JUGEMテーマ:読書
立て続けに話題の新刊を読破した。
1冊目は中山七里の「さよなら ドビュッシー」シリーズの最新刊「どこかでベートーヴェン」(宝島社)である。
主人公の天才ピアニスト 岬洋介最初の事件のコピーが帯に踊る。
正直言って、ミステリーとしての出来は今一つである。
集中豪雨に取り残された高校という設定での殺人事件はどこか密室劇を予感させるが、肝心のトリックなどに斬新さも著者お得意の最後のツイストにも切れはない。
正直、肩透かしをくらった。
一作目の「さよなら ドビュッシー」が素晴らしい作品だっただけに残念であった。
ただ、音楽科を舞台にした青春小説という観点からとらえると、おもしろく読めた。
岬洋介と父親の確執やピアノにかけた思い、その岬に対する周囲の同級生のコンプレックスが憎悪に転化する心象風景など。
そこがこの作品のわずかな救いとなっている。
2冊目は窪 美澄の「アカガミ」(河出書房新社)である。
アカガミとは2020年を境に急増した若者の性離れに対して、国が設立した結婚・出産支援制度である。
いわゆる近未来小説なのであるが、なんとなくきな臭いいまの社会状況から考えると、あながちフィクションとはいねないおぞけが背中に走る小説である。
性だけでなく、生からも逃避しようとしている若者という表現はあながち誇張ではないだろう。
出生率の低下といわれるが、根源的な問題は女性が結婚・出産を選択しない時代であるということである。
子宮をもちながら使わない女性は狂っていくという表現が出てくる。
主人公のナツミはその恐怖におびえながら、勧められるままにアカガミに応募し、サツキという男性に出逢う。
そして、二人が経験したことのない「番い」という行為から出産までが淡々と描かれていく。
最後に待っているのは驚愕の結末である。
ある程度予測できたとはいえ、その予測通りというところが怖いという気もした。