うなる面白さ! 平城京のごみ図鑑

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    JUGEMテーマ:読書

    書店をぶらぶらする楽しみのひとつとして、思いがけずに面白い本に巡り合えるということがある。

    先日も、横浜の有隣堂でそういう経験をした。

    その本とは「平城京のごみ図鑑」(奈良文化財研究所 監修)である。

    特に、興味をそそられたのは「木簡」の果たしている役割についてである。

    「木簡」というと当時の税であった「調」=全国の特産品を奈良まで運ぶ際の荷札というイメージが強いのであるが、実は個人情報をカード化したものであったり、さらには指の関節の位置を点で記して、IDカードの役割も果たしていたりというのであるから「ははあ」とうなってしまった。

    また、何度も削って繰り返し使ったというリサイクル感覚であるとか、習字の練習に用いたとか、絵を描いたとかいろいろな使い方をしているところなど、ものを粗末に扱う現代人は学ぶべき点が多いと感じた。

    そして、最終的には現代のトイレットペーパー代わりともいえる「チュウギ」にまで変身させているのであるから、まさに恐れ入るほどの徹底ぶりに感心した。

    また有名な長屋王家の木簡からは犬や鶏を飼育するための部署が設けられており、それは子どもが担当しており、しっかり役目を果たせば米が支給されていたなど意外な事実を知ることができ、大満足の読書体験となった。


    山本周五郎の言葉

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      JUGEMテーマ:音楽

       

      「僕は、今後僕のような時代小説を書ける作者は出てこないように思いますね。時代小説というと、かつらをつけて刀を振り回すだけだ。時代背景の描写と、刀を振り回していっぺんに五人も十人もぶった切るということしかない。小説とは人間を描くことで、状況を書くことじゃない。小説というのは、極限されたスペースへ無限大のものを描写するということで、テーマに関係のないものは木の葉一枚加えることはできないんですね。

       

      私の敬愛してやまない山本周五郎の言葉である。

       

      小説とは人間を描くものというところを読んで、やはり私を読書の世界へと誘ってくれた小説界の巨人 松本清張の言葉を思い出してしまった。清張も推理小説という範疇にとどまるのではなく、人間小説を描くことにこだわった作家であった。

       

      周五郎の小説の魅力は、彼の描きたい「テーマ」というものが端的かつ明確に伝わってくるところにある。

      余計な言葉も無意味かつ冗長な描写もない。

      ストイックなまでにも選び抜かれ、そぎ落とされたかのように見えるその文体の中にも、人間の善なるものを描き切ろうという温かさというものが確かに存在する。

      そこに私は惹かれるのである。

      たとえば、「おたふく」。

      本当に短い作品であるが、そこには見事なまでの無垢なる邪気のない清々しいまでの女性の愛の姿が描かれている。

      この作品をして、「下町物」といわれるものにおいて誰にも負けない作品を書いてみせるという自信をつけたというエピソードが残っている。


      ながい坂

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        JUGEMテーマ:読書

         

        山本周五郎、最晩年の長編「ながい坂」(新潮文庫)を読了した。

        文庫本上下あわせて1100ページという物語である。

        名作「さぶ」同様に主人公である三浦主水正の人間形成物語である。

        山本周五郎の真髄ともいえる、夫婦愛や私利私欲を超えた大義の意味などが静謐な筆致で淡々と綴られていくという印象である。

        三浦主水庄が対峙するその時々の苦難や壁は大きいものだが、それに対してひるむことなく立ち向かう姿勢は、発表当時、多くのサラリーマンの共感を呼んだらしい。

        もともと、周五郎は徳川家康を描きたかったのだが、書き表すだけの時間と体力的な自信がないことを悟り、家康の姿を三浦主水正に投影させて描いたのである。

        「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し、急ぐべからず」

        この徳川家康の遺訓が物語の大きなテーマになっている。

         

        「人間のすることに、無駄なことは一つもない。」

        「眼に見えることだけを考えると、ばかげていたり徒労だと思えるものも、それを繰り返し、やり直し、積み重ねてゆくことで、人間でなければ出来ない大きな、いや、値打ちのある仕事が作り上げられるものだ・・・」

         

        読み終えた後、静かな感動が余韻として残る名作である。


        東大寺の瓦

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          JUGEMテーマ:日記・一般

           

          最近、屋根瓦に興味をもっている。

          特に寺院の瓦である。

          先日、ヤフオクにおいて東大寺の大仏殿の平瓦を手に入れた。

          昭和の大改修の際に用いられた瓦である。

          大仏を鎮護する大仏殿の瓦の数は約11万枚。

          しかも、東大寺の瓦は別格の大きさ、重さである。購入してみて初めて分かった。

          何とたった一枚の平瓦で15キログラムである。

          これを奈良時代という何も重工機がない時代に屋根に葺いたのである。井上靖の名作「天平の甍」に象徴される瓦である。

          瓦の焼き窯だけでも多数、平城京の周辺にあったのであるが、焼きや運搬などものすごい労力であったことは想像に難くない。

          そして、瓦の端に鎮座する鬼瓦の数々。

          東大寺ほどバリエーション豊かな「鬼」はあまりない。

          勿論、奈良時代の「鬼」とそれ以降の「鬼」では立体感が全く違うのであるが、瓦職人の思いが詰まった作品であることは間違いない。

          鬼瓦だけを集めた写真集を購入したのだが、いくら見ていても飽きることがない。

          またひとつ興味あることが見つかった。

          幸せなことである。


          与之助の花 圧倒的なスピード感

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            JUGEMテーマ:読書

             

            「モノ」で読み解く世界史は食べ物でいえばデザート的な意味合いで、基本はずっと山本周五郎を読んでいる。

            「深川安楽亭」「日々平安」「与之助の花」とすべて短編集であるが読み進めてきた。

            これらの中での私のお気に入りは「与之助の花」である。

            まず、収められた作品のもつスピード感である。

            周五郎は読みやすい作家であるけれど、この短編集は特にその印象が強い。

            冒頭の「恋芙蓉」から始まり、「孤島」、「非常の剣」、タイトルになった「与之助の花」・・・

            ジャンルは違うがいずれも周五郎らしさに溢れた名作である。

            確かに内容的にこれらの作品と似た短編もあり、特に傑出するということはないが、読み手にとっては心落ち着くのである。

            それが「らしさ」であろう。

             

            中国との密貿易の不正を暴く「非常の剣」。

            主人公の弦八郎の活躍を鮮やかに描くこの作品の重要なファクターになっているのは弦八郎の叔父「棋兵衛」の何かにつけてこじつける諺である。

            「蛇を殺さんとすればその脳髄まで」そして「非情の剣は断固たる可し」

             

            まさに一気呵成の展開力そしてスピード感。

            快感である。

             

             


            レストラン=元気を回復させるスープ!

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              「モノ」で読み解く世界史 宮崎正勝(大和書房)を読んだ。

              歴史好きには興味のある話が多く、一気読みした。

              中でも、レストランの起こりについては印象に残った。

              レストランとはフランス語で「元気を回復させる」という意味すら知らなかった。

              1765年、パリにおいてブーランジェという人物が羊の肉の入った「レストラン」という名の活力をつけるスープを売り出したところ、大評判になった。

              以降、この料理の名前が新しいタイプの料理店の名称になったのである。

              そして、フランス革命の直前の1986年の法令において、正式に決定されたのである。

              もともと、貴族の特権的な料理であったフランス料理が街に拡散していったのは、1989年のフランス革命において、国王ルイ16世が処刑されたことで貴族が特権を失い、多数抱えていた宮廷料理人たちが職を求めて、街に出ていったからである。

              フランス革命がなければ、洗練されたフランス料理特有のソースの味は庶民の間には広まらなかったのである。

              そして、コックが被る白い帽子も、実はお客が被っていた白い帽子をもとにしたというのだから驚きである。

              「モノ」にまつわる意外な話はたまらなく面白い。


              90歳ブロムシュテット 渾身の傑作 ベートーヴェン交響曲全集

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                正しい休日を過ごしている。勿論、自分にとっての「正しい」である。

                ひたすら読書三昧に加えてクラシック音楽を聴いている。

                やはり、ベートーヴェンが一番である。交響曲5番、6番である。

                クラシックのCDが在庫切れというのもあまり聞かない話である。

                まして、店頭にないだけでなくネットで調べてもそうなのだから、正直たまげた。

                御年90歳になる我が敬愛するヘルベルト・ブロムシュテット指揮によるベートーヴェン交響曲全集である。

                確か昨年の日本のクラシックアカデミー(交響曲部門)大賞に選出された作品である。

                3か月間、待ち続けてやっと手元に届いた。

                早速聴いているのだが、素晴らしい内容である。

                 

                ブロムシュテットの信念は、ベートーヴェンのメトロノーム表示を常に厳正に受け止めるべきだということだ。

                しかし、機械的にものに陥らないように、テンポの柔軟性と微細な変化に注意していると語っている。

                昔から、ベートーヴェンのメトロノーム表示では演奏不可という認識が共有されていた。

                しかし、それは言い訳にすぎないと彼はとらえている。

                「すべては演奏可能です。ほとんど演奏不可能と思える部分でも、それは作曲家がそう意図したものなのです。ここでもテンポは、音楽の曲風を左右します。これ以上、速めると技術的に無理という限界にきた時にこそ、独自の表情が生まれてくるからです。すべてが易々と演奏できるなら、猛り狂う嵐のような性格を音楽から表現できないことになります。」

                 

                徹頭徹尾、スコアにこだわり、作曲者ベートーヴェンの思いに近づこうというあくなき精神が、この新録音の交響曲全集を強靭なものにしている。とにかく素晴らしいの一言に尽きる。

                以前にも記したが、初めてベートーヴェン交響曲全集を聴いたのがブロムシュテットであった。ドレスデン・シュターツカペレであった。この演奏も素晴らしく、私をクラシックの大会へといざなってくれた名盤である。

                そして、今回のライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏。

                私の中での屈指の作品である。3か月待った甲斐があった。ただただ嬉しい。


                GW後半スタート イライラの時間が過ぎていく・・・

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                  JUGEMテーマ:日記・一般

                   

                  5月初書き込みである。

                  GW後半とはいえ、家で仕事をしようと思い立ち、パソコンで電源を入れたところまではよかった。

                  ところが、つい最近まで使えていたスキャナーが稼働しないのである。

                  アプリの起動ものろのろと遅く、スキャン開始ボタンを押せるところまでたどり着いたのだが、全くうんともすんとも言わない。

                  使いたいときに、思い立った時に役に立たないのがWINDOWSパソコンである。

                  今までに何度、貴重な時間を無駄にしてきたことか。

                  私の体調悪化の特に精神面での不調原因の一端はWINDOWSパソコンといってもいい。

                  それぐらいにイライラを引き起こす頻度が高い。

                  当然、ぶつぶつと文句を言うことも多くなり、神経性の下痢にも陥り、家族からの不評も買うことにもなる。

                  ひとつも楽しいことがないまま、大事な一日が過ぎていくことが腹立たしい。

                   

                  救いと言えば、探していた本「平城京再現」が見つかったことか。

                  今日のイライラをどう鎮めるか?思案中である。

                   

                   


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