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ニュース最近の日本と世界とのかかわりを示すトップニュースはTPPである。
正直、自由貿易にすることのメリットとデメリットについては深く考えてはいなかった。
ただ、世界のスタンダードだと勝手に思い込んでいるアメリカは異をとなえ、自国に有利になるような協定戦略に持ち込むであろうことは予想していた。
そんな折、国境なき医師団から送られてくるニュースレターを読んで、このTPPの問題がMSFの支援国の治療薬の供与に関して深刻な問題を及ぼしかねないということが分かった。
ニュースレターの内容を以下に紹介する。
米国はTPPを通じて知的財産権の保護強化を推進しており、これによりMSFのような団体が活動する途上国で医薬品の供給が脅かされる懸念が生じている。MSFは日本におけるTPPを巡る議論において、この懸念が除外されていることを憂慮している。
MSF日本のエリック・ウアネス事務局長は説明する。
「MSFの治療プログラム、引いては患者の命が、良質で安価なジェネリック医薬品の供給にかかっていることは、これまで私たちが世界各地で医療を提供してきた経験から明らかです。日本政府がTPP交渉において、知的財産権を厳格に保護する条項の、途上国の患者に及ぼす影響を適切に考慮しなければ、HIV/エイズなどの病気の治療におけるこれまでの進歩が台無しになるでしょう」
オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、米国の9ヵ国で現在交渉が進められているTPPは、アジア太平洋地域における経済政策の要とされ、同時に開発途上国も含めた地域間の自由貿易協定のモデルであるとされている。米国が推進する知的財産権の保護強化は、TPP参加国におけるジェネリック医薬品の供給の遅れや、医薬品メーカー間の価格競争の減退につながる恐れがある。
ジェネリック医薬品メーカー間の価格競争は、過去10年間で第一世代のHIV/エイズ治療薬の価格の99%引き下げを可能にし、2002年時点で一人当たり年間1万米ドル(約78万円)だった価格が、現在では一人当たり年間60米ドル(約4680円)になった。この劇的な価格の引き下げによって、今日では600万人以上にHIV/エイズ治療を提供できるようになっている。
また、ジェネリック医薬品の価格競争を抑制すると、日本は自国の対外援助政策にも影響を与えることになる。日本は「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」の主要な資金提供者であり、世界基金の支援を受けたプログラムの多くがジェネリック医薬品に頼っているからだ。TPP交渉参加国のベトナム、マレーシア、ペルーのいずれも、世界基金の支援を受けている。
MSF日本の必須医薬品キャンペーン渉外担当、ブライアン・デイビスは、こう話す。
「市場競争を抑制する政策は、安価な医薬品で数百万人の人びとの命を救おうとする取り組みをも阻むものです。途上国における安価な医薬品へのアクセスの促進は、日本の貿易政策の要であるべきです」
この内容を読んで感じたことは、TPPだけではなく、現在世界で起こってる社会的な事象に対して、単眼的に物事を見ていたら、とんでもない結果を招いてしまうということである。
複眼的かつ多面的に物事を見つめ、考えていくことを一人一人の日本人がしなくては、弱者がさらにひどい状況に追い込まれてしまうのである。
アメリカが打ち出している知的財産権の保護強化は聞こえはいいが、自国のことしか考えない強者の論理である。経済的に豊かではない国の病人に対する想像力など、露ほども働かないのであろう。
野田総理は今回のMSFが訴えている懸念に対して、どう責任のある判断をくだすのだろうか。
真のリーダーとしての資質が問われている。
なぜなら、東日本大震災の際に、いち早く救援のために動いたのが国境なき医師団であるからである。その団体が提示している懸念にまさかそっぽを向くなどという暴挙にでるとは思えないが、そんなことをしたら、日本で再び災害が起きた時に、助けてくれる救援団体はいなくなる。
弱者の視点に立って物事を見極めてほしい。少なくともアメリカの言い分にひれ伏すのだけはやめるべきだ。