音楽の感動がここにある。 カラヤンの振るチャイコフスキー交響曲第4番

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    JUGEMテーマ:音楽
    何度か経験し慣れていることとはいえ、職場を異動するということは何かと忙しいものである。
    荷物の整理、片づけが一番時間がかかる。あともう一息というところまでこぎつけた。
    そんな忙しく疲れた心身にはクラシック音楽が沁みてくる。
    いまはやはりチャイコフスキーである。
    交響曲を聴いている。
    演奏はベルリン・フィルハーモニー交響楽団、指揮は「帝王」カラヤンである。
    第4番を繰り返し聴いているが、鉄板である。何も言葉は要らない。
    カラヤンが振った演奏で好きなのはドヴォルザークの8番、9番であったが、チャイコフスキーこそ一番性に合っていたのではないかと思わせる鬼気迫る演奏である。
    チャイコフスキーは最強音、最弱音を求めた作曲家である。明快でかつ振幅の大きな音への志向である。
    世界最高のオーケストラであるベルリン・フィルの最大の武器も、そういった振幅の大きな幅の広い演奏ができる点にあった。
    その両者の感性が合わないわけがない。むしろ強力な磁力のごとく引きあったからこそおきる化学反応。
    それが第4番の演奏である。
    特にいま聴いている1971年の演奏こそ、エモーショナル&スリリングの極致。
    第4楽章のエネルギーの放射の如くの音を聴いて、何も心が動かされない人がいたら、その人は多分何を聴いても心を動かされることはないだろう。そう断言できる演奏である。
    音楽を聴いて感動することの喜びを体感している。

    空より高く

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      JUGEMテーマ:読書
      数年ぶりに重松清に浸っている。
      今日も図書館で「空より高く」(中央公論社)を読み終えた。
      かつての賑わいを見せたニュータウンの造成地に建つ高校も、入居者が予想を大きく下回った影響を受け廃校が決まるところから物語が始まる。
      熱血教師「ジン」先生の「レッツ ビギン」の掛け声のもと、高校生が最後の花をさかせるべく立ち上がるという、いかにも重松清らしい青春小説である。終わりから始まる物語でもある。
      重松清の小説を音楽に例えるなら、大瀧詠一作曲の「少しだけやさしく」がぴったりだと思う。
      ちょっと落ち込み気味で、テンションが上がらないときにはまるで傷口を優しく包んでくれる包帯のような味わいである。
      登場人物はみな善良な人々であり、言ってみればどこにでもいる普通の人たちである。
      そして、心にちょっぴり不安や悩みを抱えながら生きている。その健気さに共感するのである。
      もしかしたら、重松清が描く普通の善良な人々こそが今の時代には稀有な存在なのかもしれない。
      だからこそ、読んでいて心がほっこり温かくなるのだろう。
      かつての名作「流星ワゴン」「きみの友達」「その日の前に」「疾走」ほどの物語の深みや力は感じられないが、それでも安心して読める、外れのない作家である。
      刺激的なテーマを求める読者には物足りないかもしれないし、昔の青春ドラマの脚本を読んでいるような昭和の匂いを感じさせる作風ではあるが・・・
      とにかく読後感は爽快であり、私は大満足で図書館を出た。

      さつき断景 斬新なクロニクル

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        JUGEMテーマ:読書
        今年は1月からなかなかいいペースで読書を積み重ねている。
        今日も図書館で重松清「さつき断景」(祥伝社)を読み終えた。
        断景という言葉は辞書にはない。重松清が考えた言葉である。
        しかし、見事に作品にマッチしている。
        1995年から2000年までの6年間の5月1日という特定の日を切り取って、焦点をあてた3人の主人公をめぐるクロニクルである。
        その設定の仕方が斬新であると同時に、その時代を象徴する事件を背景に物語は語られる。
        3人の主人公の中では、電車一本の差でオウム真理教による都心の地下鉄へのテロ事件であるサリン事件を免れたヤマグチさんに一番共感した。
        「ぼくたちみんな本当は3月20日に殺されていたんじゃないですか?いま、ここにいる僕たちは実は幽霊なんじゃないですか?」
        あの日のテロ事件にしても、東日本大震災にしても生死を分けたものとは大きな違いではなく、紙一重ではなかったのか?
        そんなことを感じる。だからこそ、生き残ったものは、何があっても死んではならない。
        生き残ったヤマグチさんのその思いが、いじめを受けている一人娘「理恵」への次の言葉に表れている。
        「こっちがぎりぎりまでフォローしたとしても、最後の最後に乗り越えなきゃいけないのは、理恵なんだよ。」
        「がんばるしかないんだ。」
        「ひとに勝ったり負けたりとかじゃなくてさ、とにかく生まれたからには生きてもらわなきゃ困るもんな。」
         

        ふたつのしるし

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          JUGEMテーマ:日記・一般
          LINEのプロフィール欄に「おすすめ 羊と鋼の森」と記していたら、大学時代の友人から、先日「おすすめの本読んだ。よかった。清々しい気持ちになった。」と連絡が来た。
          友人は小説などほとんど読まないタイプなので、余計に嬉しかった。

          その作者である宮下奈都の作品にいま注目しており、「ふたつのしるし」(幻冬舎)を読んだ。
          二人のハルの物語である。
          静謐な筆致が心地よい。
          二人の出会い方や結ばれるまでの過程にやや唐突すぎるという印象は拭えないものの、二人にしか分からない「しるし」が出会いを呼び寄せるという語り口には不思議と共感できるものがあった。
          重要なエピソードとして働きアリの中に一定数いるという怠け者アリの意味についての話が出てくるのであるが、まさに先日北海道大学の研究チームがその役割を世界に向けて発表したということもあり、大変興味深かった。
          読後感はとてもよい本である。
          JUGEMテーマ:読書

          希望の地図 3.11から始まる物語

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            個人的に一年で一番苦手な2月を越え、3月である。
            3月に入って実感することは日の暮れが遅くなったこと、そして気温が高くなってきたことである。
            冷たく、寒い冬との決別である。
            そんななか、久しぶりに重松清を読んだ。重松清は自分にとって外さない作家の代表格である。
            このブログを書き始めたころは、それこそ貪るように片っ端から著作を読んでいた。
            最近、読むペースが落ちたのは、重松清が選択する小説のテーマに魅力を感じなくなっていたというのが挙げられる。
            少なくとも、自分にとって刺激的ではなくなっていたのだ。
            だが、久しぶりに読んでみたくなったのは、かねてから気になってはいたものの読めずにいた一冊の本があったからだ。
            「希望の地図 3.11から始まる物語」(幻冬舎)である。
            今年で5年を迎える東日本大震災を前にして、無性に読んでみたくなった。

            まさに一気に読んだ。そして、素直に感動した。
            第2章 希望とはなんだろうの中で「夢と希望の違い」について語られる場面がある。
            テレビコマーシャルでも夢はキーワードとしていろいろな業種が取り上げるが、希望は製薬会社しか用いていない事実が紹介される。
            そして、「夢は無意識のうちにもつものであるけれど、希望は厳しい状況の中で苦しみながらもつものである。」という言葉が静かに胸に迫ってきた。

            被災地を5年前の過去形の土地として見るのではなく、現在進行形の視点でみること。そして、復興に向かう希望の裏にはそれと同等の絶望があるということに想像力を働かせなくてはならないことを感じた。
            前にも記したが3.11の時、自分は突発性難聴を罹患し、自宅療養を余儀なくされた初日であった。
            苦しみの中で大きな揺れを体験し、テレビの映像を信じられない思いで見た。
            だから3.11の苦しみは決して他人ごとでは済ませられないのである。

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