シューベルト ピアノソナタ21番「遺作」 ひたすら美しい旋律

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    JUGEMテーマ:音楽
    誰にも、この上なく好きなメロディーというものがあるだろう。

    いまの自分の心象風景にぴったりくる最も美しい旋律はフランツ・シューベルトピアノソナタ21番「遺作」である。

    シューベルトがベートーヴェンを崇敬し、ベートーヴェンの偉大なるピアノソナタを超えるべく作曲活動に取り組んだのは有名な話であるが、21番はまさに古典派を超えた詩豊かな作品になっている。ベートーヴェンの呪縛から解き放たれた傑作という論者も多い。

    特に第2楽章の静謐さと悲しみをたたえながら奏でられるピアノの音色は絶品である。

    今日は数名のピアニストの21番を聴き比べていたが、構成力ではやはりリヒテルだろうか。

    あえて、第1、第2楽章をこれでもかという遅さで弾いた後、第3、第4楽章では一転して速くなりリヒテルの技巧が炸裂するという構成になっている。

    ベルマンの抑制された内面に照射する演奏も見事である。

    不滅のピアノソナタである。

    作家の仕事とは・・・

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      JUGEMテーマ:読書
      「本を途中まで読みたいと思って手に取る読者はいない。最後まで読み通したいと思って本を手にするのだから、それを裏切らないのがわれわれ作家の仕事だ。」

      アメリカの作家 ミッキィ・スピレインの言葉を引きながらこう語ったのはジェフリー・ディーバーである。

      「ソウル・コレクター」を読み終えて、痛感したのはディーバーは決して読者を裏切らない作家であるということだ。

      リンカーンライムシリーズをこよなく愛する読者の中には、いまだに「コフィン・ダンサー」や「魔術師」を引き合いに出して、最近の作品は質が落ちたとか、ツイストがあざといなどといった評価を下す者がいるが、それは、数多のミステリーを読んでいないからである。

      ジェフリー・ディーバーのようにこれだけコンスタントに質の高い長編を書き続けている作家がほかにいるのか。答えはNOであろう。

      確かに「ソウル・コレクター」にはかつてのような驚天動地のツイストもトリックもない。
      しかし、そういったものを必要としない怖さを十分に味わうことができた。

      個人の情報がどこまで漏洩しているのか、国家が管理しているのか。

      読み終えた時、戦慄にも似た悪寒が背筋に走った。

      それだけで、ディーバーの作品は十分に面白いという証明なのである。

      読書の秋の到来である。

      ミステリーが好きな人で、本を読んで面白いと感じたいなら、早速ディーバーを読むことだ。

      心地よい不協和音 稀有の音楽「春の祭典」

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        JUGEMテーマ:音楽
        その名曲の誕生は、文字通り事件であったという。ストラビンスキーのバレエ音楽「春の祭典」の初演は、今からちょうど百年前。パリの劇場で、前奏曲が流れ出すと、嘲笑が起きた▼変調と変拍子が繰り返される前衛的な音楽に、体の変調を訴える人が続出した。次第に怒号が飛び交い始め、ついには警官が駆けつける大騒ぎになった▼そんな波乱の第一歩を踏み出した「春の祭典」はいま、「地球とは、どんな星なのか」を伝える代表団の一員として宇宙の片隅を旅している▼米国が一九七七年に打ち上げた探査機ボイジャー1号には、金色のレコードが積み込まれた。世界五十五の言語によるあいさつ集には「こんにちは、お元気ですか」という日本語も録音された。音楽集には「春の祭典」のほか、モーツァルトの歌劇「魔笛」の「夜の女王のアリア」や日本の尺八曲などが、収められている▼そんな「地球の使者」ボイジャー1号が、三十六年間の航海の末、ついに太陽系を飛び出したという。現在の地球からの距離は、百八十七億キロ余。電力が尽きる二〇二〇年代まではデータを送信し続け、その後は、地球外生命体に見つけられる日を待ちつつ、無言の旅を続ける▼いつの日か、金色のレコードに針が落とされる日が来るだろうか。「春の祭典」がどこかの星で大騒ぎを引き起こす。その時を楽しみにしている。

        先日の東京新聞の「筆洗」である。

        ストラビンスキーの「春の祭典」を一言で表現するとすれば、不協和音が心地よい稀有の音楽。
        情緒的な旋律に流されない、音楽の原初的な魅力である太鼓のリズムが体を貫いていく孤高の傑作である。

        緊張感はあるが、時には無性に聴きたい音楽である。

        前衛なのではなく、ストラビンスキーにとっては原始主義といわれているように根源的なものなのだろう。

        ブーレーズ指揮の作品が世では名高いが、個人的にはマーラーの交響曲で名をはせたインバルのものが大好きである。太鼓の切れ味が最高である。

        最近はひたすらストラビンスキーである。

        ソウル・コレクター

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          JUGEMテーマ:読書
          読み始めたら止まらない。
          そんな言葉がぴったりの作家といえば、
          ジェフリー ディーバー
           いま、未読の長編ソウル・コレクター」
          を読んでいる。気が付けば上巻もあと40ページである。一気に350ページ読み終えてしまった。 日本でも根強い人気のリンカーン・ライムシリーズである。
          個人的には今回の犯人はシリーズ史上一番の卑劣だという印象をいだいた。

          インターネット社会の中で、個人情報を根こそぎ抽出し、自分が犯した殺人や強姦を全くの無実の人間になすりつけ、人生そのものを破滅へと導く

          最高傑作「ウォッチメーカー」ほどのツイストの切れ味はないが、じわじわと迫ってくる怖さは半端ない。
          ソーシャルネットワークサービス隆盛の現代社会の中で、個人情報が希薄なものになってきている今だからこそのミステリーである。
           
          しかし、緊張感の高め方のうまさはさずがはディーバーである。
          人物造形もしっかりしており、ライムにまつわるエピソードも実に効果的である。

          日本で人気があるといっても、まだまだ認知度は低い。

          読書好きの間でも東野圭吾の話題にはなってもディーバーは読んだことのない人も多い。
          何とも残念な話である。こんなに面白い作家はいない。そう断言しよう。

          クラシック音楽の効能

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            八代目桂文楽の「寝床」は狂歌の引用で始まる。「まだ青い素人(しろと)浄瑠璃玄人(くろ)がって赤い顔して黄(き)な声を出す」。大店(おおだな)の旦那が己の声のひどさも省みず、下手な義太夫を店子たちに語って聴かせようとして一騒動、という噺(はなし)である。音は時に大きなストレスをまき散らす▼むろん癒やし系の音もある帝京大医学部の新見正則(にいみまさのり)准教授(54)らは、音楽の面白い効果を実験で見つけた。その研究が、人々を笑わせ考えさせる業績に贈られる「イグ・ノーベル賞」医学賞を獲得した▼マウスの腹に別のマウスの心臓を移植する。自分の心臓はそのまま動いている。移植した心臓の方は拒絶反応にあって、8日後には止まる。ところが、手術後にベルディのオペラ「椿姫」を聴かせ続けると、平均26・5日も動き続けたという▼モーツァルトを聴かせてみると、これも平均20日ほど動いていた。ただのノイズでは影響がなかったというから、名曲の力だろう。美しい調べが拒絶反応を弱めた。つまり、体内に入った異物を攻撃する免疫の作用を弱めたということらしい▼同僚記者が新見さんに聞いたところ、免疫細胞はいわば侵入者に目を光らせる警官だ。音楽によって警官の数自体は増えるのに、異物をあまり敵視しなくなる。なぜそうなるのかはまだわからないという▼「病は気から」は本当かも、と思わせる結果だ。臨床に役立つと新見さんは期待している。あれこれ想像してみる。ジャズならばどうか。義太夫でも名人のなら効くだろうか。
             
            昨日の「天声人語」である。

            非常に興味深い内容である。

            クラシック音楽の生理的な面での効能の大きさについての記事であるが、私事として実感しているのは、精神的にも大きな影響を及ぼすのではないかということである。
            私がクラシック音楽に浸るようになったきっかけはタワーレコードでの偶然の視聴である。
            ベートーヴェンのピアノ協奏曲であった。
            天啓を受けたかのような心地よい衝撃であった。
            それ以来、クラシックの虜になったのであるが、不思議なことが起こった。

            イライラすることが減り、にこやかに他人に接することが増えたのである。

            当然、笑顔でひとに接していればいらぬ衝突は避けられる。
            また、素敵な女性との出逢いも各段に増えた。

            その時にはクラシックの影響とは思っていなかったのだが、どうやらそうであるのではという思いが確信に近いものになっている。

            さらに不思議なことにクラシックの話題で気が合う女性の多くは穏やかな美しさをたたえている人が多いということである。静謐な美。

            生理的な効能に関しては理由はわからないということであるが、癒しなどという言葉を超えた、奇跡的な力がクラシック音楽には宿っているものと信じたい。

            いま、バックにはシベリウスの「悲しきワルツ」が流れている。

            北欧らしい物悲しくも美しい旋律である。

            ジョンレノンの言葉

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              JUGEMテーマ:日記・一般
              米国の大統領は、その決断次第で、世界中の人々の運命すら変えかねない力を持つ。世界最強の軍の最高司令官でもある人物が、こう考えているとしたらどうだろうか。「大統領が行うことなら、それは不法ではない」▼これはニクソン元大統領が実際に口にした言葉だ。歴史的な告白を引き出したのが、先日、七十四歳で急死した英国のテレビ司会者デービッド・フロスト氏だ▼ウォーターゲート事件で辞職した三年後に、元大統領はフロスト氏のテレビインタビューに応じる。「トークショー司会者なら与(くみ)しやすし」と考えてのことだったが、ニクソン氏は追い詰められ、ついに心情を吐露する。「私は米国民を失望させた。その重荷を一生背負っていく」▼その息詰まるやりとりは、四年前に公開された映画『フロスト×ニクソン』で再現されたが、真実が解き放たれる瞬間に居合わせた番組プロデューサーは「出産に立ち会ったような思い」がしたそうだ▼そんなフロスト氏が自ら会心の出来と考えていたのは、ジョン・レノンにこう迫ったインタビューだという。「ヒトラーがチェコに進軍した時に人々が『平和と愛を』と言ったとしても、何も変わらなかったのでは?」▼ジョンは答えた。「うん、でもヒトラーがこの世に生を受けた瞬間から、みんなが彼に『平和と愛を』と言い続けていたら、どうだったろう」

              おとといの東京新聞「筆洗」である。

              ヒトラーの部分をシリアのアサドと置き換えて考えたいものだ。
              狂った大統領の暴挙を国際社会は手をこまねいて眺めている。

              イラク戦争の苦い経験から泥沼化に拍車をかけるのではという声が上がっているのは一定では理解できるものの、やはり、何も罪とがもない民衆が命を絶たれている現実を見ると、放っておいていいものなのかという思いは去来する。

              化学兵器を用いたのが本当に体制側かどうか国連の調査報告を待つというが、そもそも国連自体が機能不全に陥っている状態ではないか?

              大国の思惑に踊らされ困惑するのはシリアの民衆である。

              国境なき医師団のホームページの記事を読んでみた。
              病院を標的にしているという事実に人道などという言葉がいかにこの地では意味をなさないものであるかを活動を続けている医師が訴えている。

              国際社会は本当にいつまでこのアサドの暴挙を黙って見過ごすのか?

              軽軽な軍事行動は慎まなければならないが、経済制裁を含む包括的な威嚇行動は必要であろう。
              しかし、中国、ロシアの態度がアサドを思いあがらせているというのも事実である。
              うがってみれば、どちらの大国も民主化運動を阻止してきた暗い歴史をもつ。
              こういう国が国連の常任理事国であり、問題解決を遅らせているのだ。

              ならば、化学兵器工場などへの限定的な空爆はするべきであると思う。
              悠長なことを言っているときはとうに過ぎた。
              いつまで民衆の犠牲者をだすのを黙って見ているのか?

              腹立たしい限りである。

              マーラーを聴いている

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                JUGEMテーマ:音楽
                ここ数日、マーラーの交響曲ばかり聴いている。

                実は、私のクラシック音楽の指南役である知人から「マーラーは重たく暗い。」という話を聞いていたので、何となく敬遠していた。

                ところが、聴いてみるとその魅力にひかれてしまった。

                交響曲の父であり大好きなハイドンの対極である。
                つまり、楽章の中での曲想が目まぐるしく変わり、ある意味混沌としているかと思いきや一転して明快になるなど複雑であるからだ。

                特に、マーラーの交響曲の中でも人気の高い五番は楽章を超えて、部構成という大作であり、曲想は実に豊かである。
                圧巻は第5楽章である。 

                クライマックスは見事というしか言葉はない。

                インバルの指揮は師匠ともいうべきバーンスタインを凌駕している。

                といいながら、今はバーンスタインの名指揮といわれる、第一番「巨人」が流れている。演奏はニューヨーク・フィルハーモニックである。

                初演の際に、観客があまりの曲想の変化に戸惑ったという第3楽章 厳粛にそして荘重に、ひきずらずに。

                実にすばらしい。

                栄光の男

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                  JUGEMテーマ:日記・一般
                  いま、バックにサザン・オールスターズの新曲「栄光の男」が繰り返し流れている。

                  歌詞の中に「この世に 何を求めて生きている。」というフレーズがある。
                  そのフレーズが心に張り付いたままである。

                  齢50をすぎて、その問いは胸に突き刺さったままだ。

                  先日書いた記事は削除した。

                  ブログをかりて、さよならを告げた女性に伝言を残すなんて・・・。
                  男は弱いものだなと思う。

                  そんな方法で簡単に愛がもとに戻るなら、心を病む人はいまい。

                  「老いていく体は 愛も知らずに満足かい?」

                  桑田圭祐はそう叫んでいる。

                  そうだ。やっぱり、愛を求めて生きていくのだろうな。

                   

                  ポーカーレッスン ひねりの天才 ディーバーの独壇場

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                    JUGEMテーマ:読書
                    今日から9月のスタートである。

                    この夏は久しぶりに読書を満喫した。そして、夏を締めくくる一冊としてジェフリー・ディーバー最新短編集「ポーカーレッスン」を愉しんでいる。

                    帯の騙される快感! ドンデン返し16連発はフロックではない。

                    以前にも紹介したが、古今東西を問わず、おおげさにいえば今までのあまたの推理作家の中で、そのひねりの質、意外性ともにNO1だと思うのがディーバーである。

                    短編集一作目の「クリスマスプレゼント」の切れ味の鋭いひねりには唖然とさせられた。

                    その続編の登場である。文庫オリジナルともいうのも嬉しい。

                    650ページ以上のボリュームなのであるが、気付くと500ページ以上読み終えている。
                    満足度は一作目を上回る。

                    捨て作がないのがすごいところである。

                    どれも好きであるが、今までのところやられた感があったのは「動機」「恐怖」「冷めてこそ美味」である。 

                    特に、愛娘の流した涙一滴のために、綿密な復讐計画を立てる父親の執念を描いた「冷めてこそ美味」の怖さは、異色である。
                    犯行は決して起きない。起こさない。ただ、凶事があるということを強烈ににおわせるだけである。

                    そして、相手を精神的な破滅にこれでもかと追い込んでいく。
                    それでいて、この父親への嫌悪感が不思議にわいてこない。そこが、ひねりの天才、ディーバーの読者への一番の仕掛けなのかもしれない。

                    ディーバー自身が語っているところの爽快感こそ、ミステリーを読み終えた後で一番大切なものという考えが作品をささえているからであろう。

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