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又吉直樹が絶賛していた作家 町田康のエッセイを読んでいる。
「テイスト・オブ・苦虫」(中央公論新社)である。
いやはや面白い。
思わず吹き出してしまうこともしばしばでスラスラ読み進めていくことができる。
図書館で読んだのはシリーズの中の5、6である。
今から9年から10年前に刊行されたものである。
話題として取り上げられている中でちょくちょく登場するのは「ニート」「日本語の乱れ」「個性について」などである。
堅苦しさはなく、町田康の意図的な馬鹿丸出しの文体にはまるのであるが、言わんとしていることはズバッと的を得ていることが多く、「その通り!」と深く頷くこともしばしばであった。
今の若い者は個人をなくすことができない。
というのは無理からぬところで、なぜなら学校では、個性を伸ばす教育、といって、なるべく他と違っていた方がよいのだと教えられてきたからで、それが社会に出て急に、なるべく他と同じようにしなさい、と言われてもそれはやはりできない。
自分は会社員であるにしても、その前に一個人なのであり、その一個人としての都合をなにより優先する、ということになってしまう。
繰り返すが、これでは会社も産業も成り立たない。
だから必然。ニートが増えると述べた後で、では個性を生かすためにはどうしたら良いのかについて触れるのである。
結論として、個性を生かすためには余程の天才でもない限り、初期段階において、何事においても没個性的な基礎訓練が必要である。
つまり、個性を発揮するためにはまずは没個性が必要であると主張する。
それはまさに本質をついているものであり、納得してしまった。
今日からは「どつぼ超然」(毎日新聞社)を読んでいる。新しい作家との出会いは読書の醍醐味のひとつである。