炎〜あなたがここにいてほしい〜

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    JUGEMテーマ:音楽

     

    今日で9月も終わりである。

    一気に秋が押し寄せてきた感のする今年の9月であった。

    9月をしめくくる形で、ふと取り出したアルバムはピンク・フロイド「炎〜あなたがここにいてほしい〜」である。

    宇宙的なセールスを記録した前作「狂気」に続くアルバムである。

    ピンク・フロイドの人間的な自己の内面を吐露した問題作といわれている。

    ライナーノーツは大貫憲章や今泉洋が担当しているが、評価は辛い。

    当時の彼らは何も分かっていなかったのだ。

    かくいう私も当時は高校生。魅力に乏しいアルバムだと感じていた。

    だが、いま聴くとこのアルバムの凄味がひしひしと感じられる。

    個人的には私はこのアルバムが一番好きである。

    「クレイジー・ダイヤモンド」第1部、第2部合わせて25分にも及ぶ大作。

    盟友シド・バレットへの曲となっている。

    一聴するととてもラフなように聴こえるのだが、ギターのトーン、うねりはギルモアの独壇場であるし、リズムの構成も絶妙である。

    何といっても、邦題に「あなたがここにてほしい」とつけるようにと要望したWISH YOU WERE HEREは格別な響きを放つ。

     

    僕らは来る年も来る年も

    ひとつの金魚鉢の中をさまよう哀れな魂

    同じ大地を走り回るだけで

    一体何を見つけたというのだ?

    結局昔と変わら恐怖だけ

    おまえがここにいてくれたら・・・


    鬼謀の人

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      JUGEMテーマ:読書

       

      司馬遼太郎の短編を読んでいる。

      時代・歴史小説はあまり読まない。その例外は吉村昭である。

      「長英逃亡」「冬の鷹」「蚤と爆弾」などはその話の中に一気に引き込まれてしまい、圧倒された。

      司馬遼太郎はエッセイは数冊読んだが、小説は読んでこなかった。

      図書館で何気なく手にした短編集「人斬り以蔵」(新潮文庫)にはまってしまった。

      その冒頭に収められている「鬼謀の人」が特に心に強く残った。

      日本陸軍の建軍の祖といわれる大村益次郎の生き様を表した作品である。

      維新の十傑のひとりである。

      「火吹達磨」と言わしめたその位相。酷い船酔いのため外国に渡った経験はないが、あらゆる学問に精通した天才肌は西洋式の軍隊の長所と軍制をほぼ完全に取り入れた。

      大胆にして緻密ともいえる作戦。

      第二次長州征討での幕府軍との戦いでの見事な指揮、そして、彰義隊殲滅作戦。

      江戸市中に火の手をあげさせることなく一日で制圧したその作戦はまさに益次郎が描いていたシナリオ通りであった。

      しかし、論がたちすぎで人の心の機微が感じ取れないことで多くの人間の誤解や恨みを買うことも多かった。

      それゆえ、最期は暗殺というあっけない人生の幕引きが待っていた。

      奇士 大村益次郎の人間としての強さや弱さを端的に表した好著である。

       

      「弾道論と同じだ。人の世も、数式通りにはいかない。」


      ファイヤー・レイク

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        JUGEMテーマ:音楽

        一体、だれが人生を賭けてまで

        ファイヤー・レイクを目指すだろう

        わざわざ炎の湖に向かって

        突き進んでいくやつがいるだろうか

        人生を台無しにしてまで

        ファイヤー・レイクを目指そうなんて

        フアイヤー・レイクを目指そうなんて

        だれが思うのだろう

         

        ボブ・シーガーの不滅の名盤「奔馬の如く」を聴いている。

        1980年リリースの全米チャート第一位という輝かしいアルバムである。

        余分な装飾のない、シンプル イズ ベストを地で行くようなrockアルバムである。

        その中の一曲に「ファイヤー・レイク」がある。

        ゆったりとしたカントリー風の曲調なのだが、バックコーラスをとっているのが、当時世界最高の人気があったイーグルスの面子であるのだから、堪らない。

        特に、ドン・ヘンリーの声は一聴してそれと分かる哀感を帯びており、鳥肌が立ってしまった。

         

        だれがアント・サラに言いたがるんだい

        アンクル・ジョーはファイヤー・レイクへ逃げちまったと

        炎の湖に入っちまったと

         


        15歳,ぬけがら

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          講談社児童文学新人賞佳作に選出された「15歳、ぬけがら」を読了した。

          今や社会問題になっている児童の貧困を真正面からとり上げた異色作である。

          主人公は中学3年の麻美。

          事情があり,今や低所得者層が暮らす市内のアパートに母親と二人で住んでいる。

          母親は心療内科に通い、働く意欲はなくほとんど寝て暮らしている。

          時折、派手な化粧と出で立ちで夜の街に出ていく。

          また、男をアパートに連れ込んではという状況。

          そんな絶望的な日々を麻美は生きている。

          夜のア一ケードで知り合った仲間達が万引や援助交際という非行に走る中、麻美は.これでいいのかと思いとどまる。

          それは幼馴染みの翔の存在や幼い和馬との繋がりが辛うじて引き留めているのだ。

          そして、学習支援塾「まなび〜」と出合う。

          そこで得たものとは。

          麻美が一歩ふみ出そうと決意するラストは清々しい。また、著者が公立学校に勤務していたということで、学校の中での麻美に対する級友のいじめなどの細かな部分の描き方もリアル感である。居場所を見つけられない子どもたちの心の中の寂寥感なども伝わってくる。

          新人賞の「ラブリィ」以上にインパクトの強い読後感を残す作品であった。

           

           


          石田三成の「正道」

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            JUGEMテーマ:日記・一般

             

            ハッピーマンデーなどというくだらない制度ができてしまったために祝日の意味まで薄れてしまってきているような気がする。

            敬老の日にしてもそうだ。昔は9月15日であった。お彼岸の一週間前は敬老の日という感覚で覚えていたものだ。

             

            さて、その9月15日「関ケ原の戦い」の日でもある。

            今年は映画化され、話題にもなっているが有利といわれた石田三成率いる西軍が徳川家康率いる東軍に敗れ、長く続く徳川時代=江戸時代への端緒となった戦いでもある。

            そんなことは小学生でも知っている事実であるが、あまりにも秀吉への義を重んじた石田三成だからこその敗北という見方もできる。

            家康の隙をついての夜襲を企てようとした重臣 島左近を止めたことや、最後まで秀頼を戦場に担ぎ出さなかったことなど、権謀術数に長けた狡猾な家康とはあまりにも対照的な「正道」を貫いた武士であった。

            「正道」などという言葉はもはや今の時代では死語である。

            だからこそ、石田三成 再評価の風が吹いているような気がする。


            ターナーの汽罐車 LIVE

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              退屈な金曜日 埋め合わせのパーティー
              お決まりの場所に 吹き替えの映画さ
              まるで 気のない声

              虹色のシャンペインを
              かたむける君の 見つめる絵はターナー
              おぼろげな汽罐車が走る
              音も立てず

              こんな夜の中じゃ 愛は見つからない
              こんな夜の中じゃ 愛は戻って来ない
              知っているのに何故

               

              山下達郎が通算50作目となるシングルを発売した。

              REBORNである。

              その新譜の中にカップリングされているのが、名作「ターナーの汽罐車」である。

              しかもLIVE バージョンである。

              難波弘之のピアノがジャジーな雰囲気を醸し出しており、スタジオ盤より数段味わい深い仕上がりになっている。

               

              モチーフとして使われたターナーの絵は、絵画史上初めて「速度」を描いた作品として知られている。

              まるで、靄の中から突然現れたかのような疾走する機関車。

              逃げる野兎。傍を進む一艘の舟。農夫と牛。

              イギリス産業革命の象徴とも言える機関車との鮮やかなコントラスト。

              輪郭を感じさせない朦朧とした色遣いだからこそ、速度がくっきりと浮かび上がってくる名画である。

               


              本を守ろうとする猫の話

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                JUGEMテーマ:読書

                 

                歩きスマホのことを英語では「スマートフォン ゾンビ」というそうだ。

                なるほど、歩きスマホをしている時の人間には表情はなく生気を失った感じがゾンビに似ているというのは頷ける。

                情報が氾濫し、指先一つでニュースを取得し、興味本位の話には事欠かない時代になった。

                世界の名著や古典をじっくり読む時間は現代人からは失われ、どう生きるかという哲学ではなくHOW TO本が雨後の筍の如く、大量生産・消費されている時代である。

                 

                そんな現代を揶揄するような冒険ストーリーが誕生した。

                「神様のカルテ」で有名な夏川草介「本を守ろうとする猫の話」(小学館)である。

                古書店を営む祖父と二人暮らしの引きこもりの高校生 夏木林太郎。突然の祖父の死をきっかけに、言葉をしゃべるトラネコと出会い、本を解き放つための迷宮を旅することになる物語である。

                 

                本好き、とりわけ古書店街めぐりや図書館好きにはたまらない面白さを秘めた話である。

                林太郎とともに旅をしている感覚に陥った。

                 

                祖父が林太郎に与えた影響=言葉の重みが物語を支える土台になっている。

                「ただ、がむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない。どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物にすぎないのだよ。」

                 

                「読むのはよい。けれども読み終えたら、次は歩き出す時だ。」

                 

                林太郎と学級委員の柚木沙夜との淡いつながりも物語によい味を加えている。

                何気なく書店で手にした本であるが、なかなかの佳品である。

                 


                ゼルキンの魅力 音楽の深みを探るピアニズム

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                  久しぶりに べートーヴェンのピアノソナタを聴いている。

                  ピアニストはルドルフ・ゼルキンである。

                  ベートーヴェン ピアノ曲全集である。

                  ゼルキンはヴィルトゥオーゾでありながら、謹厳実直というその風貌からも分かるように音楽の内面的な表現力にこそ真価を発揮したピアニストである。

                  天衣無縫のルービンシュタインと対極のピアニストである。

                  そのあたりの比較については以前にも紹介した村上春樹の「意味がなければスイングはない」(文藝春秋)に詳しく書かれている。

                  ベートーヴェンの深い音楽性を表現するには最も適したピアニストではないだろうか。

                  「真剣に練習しなければ、まともに演奏などできない。」「楽しんで舞台に出たことなど一度もない。」

                  これらの言葉にゼルキンの全てが言い尽くされている。

                  たとえミスタッチをしたとしても、それを覆いつくすほどの徹底した作品の本質に迫る武骨さこそが彼の魅力である。

                  ピアノに華麗さを求める人には、正直とっくきにくいかもしれないが、音楽のもつ内面の深みを感じさせてくれるそのピアニズムは永遠の輝きを放っている。


                  生は死より強し

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                    JUGEMテーマ:日記・一般

                     

                    9月に入って初めての書き込みである。

                    なぜかスランプである。

                    書きたいことはたくさんあるのだが、優先順位的にブログに向かえないといったところである。

                    それでも、読書は続けている。

                    最近、読んだ中ではアメリカのノーベル文学賞受賞者であるパール・バックの短編「つなみ」が心に強く響いた。

                    パール・バックといえば「大地」が有名であるが、自分はいまだ読んでいない。

                    その本が一番好きといった女性の言葉が心の片隅に残っており、著作を検索していたら「つなみ」に出逢った。

                    津波や地震や火山の噴火といった自然の猛威にはなすすべもない人間ではあるが、ただ打ちひしがれて終わる存在でもないということを二人の少年の成長の姿を通して、語り掛けてくれる。

                    「生は死より強し」。

                    何度も登場するこの言葉が強い印象を残す。

                     

                    9月1日は夏休み明けの初日ということで、中高生の自殺率が一気に上がるらしい。

                    著名人からの「死なないで」というメッセージが当日、ネットに書き込まれたことがニュースになっていた。

                    物質的に恵まれているわが国にあっても、死の衝動というものは防ぎきれない。

                    氾濫しているいじめやハラスメント、DVなど。

                    ちょっとしたきっかけがあれば生から逃避したいと考えてしまうことは誰にでもあるだろう。

                    この私にもある。

                    だが、その一線を踏み越えないのは、(一線という言葉はこういうときに使うものだ。くだらない男女の肉体関係の有無で使うものではない)

                    幽かではあっても生きることの中に潜む希望という可能性を信じているからだ。

                    希望はただ存在するのではなく、絶望の向こうにあるのだから。

                    希望を絶たれた向こうに、新たな希望はあるのだということを、この本を読むと改めて感じることができる。

                    「生は死より強し」。


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