JUGEMテーマ:読書
時々、無性に物語ではなくノンフィクションの世界に強く触れたいと願うときがある。
書店で、手にして衝動的に買った一冊の本。
「スマイル!笑顔と出会った自転車地球一周 157か国 155,502km」(河出書房新社)である。
今までにもサイクリストの本は読んだことがある。
そして、感じるのはどの本にも共通しているのは人との出会いの素晴らしさ。言葉を超えた人間としてのつながりの温かさである。
15万キロ以上というのは、単純に計算しても地球4周分に相当するわけで、ただ凄いとしか思えないのであるが、不思議と読み終えたあと、自分とは全く異質のヒーローという感覚にならないのは、自転車という身近な存在があるからだろうし、小出さんの飾らない人柄によるものであろう。
印象に残った場面はいくつもあるが、ボリビアのウユニ塩湖でのテントの写真で決まりだ。
ここにたどりつくまでの苦難や周囲100kmに渡ってなにもない世界観に圧倒される。
プロガイドでさえ、GPSを保持していても自分がどこにいるのかが分からなくなってしまうらしい。
まさに蜃気楼のなかの塩湖である。
「なんで、こんなところまで来ちまったんだよ。」
天に向かって咆哮を繰り返しながら進むなかで、突然廃墟のような家から「メリークリスマス」の声。
そこは先住民のインディヘナの家。そして、差し出されたスープ。
僕はこの地球一周の旅で「誰もいない世界」を見たかったのではなく、「誰もいない世界などこの地球上にはなく、誰かが元気に暮らしている」ことを確認したかったのだ。
自転車に乗って旅をしてみたいと素直に思わせてくれる本である。
僕は好きだ。