カーヴァーについて語ろう

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    レイモンド・カーヴァーについて語りたい。
    いま、むさぼるように村上春樹が翻訳した短編集を読んでいるのだが、その味わいは別格である。
    きっと若いころに出会っていたら今抱いているような感覚は持てなかったであろう。
    正直言って万人受けする作家ではない。
    登場人物も概して、結婚生活が破綻し、またはしかけていて窮地に立たされた中年男性というのがほとんどである。
    加えて、アルコール中毒であったり、解雇されたりと、いってみれば負け組に属する者たちのほろ苦い物語である。
    きっと、その背景にはカーバー自身の実像がかなりの割合で投影されているのであろう。
    ハッピーエンドは皆無である。
    しかし、何ゆえにこれほどまでに読者を惹きつけてやまないのか?
    それは、好みもあるだろうが贅肉を削ぎ落した簡潔な文体に尽きる。飾りがないので読みやすいし、登場人物の緊張感のあるやり取りの中に放り込まれる。時には息苦しさを感じさせるほどの濃密な文章世界である。
    読みやすさとは裏腹に内容はとても奥深い。シュールであるものさえある。
    また一方で、村上春樹は「ばらけ」という表現を用いているが、見事に構築された物語のなかに一見関係のないような話を盛り込んで、伏線的に読者の心をとらえるのである。そのとらえかたが強烈なのである。そのエピソードだけで小説が成り立ってしまうかのごとくである。特に最後の短編集「象」ではそのカーヴァー特有の技が冴えわたっている。
    そこに虜になってしまい、逃れられないのである。
    「メヌード」「ブラックバード・パイ」。凄いとしか形容できない小説である。
    家庭が崩壊していく寸前を簡潔に描き切っていくそのすごみはすさまじいの一言に尽きる。
    こんな小説は今まで読んだことがなかった。
    アメリカ現代文学を代表する作家であることに間違いはない。
    多くの人に読んでほしい。

    注目の2バンド ソウルフルビート炸裂

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      注目の2バンドを紹介したい。
      ブルーノート初のロックバンドである「ヴィンテージ・トラブル」
      そして、個人的には一押しの「スヴェン・ハモンド」である。
      両バンドに共通しているのはソウルフルなボーカル。骨太のギター。それを支える強力なリズム隊ということになる。
      スヴェン・ハモンドはバンド名通り、それに黒いハモンドオルガンが強烈なグルーブを醸し出す。
      どこか懐かしくもあり新しいサウンド。
      堪らない魅力である。
      ただ疾走するだけでなく、はらわたにずしりと響くそのビートが心地よい。
      スヴェン・ハモンドのこの4作目となるアルバムは本国のスウェーデンでしか発売されていなかったのだが、急遽日本発売となったものだ。いま、タワレコの一押しのアルバムリストに挙げられている。
      このバンドに目をつけたバイヤーはセンスがいい。

      6曲目の「DIAMOND DRINK」「KILL YOUR DARLINGS」
      痺れる・・・

      僕達にはメタリカがいるPART7

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        JUGEMテーマ:音楽
        読書三昧に加えて音楽三昧でもある。
        ひたすら好きなアーティストのCDを聴いている。
        クラシックが中心ではあるが、やはり骨太のロックの音色を求めてしまう。

        個人的には大切な約束が反故にされるなどいらだつことも多い。
        そんな時はメタルに限る。
        そして結局はメタリカに落ち着くのである。
        「デス・マグネティック」。何度聴いてもいい。
        強烈無比なリフのオンパレード。なんといっても楽曲の質が高い。聴き飽きない。
        長尺な曲も多いがだれさせない。
        何拍子も揃っている。
        そこがメタリカのメタリカたる所以である。

        明日は休日出勤だ。

        メタリカを聴いて力を蓄える。

        レイモンド・カーヴァーとの出逢い

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          JUGEMテーマ:読書
          世の中はシルバーウィークの話題で持ちきりであるが、自分にとってはそんな喧騒とは無縁の静かな時間が流れている。
          読書三昧の休日である。
          ここ何日ずっと読んでいるのが村上春樹が日本に紹介したレイモンド・カーヴァーである。
          流石に村上春樹が愛し、全著作を翻訳した作家である。
          村上春樹ファンなら絶対気に入るはずである。
          マスターピースばかりをあつめたアンソロジー「カーヴァーズ ダズン」を読んだのだが、完全にやられた。
          もちろん、すべてが傑作という訳ではない。
          しかし、参った。
          それは、大きな事件や出来事が起きなくても、劇的な展開がなくても、感情の激しい発露がなくても立派に小説は成り立つということをカーヴァーは静かに教えてくれているのである。
          ささやかな心の機微を、徹底的に無駄を排した文体でこれほどまでに見事に描き切る作家がいたであろうか。
          時には結末が中途半端なまま投げ出されるかのような作品もあり、面食らうのであるが、読者の想像力にゆだねているのであろう。

          中でも「足元に流れる深い川」「ぼくが電話をかけている場所」「ささやかだけれど、役に立つこと」が気に入った。
          ピュリッツァー賞候補になった「大聖堂」もいいが、やはりそれ以上に上記の3作は心に響いた。

          特に「ささやかだけれど、役に立つこと」。これは私が今までよんできた古今東西あらゆる小説の短編の中でのNO1である。
          そう断言する。それほど見事な物語である。この作品にはいくつかのヴァージョンがあると聞く。
          そのひとつである「風呂」も読んだ。読み終えたところから何かが始まることを予感させる。
          村上春樹はカーヴァーのシュールリアリスティックでスピーディーで硬質な側面と語ったが、これはこれで見事な作品である。
          今日は傑作集からはなれ、短編集を買い求め読みまくっている。
          本が好きでよかった。そう思わせてくれる作家と出会えたことはこのうえない喜びである。

           

          ヘンデルイヤー

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            JUGEMテーマ:音楽
            今年も早いもので9か月が過ぎた。
            昨年のことを思い出してみると音楽ではひたすら交響曲を聴いていたような気がする。
            ベートーヴェン、ショスタコーヴィチ、ブラームス。
            とりわけブラームスの交響曲1番は一番聴いた。

            今年はというと最近交響曲から遠ざかっている。
            今年の一番の収穫は、ジョージ・フレデリック・ヘンデルの音楽との出会いである。
            ヘンデルはメサイアに代表されるように声楽曲に大きな意味を見出していた作曲家である。その楽曲は無数である。
            しかし、自分は声楽曲ではなく器楽曲にはまっている。
            彼がとりわけ力を注いだ「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」である。
            そして、今では室内楽の趣が強いが、本来は屋外で演奏されるためにつくられた大規模な演奏形態をもつ音楽であったのである。

            祝祭的な色合いが当然強い楽曲であり、中心軸は気分を高揚させる雰囲気である。
            しかし、それだけでなく緩急取り混ぜた色彩豊かな演奏が続くのである。
             
            今聴いているのはパウル・ドンブレヒト指揮による イル・フォンダメント(古楽器使用)の演奏であるが、素晴らしいの一言に尽きる。
            今までいろいろな「王宮の花火の音楽」を聴いたが、抜群の音色であり、出色の出来である。
            オルフェウスもイングリッシュ・バロック・ソロイスツもかすんでしまう。
            「二つの合奏体の協奏曲」も見事である。
            まだ3か月あるが個人的には2015年はヘンデルイヤーだといえる。

            再び、フェルデイナント・リース

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              JUGEMテーマ:音楽
              再び、フェルデイナント・リースについてである。
              最近、頻繁にピアノ協奏曲を聴いているのだが、師匠がベートーヴェンであるというだけで評価があまりにも低いというか忘れ去られている感が強いのはあまりにも不当である。
              素晴らしい旋律があふれ出てくる楽曲の数々である。
              さっき、ナクソスの試聴のコーナーで唯一のヴァイオリン協奏曲を聴いたが、実にいい。
              短調特有の翳りや憂いを秘めた素晴らしい曲である。早速購入手続きをとった。

              ナクソスは良心的であるが、多くの大手のレーベルは新規に録音しようともしない。
              実にもったいない話である。
              音楽室に掲示される肖像画の作曲家たちだけが素晴らしいわけではない。

              逆にいえば、知られていない作曲家の素晴らしい楽曲に巡り合える喜びは、何物にも代えがたい。
              その音に心をゆだねている時こそ、自分だけの特別な時間である。
              それを至福というのであろう。

              中村文則の処女作 「銃」

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                JUGEMテーマ:読書
                中村文則の文学を高く評価している。
                余計な修飾を排した、「核心の言葉」でつづられる物語である。
                読んでいて一切だれることのない独特の緊張感は心地よい快楽でもある。
                彼の処女作である「銃」を読み終えた。
                おもしろかったの一言に尽きる。
                「銃」を拾った青年が「銃」に魅せられ、心を支配されるストーリーである。
                真相を突き止めようと突然目の前に現れる刑事とのやりとりの緊迫感は見事な描写である。

                「次は、人間を撃ちたいと思っているんでしょう?」

                この刑事の言葉が主人公と読者である私たちの心に突き刺さってくるのである。
                そして、衝撃の結末。

                まさに衝撃であった。
                中村文則本人があとがきで語っているように読後感は決して良くはない。
                しかし圧倒的な文学のもつエネルギーを味わうことのできる傑作である。

                 

                幽霊たち

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                  JUGEMテーマ:読書
                  アメリカ80年代の代表的な小説といわれているポール・オースター「幽霊たち」(新潮文庫)を一気に読んだ。
                  訳をした柴田元幸氏があとがきで語っているように一見するとミステリーの体をなしてはいるものの、この小説は「事件の起こらない探偵小説であり、犯人のいない推理小説」である。
                  簡単にいえば、登場人物の書くことの不安と自己の存在理由とは何かを突きつけてくる物語である。
                  だからといって小難しい不条理劇でもなく、心理小説でもない。
                  そこがオースターのストーリーテラーの達人としての筆使いの巧みなところであろう。

                  私が私であるということはどういうことなのか?

                  読み手の想像力を刺激し、思考することを要求する見事な傑作である。

                  リースとサリエリ

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                    昨日はポール・マッカートニーのことを記したが、基本的に自分の生活リズムを形作っている音楽はクラシックである。
                    最近の楽しみのひとつは超有名作曲家の音楽からややスタンスをおいて、超有名ではないにしろ素晴らしい音楽を奏でた作曲家の楽曲を見つけることである。
                    いま、楽しんでいるのはフェルデイナント・リースである。
                    べートーヴェンの一番弟子といった方が分かりやすいかもしれない。
                    当時は相当の人気のあるピアニストでもあったらしい。
                    今や日本では全くの無名である。忘れ去られているというよりはそもそもその存在が知られていない現状である。
                    ピアノ協奏曲にいくつもの佳作が残されている。
                    ベートーヴェンの弟子であるので、当然影響は受けてはいるが、評価の低い理由として挙げられている剽窃や模倣に堕することは決してない。
                    特に気に入っているのが、ピアノ協奏曲「ロンドンへの告別」、ルール・ブリタニアの変奏曲などである。
                    師匠のベートーヴェンよりはロマン派の色合いが強いが、緩急のアクセントのつけ方が絶妙である。
                    ベートーヴェンに比べて、確かに音楽の深みという点では及ばないにしても、もっと評価されてしかるべき作曲家である。

                    もう一人いる。サリエリである。
                    映画【アマデウス】において、モーツァルトを毒殺したのではないかという嫌疑をかけられた悪名高き作曲家である。
                    しかし、真実はそういったことではなく、周囲の人々に敬愛された人徳者であったということである。
                    ひとつのゴシップがこうも一人歩きするものかと驚かされる。
                    そのサリエリのピアノ協奏曲もいい。
                    確かに同時代のハイドンやモーツァルトに共通する典型的な古典派の様式ではあるが、二番煎じといったことでは決してなく、サリエリらしさも十分に発揮している。

                    リースとサリエリ。天才ではなかったかもしれないが、優れた音楽家であったことには一点の曇りはない。
                     

                    40年前の感動を再び ジェット

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                      JUGEMテーマ:音楽
                      先日もそうであったが、時折このブログではポール・マッカートニーを取り上げてきた。
                      以前にも書いたかもしれないが、自分を洋楽というものの世界に引き込んだのはまぎれもなくポール・マッカートニーである。
                      今から40年前。売り出され始めたカセットテープレコーダーを購入し、日曜日のラジオ番組「オールジャパン ポップ20」(文化放送)を聴くのが楽しみだった。 
                      中学時代の話である。
                      そして、打ちのめされたのが「ジェット」である。
                      「今週の第1位。ポール・マッカートニー&ウィングス「ジェット」」。この当時のDJは確かみのもんたであったような記憶が残っている。
                      ジェットは確か日本では3週連続で1位を記録していたと思う。
                      翌日の学校での話題も洋楽のヒットチャートは格好のネタであった。
                      その「ジェット」が収められた作品が「バンド・オン・ザ・ラン」である。
                      世の中には世紀の名盤というものが数多く存在するが、このアルバムもその一枚であることは間違いない。
                      自分にとっては人生に影響を与えた圧倒的な一枚である。

                      リマスターされたCDを先日購入し、聴きまくっている。
                      音質が格段に改善され、あらためて40年前に感じた感動を再び味わっている。

                      感動は決して色褪せることはない。

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