2月も今日で終わり・・・書き込みは低調

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    2月も今日で終わりですね。今月はこれでまだ7回目の書き込みということでこの体たらくな有様に自分自身情けなく思います。
    本は何冊も読んでいるのですが、なかなか自分のブログすら立ち寄る気力が湧かないというのは精神的に重症かもしれません。
    最近読んだ2冊の本をまとめて紹介します。
    まずはお気に入りの女流作家 森 絵都「ショートトリップ」。
    もともとは毎日中学生新聞に連載されていたショートショートです。
    疲れた頭と体には心地よい作品です。「注文のいらないレストラン」あたりが個人的には好きです。
    2作目は恩田陸の不可思議ミステリー「Q&A」。作品の構成が取材者と被取材者による質疑応答形式で展開する作品です。都市郊外の大型商業施設で発生した死者69名、負傷者116名の謎の大災害。原因の特定もできず、一斉に各階の人間が何かに憑かれたように走り出し、パニックに陥るといった内容。
    読み終えても事故の解明はなされないため、なんともいえないもやもや感が残ります。群集の集団心理の怖さを表現したいというのは分かるけれど、また、それが恩田ワールドだといってしまえばそうだろうとも思いますが・・・確かに構成はおもしろいけれど、何となく不満が残る作品です。別にカタルシスを求めているわけではないですが・・・読後感はよくありません。
    恩田陸も影響を受けた作家であるヒラリー・ウォーの同じインタビュー形式で展開する作品「この町の誰かが」を読んでいるとはっきりいってその作品の質の差は歴然としています。恩田陸はその作品の影響は「ユージニア」を書くときに受けたと述べていますが、この作品もその影響下にあるのではないでしょうか。
    今は「償い」を読んでいます。なかなか出だしはいいです。展開が楽しみです。土日も仕事三昧ではありますが、頑張って2冊くらいは読了したいと思います。

    不思議な現象

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      このところのアクセス解析を見ていて気がついたことのなかで、今までにはなかった不思議な現象が見られます。
      最近、全然書き込みをしていないにも関わらず、突然250以上にはねあがる曜日があるのです。
      このブログの管理者としては嬉しい限りですが、謎です。
      ところで、昨日読了したのが、前回のブログで紹介した「死刑」を書いた森達也の2年前の著作「東京番外地」です。極私的なドキュメントと森氏が語っているように、東京のなかにあって、不可視的な領域とされている場所を訪れ、思いを綴るという本です。
      その中でも、印象的だったのは東京都世田谷区上北沢にある松沢病院です。
      昔でいえば精神病院。その歴史は古い。と紹介されるこの病院での入院患者さんによる運動会を訪れた際の模様が冒頭に語られます。
      そして、森さんらしい視点で、精神障害者と自分たち、いわゆる健常者という立場のあり方が淡々と述べられています。
      「ごく一部を除き、精神障害者の大半は、穏やかで善良な人たちだ。こんな言い方をすれば、その「ごく一部」が問題なのだと、治安維持や危機管理を訴える人たちは声を荒げる。
      一部は常にある。この社会にだって一部はある。当たり前だ。一部のない全体などありえない。日本社会はその一部を排除しようとしている。セキュリティの名の下に抹消しようとしている。少年犯罪しかり。戦後から現在までの長いスパンで見れば、少年犯罪は明らかに減少している。ところが人は、、そんな安心材料となるデータを好まない。なぜか不安をかきたてるデータばかりを好む。
      (中略)人は安全であることにも耐えられない。どこかに危険があるはずだと思いたくなる。この曖昧な不安に具体的なレッテルを貼ることができればもっと安心する。つまり仮想敵だ。」
      現在の仮想敵は何だろう?そう考えてしまいました。




      今でも心が揺れている・・・「死刑」

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        書き込めない様々な状況にあり、久々に自分のブログに帰ってきました。
        最近、読んだ本の中で、一番考えさせられ、今でも心が揺れている本があります。森達也「死刑」です。先週の朝日新聞の日曜日版の書評でも取り上げられていました。
        なぜ、心が揺さぶられるのか?それは、一人称の自分ごとで考えたときに、もし自分の家族が何の罪とがもなく殺されたら、自分は相手を憎むし、きっとこの手で殺してやろうと思うからです。しかし、日本には明治初期まであった敵討ち、報復容認は現在は認められていない。まらば、国家権力の手にゆだねるしかない。そう考えると死刑容認・存置となるわけです。
        しかし、このルポを読んで、死刑囚とは更生の余地はないと判断された人間ゆえに懲役はない、つまり待ち行く先は「死」であり、それが執行の当日に知らされるということ。他にも、人間としてみなしていないのではないかと思われるような現行の制度がうきぼりにされます。
        この本の中でも、心に強く響いたのは、弟を殺された原田正治氏の心境の変化であり、言葉です。
        「遺族の中には死刑を望んでいる人もいれば、そうでない人もいる。」
        1984年に、実の弟を殺された原田氏は、当初主犯格の長谷川敏彦に対して、激しい憎悪をむき出し、極刑を願う。しかし、獄中の長谷川から何度も手紙をもらい、死刑確定直後に面会を果たした原田氏は、長谷川の姉や子どもが自殺していることを知る。そして、彼を処刑しても誰一人として救われないのだと考える。
        「その頃、僕はこんなことをイメージしていました。明男と僕ら家族が長谷川君たちの手でがけの上から突き落とされるイメージです。僕らは、全身傷だらけで、明男は死んでいます。崖の上から、司法関係者やマスコミが僕らを高見の見物です。彼らは、崖の上の広々としたところから、「痛いだろうよ。かわいそうに」と言いながら、今度は長谷川君やその家族を突き落とそうとしています。僕も最初は長谷川君たちを僕と同じ目にあわせてやろうと思っていました。しかし、ふと気がつくと、僕が本当に望んでいることとは違うことのようなのです。僕も、僕たち家族も、大勢の人たちが暮らす平穏な崖の上の平らな土地にもう一度のぼりたい、そう思っていることに気づいたのです。ところが、崖の上にいる人たちは誰も「引き上げてやるぞ」とは言ってはくれません。その代わりに、「おまえのいる崖の下に、こいつも落としてやるからな。これで気が済むだろう。」
        「被害者、加害者とも崖の下に放り出して、崖の上では何もなかったように平穏な時が流れていくのです。」他にも刑務官の言葉など、心を揺さぶられるページばかりです。
        死刑制度賛成80%以上の国。しかし、仲間との会話の中で死刑などという話題を出したとき、「堅苦しい話はぬきにして」というのが実情なのではないでしょうか。
        そこに、一番の問題があるような気がします。想像力の欠如。思考停止で、懲罰機関化したマスコミの論調にのっかって騒ぐだけ・・・
        この本を読んでも、自分自身何の結論を出せてはいません。どちらかといえば、一人称の自分はやはり死刑制度を残すべきだと今でも思います。でも、心は激しく揺れている。
        就任当時、鳩山法務大臣はこういった。「死刑制度は認められているのだから、もっとシステマチックに処刑をすべし」と。だったら、自分で絞首刑のボタンを押してみろと言いたくなります。最近でも「冤罪とはいえない」などあまりにも軽率な発言が多すぎると考えるのは自分だけでしょうか。罷免すべきだと思います。何が法の番人だ!もっとも顔はブルドッグ的な番人面ではあるけれど・・・

        斬新な読書術 「本は10冊同時に読め!」

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          三笠書房からの新刊である「本は10冊同時に読め!」の著者は、弱冠36歳にしてマイクロソフト社の社長に就任した 成毛 眞氏である。
          タイトルからして斬新であるが、内容はもっと過激である。
          過激であるが、痛快でもある。
          特に「本を読まない人はサルである。」と言い切るその説得力は並大抵ではない。
          本を読む・読まないという行為は人間の品格にかかわることだと述べ、本を読む人間に幼児を車の中に置き去りにしてパチンコに興じたり、電車の中で平気で化粧をするとは考えづらいと言い切っている。
          その根拠としてあげているのが、読書は「想像力」を必要とする主体的な行為だと述べている。
          読書を通して想像力をという論理には賛同できる。本を読むことで自分の内面を照射し、他者への思いを培っていくということは、自分自身も感じていたことだからである。
          全文を読むと、それはちょっと言い過ぎというくだりもでてくるが、あまたあるHOW TO本にはない迫力がある。
          「本は人生を楽しむ知恵の宝庫である」
          3連休の残りの時間、読書に耽りたいと思っています。

          この爽快感・おもしろさは何だろう 「カラフル」

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            「おめでとうございます。抽選に当たりました!」
            この天使の言葉で始まる小説「カラフル」は、小説のもつ魅力満載の一冊です。
            作者は森 絵都。森さんの作品の中では、個人的には「永遠の出口」が一番好きですが、
            魅力的な女性作家の一人です。
            生前の罪のために輪廻転生のサイクルから外された主人公が、そのサイクルに戻るために与えられた再挑戦のチャンス。
            そのチャンスとは自殺を試みた「真」の体に入り魂となって生き返るとともに、自分の犯した罪を省みるというもの。
            設定がユニークであると同時に、家族の描き方がうまい。長文でだらけさせることなく、読みはじめたら一気に最後まで読ませてしまう展開。
            とにかく、おもしろいです。お薦めです。四の五の言わずに読んでほしい作品です。
            ところで、作中にも出てきますが、人生って何色なのでしょうか?個性って?家族って?
            でもいえることは単色ではありえないってことなんだろうなって感じました。
            人に見せている色と、自分の抱えている内面の色も違うでしょうし・・・
            しかし、読了後のこの爽快感は何だろう。陳腐な言い回しだけど、生きていくって時には真っ黒の時もあるのだろうけど、いつかはきっと明るい色に染まるときもくるってことなのかなあって感じました。シンプルで、そして、普通やあたりまえのことこそ強い色をもっている。そんなことを感じました。
            ぼくは、まぶたの裏に、ぼくを待つ人たちのいる世界を思い描いた。
            時には、目のくらむほどカラフルなあの世界。
            あの極彩色の渦に戻ろう。
            あそこでみんなと一緒に色まみれになって生きていこう。
            たとえ、それが何のためだかわからなくても・・・

            2007年 10の最も報じられなかった人道的危機

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              「10の最も報じられなかった人道的危機」とは国境なき医師団が作成している、その深刻さに対してとりわけ報道されることの機会が少ないもののことをさします。以前、NHKの課外授業「ようこそ先輩」で国境なき医師団の日本医師、貫戸朋子さんが出演されたテレビ番組を見て以来、自分の中で、国境なき医師団の働きには注目をしていました。
              今回、久しぶりにインターネットで検索をかけたところ目に飛び込んできたのが冒頭の記事です。
              報じられなかった危機の筆頭とは?
              実は結核なのです。日本では現在はがんなど隠れて、死の病という言われ方はしなくなったものの、世界的にみると、薬剤性の結核が拡大し、新薬の開発は遅れているということが記されていました。
              900万人が年間に発症しているという事実に驚かされると同時に、新たな結核治療の開発には98億円が必要にも関わらず、現在23億円しか投資されていないという現状があるということに愕然としました。
              進まない新薬試験の裏側には、薬が高価すぎること、副作用が強すぎるなどいろいろな障壁があるようですが、こういった深刻な危機的状況をマスメディアが取り上げないというということもあるように感じます。とりわけ日本では・・・
              無関心こそが暴力である。何かで目にしたこの言葉が心に強く響きます。

              慟哭のどんでん返し ラットマン

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                いま、一押しの作家道尾秀介の新刊「ラットマン」を読み終えました。
                最終ページの「みんな、ラットマンを見ていたのだ。」
                この一文がこの物語の全てを象徴しています。
                単純な事件に見えたその背景にあるものが、ひとつずつ丁寧にはがされ、真相へと近づいていく展開は、道尾秀介のストーリーテーリングのうまさであり、そして、最後の最後にきて明かされる事実にはどんでん返しなどという言葉すら陳腐に感じるほどの慟哭の結末が待ち構えています。
                この「ラットマン」で道尾秀介は本当の意味でブレイクするだろうと、ある書店員は語っていますが、「シャドウ」に並ぶ傑作であると同時に、自分自身では読み終えたあとの余韻はこの作品が一番深いものと感じています。
                「これは、ネズミだと思い込んでしまうと、意図的に見方を変えようとしない限り、何度見てもネズミにしか見えない。」この命名効果が意味するものとは何か?
                是非読み味わってほしい一冊です。道尾秀介恐るべし。

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