7月、国境の一部が反体制派の手に落ち、大量の難民が周辺国に押し寄せた。この数カ月間に登録された難民数は11万人以上に膨れ上がっている。シリアは化学兵器の保有国だ。もし、化学兵器が使われたら? もし、国外に流出したら? 懸念は深まるばかりだ。
シリアもオリンピックに出場している。国旗とともに入場した選手たちは、笑顔を見せていたが、心穏やかではないだろう。素晴らしい成績を残しても、国や国民に祝福するゆとりはない。五輪組織委員会の会長は「世界の人々を協調、友情、平和のきずなで結ぶオリンピック」とあいさつした。華やかな祭典の陰で、日々、無辜(むこ)の人々が逃げ惑い、命を奪われ続けるもうひとつの現実にも目を向けたい。
シリアで散った真摯なジャーナリスト山本美香さんの最後のコラムである。タイトルは「シリアにも目を」だ。
自分は内戦に入る前の早い段階から、このブログにおいて政府側の無辜の市民に対する虐殺をはじめとする非人道的な行為に怒りをぶつけ、国際社会からのアサド大統領に対する制裁という意見を書き綴ってきた。
そのシリアにおいて、政府軍の民兵が海外のジャーナリストを標的とする乱射を行った。
その犠牲となったのが山本さんである。
言葉にもならない。
世界遺産にも指定されたアレッポの市街地の目抜き通りにロケット弾が突き刺さった写真を見るにつけ、アサドの狂気とそれを放置する大きな要因となった中国とロシアの国連常任理事会での自国の利しか考えない態度に大きな怒りを覚える。
そして、日本人の多くはシリアなど自分とは関係ないという知らぬ顔を決め込むか、知ろうともしない能天気な無知で日々を過ごしている。
だからこそ、山本さんの仕事は意味があったのである。発した言葉は心に突き刺さるのである。
もう私たちは関係ないとは言っておられない。
一人の犠牲者という話ではない。
誰彼かまわずロケット弾や銃口を向けるアサドを許してはいけないのだ。
竹島・尖閣だけではない。
政府はシリアの問題をどう考えているのか?
一番関係ないと思っているのが日本政府ではないか。
そう思えて仕方がない。