改めてアイスランドは教えてくれた。


          心打ち震える100分 「ハイリゲンシュタット」後の2大曲コンサート

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            JUGEMテーマ:音楽

             

            昨日、横浜 みなとみらい大ホールにコンサートに行った。

            神奈川フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会 みなとみらいシリーズ第340回であった。

            テーマはズバリ ベートーヴェン。しかも「ハイリゲンシュタットの遺書」後の傑作2作品である「ピアノ協奏曲第3番」交響曲の概念そのものを変えたといわれている「交響曲第3番=エロイカ」に加えて、本邦初お披露目となるシチェドリンの「ベートーヴェンのハイリゲンシュタットの遺書―管弦楽のための交響的断章」というファン垂涎のプログラムであった。

             

            どれもみな素晴らしい演奏であった。個人的にはやはりエロイカに尽きる。

            古典派の交響曲で最長のものでもモーツァルトのジュピターの35分程度である。それを10分以上超えの当時の破格の巨大交響曲であった。特に、第1楽章の大きさはその繰り返しも含め、ハイドンやモーツァルトを越えていこうというベートーヴェンの熱い思いがひしひしと伝わってくる。

             

            以前にも記したが、聴力を失うという音楽家としての絶望的な状況下にあって、死後160年経ってなお色褪せることなく、異国の地に住む人間の心をとらえて離さない音楽を創造したベートーヴェンという人間のもつ力に、ただただ恐れ入るばかりだ。

            しかもその音楽には揺るぎない力があり、生きるエネルギーに満ちているのだ。

             

            もし自分がベートーヴェンの音楽にめぐりあっていなかったら、命を絶っていたかもしれない・・・。

            そんな絶望的な状況をかかえての出合いであったことも不思議な縁である。

            心打ち震える感動の100分であった。

            指揮者の高関健氏によるコンサート前のプレトークもなかなか興味深かった。


            「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

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              JUGEMテーマ:読書

               

              NHK出版新書「司馬遼太郎」で学ぶ日本史を読んだ。

              特に印象深かったのは、明治期においてヨーロッパという名の憲法国家のブティックに日本が入り、どの服が自分に合うかと模索していたところ、フランスとの戦いに勝利をおさめたドイツ・プロイセンに目がとまった。そして、着てみたら、天皇や政府といった頭や上半身の大きな当時の日本の身の丈にジャストフィットした。そこからドイツ服を買って帰ろうということになった。

              勿論、イギリス服がよいと主張していた大隈重信や福沢諭吉の考えはしりぞけられ、伊藤博文らの意見が大勢を占めるに至った。

              そして、ドイツ式の作戦思想が後の日露戦争に有効であり、勝利を収めたことでいよいよ「ドイツへの傾斜」を助長させる結果になったという部分である。

              このことを司馬遼太郎は「この国のかたち」に書いている。

              しかし、明治期はまだ日本の軍人は自国を客観視し、他国と比較する能力を有していたと指摘する。

              結局、昭和期の軍人がひたすらに勝ち目のない戦争に没入していったのは、あたかもドイツ人になったかのような自国中心の、まわりに目を向けることのなかったその独善性にあったと述べている。

              そして、ただ一種類の文化を濃縮駐車し続ければ、薬物中毒になるのは必然と指摘している。

              ドイツという薬物注射の中での「統帥権」こそが日本という人体を蝕んでいった。

              やはり、この辺の語りは強い説得力をもって胸に迫るものがある。

              この新書の著者は「武士の家計簿」で評判をとった磯田道史氏である。

              司馬遼太郎が、昭和期の物語を書く代わりに「この国のかたち」に込めた思いを知ることができた。

              大変、興味深い一冊である。


              熱狂のW杯 いよいよ始まる・・・

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                JUGEMテーマ:スポーツ

                 

                いよいよ来週から4年に一度の世界の熱狂の祭典 ワールドカップ ロシア大会が始まる。

                初戦がポルトガルVSスペインというのもワクワク感を助長させている。

                日本も監督を解任させ、何とか勝利への打開策を模索しているがなかなか前途は暗い。

                だが、応援しよう。

                SNS上では批判ばかりだが、勝ちたいと一番強く願っているのは選手たちなのだ。

                最終親善試合のパラグアイ戦に向けて、しっかり選手間でコミュニケーションを図って試合に臨んでほしいと願うばかりだ。

                 

                私は勿論日本を応援はするが、ワールドカップの愉しみ方はそれ以外にあると考えている。

                前回大会の屈辱をブラジルは果たせるのかということも気になるし、肝心なところで力を発揮しきれないイングランドが化けるのかどうか。優勝候補に挙がっていないが、優秀なタレントぞろいのベルギーに台風の目になってほしいなど興味は尽きない。

                 

                しかし、本大会にイタリア、オランダが不在なのは残念である。

                それだけ、ヨーロッパでの国同士の差が僅少になっているということでもあろう。

                今までにも数々のドラマを生んできたワールドカップ。

                さあ、今大会ではどんなドラマが生まれるのか。

                 

                個人的にイチ押しはベルギーだ。

                マンCのデブライユ、チェルシーのアザールの活躍に期待している。

                キックオフまであと数日・・・

                 

                 


                来日10周年記念公演 チェコフィルハーモニーゾリステン

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                  先日、クラシックコンサートに出かけた。

                  場所は横浜みなとみらい小ホールである。

                  来日10周年記念公演! チェコフィルハーモニーゾリステン&ピアノである。

                  チェコフィルはお気に入りのひとつのオーケストラであるが、その中の弦楽の名手たち、やはり流石とうならされる音色を響かせてくれた。

                  名だたる賞を受賞していることが本物であることを証明してくれる圧巻の演奏であった。

                  特に第一バイオリンの音の柔らかさに圧倒された。

                  モーツァルトのピアノ協奏曲の中でも短調として有名な20番も、主役のピアノの演奏はいいとは言えなかった。

                  ここぞという場面でのミスタッチもあり、音がキンキンと響くのもこの曲のよさを減じていると感じた。

                  一方で、弦楽の響きに心奪われた。

                  シューマンのピアノ5重奏曲も同様である。

                  みなとみらいの小ホールは初めての音体験であったが、音響のよさは抜群であった。

                  現実のストレスをひととき忘れる異次元への小トリップを堪能することができた。


                  J POPのつまらなさ 楽曲の質の低下を憂う

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                    JUGEMテーマ:音楽

                     

                    日脚の伸びを実感する毎日である。

                    やはり太陽の光はいい。気持ちが明るく、前向きになる。

                    そんな日にはPOPSが似合う。洋楽は充実しているように思える。

                    チャーリー・プースやショーン・メンデスの新作は今までの作品を越え、一段と成長した音が聴かれる。

                    一方でJ POPはどうだろう?

                    あくまで個人的な意見であるが、最近のバンドの音がどうも金太郎飴のようで、ボーカルスタイルも似たり寄ったり、楽曲も大差はない印象を受ける。強烈に心にフックするような曲は皆無である。

                    世界的にメタル離れが加速しているというが、よほどメタルバンドの楽曲の方がドラマティックであったり、メロディアスであったり充実している。

                     

                    J POPでは竹原ピストルくらいしか聴いていない。つまらないからだ。

                    まず大声でシャウトしようと思わせてくれない楽曲をいくら垂れ流したところで、カタルシスは訪れない。

                    音楽は純粋に音を楽しむものであるが、日本の楽曲の質が低下しているのは紛れもない事実であろう。

                    だから、今人気のJ POPバンドには総じて見切りをつけている。

                    音楽そのものをファッションとしか考えていないようなバンドが雨後の筍のように噴き出していて飽和している。

                     

                    唯一、大好きなクロマニヨンズも最近はその曲に力がない。

                    残念至極である。


                    新選組の料理人

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                      門井慶喜の「新選組の料理人」(光文社)を一気読みした。

                      新選組と言えば司馬遼太郎の「燃えよ剣」「新選組血風録」がその頂点を示すであろう。

                      この小説は、ひょんなことから賄い方として、入隊をすすめられた菅沼鉢四郎の眼をとおして描かれた新選組の内側を描いた物語である。

                      入隊したものの、気になるのは蛤御門の変で大火となった京から伏見へと逃げ延びた妻と子の安否。

                      しかし、驚きの真実を目にすることになる。

                      一方で、新選組に誘った隊士の原田左之助は妻をめとり、子をもうける。

                      そのことによって左之助の内面がどう変化していくのかが、この物語の主軸であろう。

                       

                      新選組の隊士にとって、最も贅沢なことはいい女を抱くことでも、美味い酒を飲むことでもない。

                      俗世の人が当たり前に望むことこそ、ただで成しているものこそがその贅沢なのである。

                      だからこそ、家族をつくった左之助に対して、批判をしながらも心の裡では強い羨望の念がある。

                      それが無用な諍いや葛藤を呼び起こす。

                      その描き方がとてもうまい。思わず引き込まれる。

                       

                      最後の場面。剣の腕も立たず、臆病な鉢四郎が戦場の土塊となろうと決意する・・・。

                      それは左之助の心境の変化と強いコントラストをなし、強く心に迫るものがある。


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