怒涛のラスト70ページ 伊坂幸太郎マジック炸裂

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    「砂漠」。怒涛のラスト70ページだった。
    さすがの伊坂幸太郎マジック。
    すべてのピースや伏線がピタッとはまっていく快感。
    断言しよう。圧倒的な青春小説の傑作である。

    文中にたびたび登場するパンクロックグループ ラモーンズやクラッシュは自分の青春時代とまさにシンクロする。
    当時はパープルにはまりEL&Pなどのプログレにしびれ、レインボーの初来日公演に熱狂という日々を送っていたのでパンクは馴染みはなかったが、その後クラッシュの「ロンドン・コーリング」のジャケットに打ちのめされという時期を送ったことがあるので、そういう意味でもこの小説はとても心にフィットした。

    大好きな日本人アーティストである甲本ヒロトがクラッシュのジョー・ストラマーに影響を受けたのは有名な話である。
    そして、ジョー・ストラマーから学んだことは、「誰かのファッションや生き方を真似するのではなく、誰の真似もしないこと。」と語っている。
    かっこいい言葉だ。

     

    「砂漠」 魅力あふれる一冊!

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      JUGEMテーマ:読書
      出逢うタイミングが悪かった本というのもある。
      伊坂幸太郎の作品はほとんど読んでいるのだが、タイミングを逸してズルズル未読のままという一冊のことだ。
      「砂漠」である。
      単行本が書店に並んだとき、パラパラとめくったページが麻雀の牌の絵が書いてあるページで、なんだ麻雀に明け暮れる大学生を描いた凡庸な青春小説に違いないと早とちりしてしまったのだ。
      ところが、たまたま職場の後輩と伊坂幸太郎の話になり、「僕は砂漠がすきだなあ。」という言葉に戸惑い、「えっ?読んでないんですか?」と聞き返されたことでうろたえてしまったのである。
      そして、書店に行ってきちんとという表現もおかしいが、最初のページから読み始めたところ「なるほどおもしろい。」と感じたのである。文庫本500ページ超の小説も気づけばあと70ページである。さすがは伊坂幸太郎である。

      なんといってもこの小説の最大の魅力は登場人物のひとり 西嶋の存在感である。

      「あのね、目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。歴史なんて糞くらえですよ。目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いている人を救えない人間がね。明日、世界を救えるわけがないんですよ。」

      この西嶋の言葉こそがこの小説の面白さを端的に言い表していると思う。

      ボウリング場での最後の西嶋の投球シーンは永久不滅の名シーンであり、大好きな場面である。
      これだけ楽しく読んだ青春小説は村上龍の「69」以来であり、魅力あふれる一冊である。

      レイフ・ヴォーン・ウィリアムス

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        クラシック音楽においてイギリスの音楽はあまり人気が高いとは言えない。
        そんななか今聴いているのが20世紀のイギリス音楽界を牽引した作曲家レイフ・ヴォーン・ウィリアムスである。
        その中でも自分が好きなのは交響曲などの大作ではなく、イギリス民謡に材をとった小品である。
        吹奏楽でも有名な「イギリス民謡組曲」そして「富める人とナザロの5つのヴァリアント」「グリーンスリーブスによる幻想曲」などである。
        日本で購入できるCDの数も少なく、残念である。
        そのメロディは日本人が好きなある種のもの悲しさや郷愁を誘う。
        イギリス民謡組曲の1曲目である「17COMES SUNDAY」などは思わず旋律を口ずさみたくなる。
        イギリス音楽も捨てたものではない。
        もう少し認知されてもよいのではないか。強く思う。

        クラシック音楽の楽しみ方

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          JUGEMテーマ:音楽
          クラシック音楽の楽しみ方はいろいろあると思うが、ひとつは同じ楽曲を違う指揮者、楽団で聴き比べるというものがあるだろう。
          いま、聴き比べしているのは以前紹介したショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」である。
          楽曲についての解説は省く。
          現在この原稿を書いているバックで流れているのは、今をときめくワシュレー・ペトレンコ指揮によるレニングラードである。
          これだけ遅いレニングラードもないだろう。正直ややもたつきすぎという感が否めない。
          もう少しシャープな解釈が好きである。
          ネルソンス、ヤンソンスのライブ盤2枚も聴いてみた。どちらもいい。
          ヤンソンスのライブ盤は2006年のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を率いたものである。
          マリス・ヤンソンスには1988年のレニングラード・フィルを率いた演奏もあり、軍配を上げるとすればこちらである。
          第一楽章の「人間の主題」のテーマの響きのダイナミックさが格別である。
          ゲルギエフのレニングラードも捨てがたい。

          ショスタコーヴィチといえば5番や10番が最高傑作として評価を受けることが多いが、私は7番、8番、そして11番が好きである。
          映画音楽も多く手がけたショスタコーヴィチらしい映像を伴う音がそこには確かに存在する。

          雨の国立西洋美術館

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            JUGEMテーマ:日記・一般
            先日、およそ1年ぶりに 上野の国立西洋美術館を訪れた。
            あいにくの雨模様であったが、逆に雨が西洋美術館の雰囲気を一層際立てていた。
            特別展にはあまり興味がなかったので常設展だけ見学したのだが、新しい発見にふれることができた。
            なんと、寡作で知られるフェルメールの作品と思しき絵が初出で掲示されていたのである。
            これは感動であった。
            フェルメールの初期のころの作品と見られるものであり、完成された筆致には程遠いがファンにはたまらない出会いであった。

            また、改めてモネの素晴らしさを再確認した。
            特に水面に映った陰などの描写である。
            近くで見ると荒々しく大胆に色をおいているように見えるのだが、少し離れた位置で見るとまさに水面の漣の様子が絶妙な色合いで見事に表現されているのである。

            そして、ブロンズ像が展示されている彫刻の間から雨越しに見る中庭の造形。
            まさしくモネの画材になりそうな空間の配置であり、雨が一層緑を引き立て、何ともいえぬ安らぎの雰囲気を醸し出しているのである。
            雨は基本的に嫌いであるが、国立西洋美術館と雨の組み合わせはベストマッチだと感じた。
            過ぎゆく時間を忘れるひとときであった・・・

            執筆活動15年を振り返って 伊坂幸太郎へのインタビュー

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              JUGEMテーマ:読書
              伊坂幸太郎の「ジャイロ・スコープ」を読了した。
              巻末に掲載されている執筆活動15年を振り返ってのインタビューを興味深く読んだ。
              長編と短編を書くときの気持ちの違いについてである。

              「短編は、長編に比べると確実に、読者のことを考えて、「面白い仕掛け」「驚きのある展開」を用意しようと思うんです。だからなのか、長編よりも短編集の方が人気のあるような気がして。」

              確かに伊坂幸太郎の短編集のおもしろさは群を抜いている。
              その格別さのなかに伊坂幸太郎自身の読者の期待を裏切らない思いがあったことが嬉しい。
              現在、自分の中ではNO、1の作家である。
              作品の質という意味において。エンターテイメントという観点において。
              それは揺るぎない事実である。

              今宵もスコット・ジョプリン

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                JUGEMテーマ:音楽
                今宵もスコット・ジョプリンである。
                一日ずっと雨模様。
                外に出かける気力も湧かず、自室にこもり読書、FMラジオ、クラシック音楽で時間を過ごした。
                レヴァインのジョプリンを堪能したので、ほかの曲も聴きたいと思ったのでネクソスの輸入盤 スコット・ジョプリン ピアノラグ2を購入した。
                なぜ2かというと1よりもメジャーではない選曲に心奪われたのである。
                ピアニストはテキサス出身のあまり知られていないベンジャミン・ローブという人である。
                いやはや参った。
                素晴らしいアルバムなのである。
                押し出しの強くない軽妙なピアノがとてもいい味を出している。
                曲も粒ぞろい。アンソロジーには収められることの少ない楽曲が多いがジョプリンの才能の豊かさを改めて痛感した。
                エンターテイナーだけじゃないのである。

                16曲。すべてが素晴らしい。
                65分間。至福の時が流れる。

                シューマンのヴァイオリン協奏曲

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                  シューマンの協奏曲といえばすぐにピアノ協奏曲が思い出される。
                  しかし、ヴァイオリン協奏曲のほうはあまり知られていない。
                  何故なら、いわくつきの作品であるからだ。
                  シューマンの死後、妻のクララ・シューマンがこの曲を人前で演奏することを断固として拒否したからである。
                  研究者が再発見したのが1937年である。
                  クララが拒否した理由として考えられているのが、作曲中のシューマンの精神状態が異常をきたしていたことや、完成後2日後に自殺を試みている(未遂に終わる)ことなどがあげられる。
                  妻であるクララの気持ちも分かる。
                  夫の精神的な状態が最悪のときにつくられた作品を世に出したくはないと考えたのも無理からぬことであるからだ。

                  しかし、この作品のもつ魅力はそういった負の側面を凌駕するものである。
                  確かにロマン派の中核であったシューマン本来の抒情的なメロディという観点からすると、各楽章とも地味であり、起伏にとぼしいという印象は拭えない。第2楽章の沈鬱さはシューマンの精神状態を表しているものであろう。
                  だが、それでもこの作品は魅力をもっている。

                  特に2楽章から3楽章への移行から、独奏ヴァイオリンの華麗な音の舞にしびれる。
                  もっともっと評価されてよい作品であると思う。
                   

                  ジャイロ・スコープ

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                    伊坂幸太郎のオリジナル文庫 「ジャイロ・スコープ」を読んでいる。
                    書下ろしを含む短編集である。
                    伊坂幸太郎は読みやすいので、もうすでに残り60ページである。
                    やはり安心して楽しめる作家である。確かに、今回の作品はすごい傑作というほどではないし、伊坂幸太郎の中では普通の出来かもしれない。しかし、「ギア」のように新たな領域に挑戦する姿も見られ、楽しめた。
                    その「ギア」に登場するセミンゴという謎の怪物の姿が嫌でも心に迫ってくる。

                    未読の作品もあるので軽々しいことは言えないがいまの段階では、「一人では無理がある。」が好きだ。
                    伊坂幸太郎らしい見事な落ちのつけ方。読後感もさることながら、登場人物である松田青年の雰囲気が大きなアクセントとなっている。「PK」や「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の世界観とも共通するものがある。

                    クリスマスの日に起こるサンタクロースが届けるプレゼントにまつわる「奇跡」の物語である。
                    ただし・・・プレゼントをもらえるのは虐待されたり、親が病気や事故であったりもらえない状況にある子どもたちだけである。


                    サンタクロースなる人物は存在しない。が、仕組みは存在する。
                    いつから運用されているのか社員のほとんどが知らない。
                    サンタクロースが子どもを見離してはいけない!

                    レヴァインのジョプリン

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                      JUGEMテーマ:音楽
                      何十年振りだろうか。スコット・ジョプリンを聴いている。
                      ジョプリンといえば映画「スティング」の中で紹介され、そのサントラ盤が話題をさらった。
                      映画自体もとびきり粋でいかしているので、いまでも大好きな作品のひとつである。
                      ジャンルでいえばラグタイムである。
                      ジャズの前身などといわれるが間違いである。
                      ラグタイムに即興性はない。完全に記譜されたピアノ音楽である。
                      映画の中では確かリフキンのピアノ演奏であったと記憶している。
                      しかし、今日聴いているのはレヴァインである。
                      今やアメリカを代表する大指揮者になったジェームス・レヴァインである。
                      「エンターテイナー」「イージー・ウィナーズ」など馴染みの曲を他のピアニストと比べても明らかにゆっくりのテンポで弾いている。
                      これが実にいい味を出している。
                      軽快さだけではない、深い味わいを繊細に描き出しているのである。
                      ピアノの音の粒が際立って聴こえる。

                      ジョプリン自身「ラグタイムを速く弾くことは決して正しくはない。」と語った言葉を忠実に守ったレヴァインの真摯な演奏であり、深い余韻を残す。

                      鬱陶しい雨の日にはうってつけの心和む音楽である。

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