オペラや声楽曲である。人間の声が最高のものであり、楽器はそれに付随するものであるという考え方が古くからヨーロッパにはあった。その因習というか価値観を打ち破ったといわれるのがベートーヴェンである。
今日はベートーヴェンの話ではない。
苦手な声楽曲の中でも別格のものがある。これだけは聴くという名演である。
ハイドンのオラトリオ「四季」。正式名、独唱、二重合唱と管弦楽のためのオラトリオである。
ベートーヴェンの師匠であり、交響曲を体系化したハイドン 70という老齢期に作曲した後世に燦然と輝き続ける傑作である。
音楽学者のトーヴィが「この作品自体で完結したひとつの音楽のジャンル」と語った通り、ハイドン随一の至芸の到達点とも称えられる作品である。
ハイドンが交響曲で確立した様式美と瑞々しい感性による空想力が織りなす見事な作品である。
「春」の緊張感を伴う荒々しい序奏にまず心奪われる・・・ハイドンが交響曲では決して使わなかったトロンボーンまで動員している。その後の独唱、合唱の流れに身を委ねているのは至福の一言に尽きる。
指揮はフィリップ・ヘレヴェッヘ、シャンゼリゼ管弦楽団の素晴らしい演奏である。