家族の絆とは?

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    「償い」の原点とも言われる、矢口敦子「家族の行方」(創元推理文庫)を読了しました。読み終えて感じたことは、家族の絆とはなんだろうかということです。
    他人同士が結婚してつくられる絆。その夫婦から誕生する「子ども」という新たな絆。
    普段の生活の中で意識することなく日々は過ぎていくわけですが、その結婚が過ちではなかったのかと疑問を抱いたときに生まれるささやかな絆の破綻。そして、たとえば離婚という形をとったときに、子どもが受ける心の傷。離婚率が高くなってきている現代社会の中で、「傷」なんておおげさなと思われる方もいるのでしょうが、自分ごとに置き換えた場合、何らかの形で傷とまでは呼べないまでも、影響を及ぼすのではないかと考えてしまいます。その際、形骸化していても家族の形のほうを選択するのが幸せなことなのか。
    そういったことを考えさせられた小説です。失踪をした高校生の消息をつきとめることを軸にしながらも、この小説は推理小説ではなく、家族の在り方をとうている物語だと私は思いました。
    先日、紹介した東野圭吾の「聖女の救済」でも、女性の価値判断としての子どもが産めるかどうかということが殺人事件の背景を形作っているのですが、家族とか、個とかのありようを描かないで今の時代の推理小説は成り立たないのではないかと思います。
    推理小説ではないですが、重松清の最新短編集「みぞれ」にも「石の女」として取り上げられている子どもを埋めない女性と夫の心理描写には読んでいて胸に迫るものがありました。家族、家族、家族・・・
    重たいものだし、時には鬱陶しい異ことも多いけれど、ひきずってでも共に生きていかなければならない大切な存在。自分はいま、素直にそう感じています。
    このブログを読んでくれているあなたにとって家族って何ですか?

    一気読み必至! 東野圭吾 最新長編

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      東野圭吾の最新短編集については先日、お伝えしましたが、最新長編「聖女の救済」を一気に読み終えました。
      キーワードは「虚数解」。理論的にはありえても、現実的には考えられない。
      ガリレオこと湯川との名コンビである草薙刑事が被疑者に恋心を寄せるなど、ありがちといえばそれまでですが、ちょっとしたスパイスも効いており、実はその思いが謎を解明していく土壇場での大きな鍵を握っていたりと、やはり東野圭吾の筆力に感心しました。
      「容疑者Xの献身」が絶大な支持を得ている中での、この新作。
      他の方の評価は分かりませんが、個人的には「容疑者xの献身」では納得のいかない部分があっただけに、この「聖女の救済」の方が好きです。
      読み始めたら一気読みは確実です。「まちがいない」

      大切なのは読後感!

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        昨日に続きブログ休止中に読んだ本の紹介です。
        歌野晶午の「世界の終わり、あるいは始まり」は既存のミステリーを超えてという帯の言葉に引き寄せられて読んだ本の一冊です。
        確かに、読み応えはある。しかし、何が既存のミステリーを超えているのかが分からない。手厳しいようですが、結局自分の息子が連続誘拐殺人事件に関与しているのかどうかを父親があらゆる想定を模索しながら展開し、信じようとするという物語で、読後感がよくない。
        小説に関していえば、自分勝手は言い方をすれば、やはり読み終えた後の感じ方がいいか、悪いかが大切な決め手なのだと思います。
        昨日紹介した本は、全て、読後感がいいのです。
        そういうシンプルな観点からみると、久下部羊の「無痛」も歌野作品と同様に、おもしろいとは思いますが、なかなかお薦めとは言いがたいです。あくまでも個人的な意見ですが・・・


        約半年の沈黙を破って・・・

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          本当にお久しぶりです。半年間の沈黙を破って再登場です。沈黙の理由はいろいろありますが、再登場の理由はただひとつ。
          本ってやっぱりおもしろいなあというシンプルな理由です。
          ブログを休んでいる間にも、たくさんの本を読みました。
          一番最近ではというかこの3連休では、東野圭吾の最新刊「ガリレオの苦悩」を読みました。短編集ですが、おもしろかったです。東野圭吾は読者を裏切らないよというある尊敬する先輩からの助言はあたっていました。
          個人的には今映画でも話題沸騰の「容疑者Xの献身」よりも「秘密」が好きです。
          人物の心象風景の描き方がうまい。読了したあとでぼろぼろ泣いてしまいました。
          重松清の「気をつけ礼」もいい。「僕たちのミシシッピーリバー」は重松流のスタンドバイミーですね。お薦めです。文春文庫の北島行徳の「バケツ」も読後感が爽やかでした。
          人が人をそれぞれに支えながら生きていく。バケツというあだなの一人の知的障害者と共に生きることで自分の存在の意義を見出していく主人公の姿が心に爽やかに残りました。
          横山秀夫の「クライマーズハイ」の新聞社内のひりひりするような人間模様。そして、御巣鷹の事故を必死に伝えようとする地方新聞のデスクの苦悩。一気読み必死の傑作でした。真保裕一の「繋がれた明日」も考えさせられる本です。殺人を犯した青年に果たして更生の道は許されるのか。死刑が今年に入り15回も行われている日本だからこそ、この問題提起は深いと思います。まだまだあります。続きは次回に・・・

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