3度驚く衝撃のラスト!!

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    石持浅海「アイルランドの薔薇」一気呵成に読み終わりました。
    帯の「3度驚く衝撃のラスト!」は偽りではありません。
    勿論、このミステリーの主軸を成しているのが南北アイルランドの統一ということなので、
    そういったことに全く興味のない人には、とっつきにくいという印象を与えてしまうのは正直な
    ところでしょう。
    私自身、アイルランドはケルト音楽にも興味があり、アイリッシュパブの雰囲気も好きで、作中に
    しばしば登場するビール「ギネス」が大好きということもあり、謎解きのみならず、設定や雰囲気も
    十二分に堪能させてもらいました。
    暗殺者名の「ブッシュ・ミルズ」も好きなウィスキーの銘柄です。
    さて、この作品も「クローズド・サークル」という限定された状況下での犯人探しへの究明となるわけですが、やはりラスト30ページのくだりは実におもしろかったです。
    またひとり好きな作家が増えました。 

    7を超える!

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      7を超える。
      このブログを開設して早くも2年半以上経つのですが、4月の書き込みは最高7どまりで、それを超えたいというささやかな思いがありました。
      くだらないことですが、壁をひとつ越えたかなという気がします。
      さて、話題は本題の読書です。
      私は未読ですが、「扉は閉ざされたまま」で一躍脚光を浴びた、石持浅海のミステリーを続けて2冊読了しました。
      「セリヌンティウスの舟」「月の扉」です。
      読んでみてまず感じたことは、「語り」のミステリーであるということです。
      どちらの作品も限定された状況の中に居合わせた人物の語りで、謎の真相に迫っていくというものです。
      その「語り」が実にうまい。ぐいぐいひきつけられていく。
      しかも、「セリヌンティウスの舟」などは、既存のミステリーの概念を壊そうという画期的な試みがなされている。自殺した登場人物の死の真相をつきつめていくなかで、その死んだ人物が自らの死によって試そうとしたものは一体何なのか?
      ねたばれになるのでやめておきますが、ミステリー作品の中枢にある「悪意」「怨念」「醜悪」を超えたものでミステリーが作品として成立することを見事に証明した作品であると思います。
      世間的には「月の扉」のほうの評価が高いようですが・・・
      私個人的には「セリヌンティウスの舟」のほうが好きです。
      今は、石持氏の処女長編である「アイルランドの薔薇」を読んでいます。
       

      少しだけ欠けた月

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        昨年、刊行された重松清「季節風」シリーズの『秋』を読みました。
        春・夏は読んでいたのですが、未読だったもので・・・
        やはり、重松清の作品は心に沁みます。
        小説の設定も、登場人物の描き方もある意味、重松清の作品に一貫して流れているもので、目新しさはないものの、すっーと心に入っていく。何だか読み終わった後で、心が温かくなる。
        そんな短編集です。
        「キンモクセイ」や表題の「少しだけ欠けた月」は秀逸ですね。
        淡々と綴られていく文章の中に、夫婦のもろさや子どもを思う儚い思い、父親の介護の問題など、いまを生きる私たちが誰しも何かしらかかえている問題に、正直に向き合って描かれているところが好きです。
        どの短編も金太郎飴のようにどこを切っても重松清の世界観。
        重松清と自分自身がほとんど同世代であり、出身も中国地方で同じ。そして小説の登場人物たちも自分と同じ悩みや苦しみを抱えているということで、どうしても手にとってしまいます。

        残りの一冊「季節風・冬」ももう少し時間が経ったら読んでみようと思います。
         

        生きる 〜永遠に続く連詩〜

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          谷川俊太郎さんの名詩「生きる」にインスパイアされた一般の方々が、自分たちの「生きる」に込めた思いをつなげていこうということで、まずはインターネット上で始まり、それが一冊の本としてまとめられ、上梓されたのが、昨年の8月。
          そして、第2弾がこの4月11日に刊行されました。
          普通の人々の「生きる」。
          でも読んでいて勇気付けられたり、そうだよなって共感したりと、逢ったことのない普通の人たちの詩ですが、心に響くものがあります。
          その中でも、一番、自分の現在の気持ちにシンクロしたものを紹介します。

          凸凹の繰り返し。
          でも常に凸凹凸凹と
          順々にうまく来るわけではない。
          いまは凹凹・・・ 

          不覚にも涙・・・ガンバラナイけどいいでしょう

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            このブログ上で音楽や歌詞を取り上げることは稀なのですが、不覚にも涙してしまった歌詞があるのでそのことについて書きます。
            それは、吉田拓郎の六年ぶりの新作午前中に・・・」の冒頭の曲「ガンバラナイけどいいでしょう」です。
            拓郎もこの六年間の沈黙の中で、癌以外にもいろいろな噂が巷に流れました。再起不能説まで・・・。
            拓郎本人が語る以外に、その思いを知るすべはありませんが、新作を通して聞いてみて、心の内の素直な声が届いてくるようです。

            本当の心の中が 言えない気がする 
            言える時がきても 言わない気がする
            きっとこの頃何かを皆 気にしてるんだね
            誰かの顔の色も 気にかかるんだね

            そこよりもっともっと それよりもっと
            心が痛くならない 辛くないところ
            例えば求める愛が 遠くて近くても
            進んでいくだけが 自分と思ってた

            でも
            がんばらないけどいいでしょう
            私なりってことでいいでしょう

            心が歩くままでいいでしょう
            そうでない私でもいいでしょう
            がんばれないけどいいでしょう
            私なりってことでいいでしょう

            柳 広司に注目!!

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              いま、注目しているイチオシの作家は柳 広司です。
              理論社から出ているミステリーYAシリーズの一冊である「漱石先生の事件簿・猫の巻」を楽しく読み終えました。
              漱石先生というのは言うまでもなく文豪・夏目漱石。
              「吾輩は猫である」の中で紹介されている話を俎上にのせて、柳流にミステリー仕立てで再構築する展開は素直におもしろいといえるものです。
              ミステリーは本格でなければとかいう人も巷には多くいると思うのですが、どのジャンルの本であれ、楽しめることが一番なのだと思います。
              気軽に読めて、古典にも親しめるこの作品。ライトな感覚で楽しく読んでほしいなあと思います。
               

              謎が謎をよぶ・ヒトリシズカ

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                誉田哲也「ヒトリシズカ」読み終わりました。
                連作集ということですが、ひとつひとつの作品(全部で5作品)の関連性が密接であり、ひとつの長編ととらえてもよいのではないかと思います。
                ひとつの作品を読むごとに謎が深まっていく展開には、ミステリー好きの人ならはまるでしょう。
                一級品の上質の作品ではないでしょうか。
                ただ、惜しむらくは、最後が少し残念な気がしました。
                スリリングな展開を通してほしかったというのが個人的な感想です。
                これ以上書くとネタばれになるのでやめておきますが、テレビの2時間ミステリーにありがちなある意味、予定調和的な幕切れにする必要はなかったのではないかと思います。
                もし読んだ人がいらっしゃれば感想をぜひ聞かせてください。

                言葉のもつ力・村上龍「無趣味のすすめ」

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                  久しぶりに「言葉のもつ力」の大きさを感じる本に出会いました。
                  村上龍の「無趣味のすすめ」です。(幻冬舎)
                  「集中して小説を書いたあと、わたしは充実感と達成感と、それに精神の安息を得ることができる。小説を書いたあとには、リゾートに行ってリフレッシュしたいとか、リラックスしたいとか思わない。リゾートに行きたくなるのは、執筆以外のわずらわしさから逃れたい時だ。リラックスできて、かつ集中して仕事ができる人は、実はオンとオフの区別がない。全力で取り組む懸案の仕事を妥協なく終わらせたいという欲求はあるが、早くオフを楽しみたいなどとは思わない。充実した仕事のためには、心躍るオフの時間が必要だ」というのは、無能なビジネスマンをターゲットとしてコマーシャリズムが垂れ流し続ける嘘である。」異論はあるでしょう。でも、私はこの村上龍の投げかけた言葉に共感したし、充実感や達成感は多大なコストとリスクと常に隣り合わせにあるものであり、それは「仕事」の中にしか見出せないという言葉が心を強く打ちました。
                  その「仕事」から現在離れて自宅療養をしている自分が悔しくもあるのですが・・・

                  4月初投稿・・・

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                    医者から自宅療養3ヶ月を言い渡されました。ショックですが、事実を事実として受け入れるしかありません。病名は精神的ストレスからくる、不眠症による高血圧症です。
                    塞ぎこんでばかりはいられないので、ぼちぼち読書はしています。
                    最近読んだ中でのイチオシは柳 広司「ジョーカーゲーム」と最新作「虎と月」
                    ジョーカーゲームはこのミスや本屋大賞でも話題の一冊でした。自分自身がスパイ小説は苦手という先入観があったため、未読だったのですが、読んでみて「おもしろい」の一言です。騙されるのは誰か?お薦めです。それにしても主人公の結城中佐の存在感。
                    小説の世界からまた一人独特の世界観をもったキャラクターが誕生したなと思いました。
                    続いて「虎と月」。名作「山月記」の独特な解釈、見事な知的ミステリーに仕立てています。
                    軽く親しみある文体で読みやすいのだけれど、奥は深い作品です。
                    漢字や言葉が好きな人には堪えられないでしょう。
                    2作とも全く違ってテーマでありながら、読者をひきつける柳 広司に今後も注目です。

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