しかし、まあよくも続けて不可能密室犯罪を考え出すことができるものだなあと感心というよりも感嘆している。
アルテのツイスト博士シリーズの一般読者の書評の中にこんなのがあった。
本家ディクソン・カーに比べて筆力が劣ると・・・
では、筆力とは何だろうか。結局、個人の主観によるものではないだろうか。
個人的に日本の推理小説家の中で書きぶりが好きなのは、松本清張であるが、よみづらいという知人もいる。
つまりは、好みの問題なのだと思う。
アルテは大長編を書くタイプではない。重厚長大な作品が優れていると考える人には物足らないのかも知れない。自分はそうは思わない。
要は、著者の考える作品の世界観の中に読者をどう引き込むのか。そして、ー気に読ませる力こそが作家のもつ力だと考える。
いつまでもクリスティやカーではないだろう。アルテは筆力のある作家である。私はそう感じている。
贅肉をそぎ落としている文体なだけである。それだけ、切れ味が鋭いということの裏返しでもある。
「虎の首」に見られるある意味、ハードボイルド的な犯人に対するけりのつけ方も鮮やかである。