どうした!?矢口敦子
「償い」を読んだ後の期待感が強かったためか、矢口敦子の「証し」は正直自分は期待はずれという感が否めません。確かに、卵子提供者である「DNA上の母」である朝倉木綿子と「産みの母」である佐伯絹恵の心理戦のような縦軸を中心に、一家四人惨殺事件の真相に迫っていく過程は、緊迫感はあるものの、登場人物の背景や心情の記述が粗いために、読み終わった後でも、何となく釈然としないものが残りました。
もともとのタイトルがVSということで、そのための謎解きのために書かれているような印象さえ受けてしまいました。
丁寧に、あぶりだすように登場人物を描いていくことが大切なのではないか。その頂点が何度もこのブログ上でも書いてきましたが、個人的な見解としては松本清張であると思います。
矢口さんの次の作品に期待したいと思います。
4月初書き込み・・・
お久しぶりです。4月もあとわずかですが、初書き込みとなります。
言い訳はしたくないのですが、仕事柄年度初めは多忙を極めると同時に、とても厳しい状況を背負っているため、自分のこのブログさえ閲覧することがままならない日々が続いていました。
書き込みがゼロの毎日の中でも、アクセスしていただいた方がいることを大変有難く思います。
ただし、超多忙のなかにあっても、読書は続けています。
詳しくは書けませんがその内の心に残った何冊かを紹介します。
まず、一冊目は関口 尚の「君の舞い降りる白」。集英社文庫です。
ジャンルでいうと恋愛青春小説ということになるのでしょうか。読後感の本当に爽やかな本です。主人公の修二だけでなく一人ひとりの登場人物が心のうちにそれぞれの痛みをかかえながらもお互いを思いながら、生きている。それが温かく心に残る作品です。石にまつわるエピソードも丁寧に描かれていて、思わず内容に引きこまれます。そして、修二と雪衣がかつての雪衣の恋人の墓前で合掌した後、空を見上げるラストシーン。「ぼくらはやっと始まる。」一読の価値ありです。
続いて、アルピニスト 野口健の「百万回のコンチクショー」。
印象に残ったのは、野口が亜細亜大学に入る時の、衛藤学長との面接のエピソード。「野口、お前本当に頭悪いなあ。でも大切なのは偏差値じゃない。個性値だ。」その後入学を果たし、亜細亜大学の援助も受けながら、野口健は世界最年少で7大陸最高峰の到達という偉業を達成するのですが、やはり、どの時期にどんな人に出会うかが人生の大きな鍵を握っているなあとこのくだりを読んで感じました。
最後は日垣 隆の「学校がアホらしいキミヘ」。
「僕が強調したいのは、大人たちがバカだという点ではない。君達こそバカ色に染まるな。」ということだ。自分で考えてみろ。それが当面最大の課題だ。
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