今年最後の読み納め
最近、書き込みをさぼっていました。
でもしっかりと読書は続けています。今年は例年以上に、このブログを開設したことで、読書欲がよりかきたてられ年間で80冊近くの本を読むことができました。
やっぱり本っていいなあというのが正直な感想です。
感受性を鍛え、磨く一番の砥石は「本、「書物」ではないかと個人的には感じています。
さて、そんな今年の読書納めは今年刊行されたのではないですが、宮部みゆきの「誰か」「名もなき毒」を立て続けに読んでいます。
以前は宮部作品を読んでいて、好きな作家だったのですが、最近は読まなくなっていました。宮部みゆきが松本清張のファンだということを知り、また読んでみようとう気持ちが起こってきました。
「誰か」。印象的なタイトルです。何気ない事件の真相を探っていくうちに、人間それぞれがかかえる、のがれえぬことのできない性(さが)や業を丁寧にあぶりだしていく。それが宮部みゆきの真髄だと思いました。
「名もなき毒」も同様です。ストーリー展開は静かに進んでいくのですが、その小説の魅力にいつしかはまって抜け出せない自分がいる。それは、宮部作品のテーマが読者に自分だったらという問いかけを内含しているからではないでしょうか。ある意味重い作品です。
ゴールデンスランバーの余韻に浸る
ゴールデンスランバーよかったです。
生きるための逃亡劇。決して逃げることが負けではないことを証明するために・・・
エンディングは後味がよく、映画「スティング」のような爽快感すら漂わせています。
生き抜くためにとった方法とは・・・ジェフリーディーバーのある短編を連想しました。
まあとにかく読んでみてください。
この小説を読み終えたいま、無性にビートルズの「アビイ・ロード」が聞きたくなりました。特に、この作中にもしばしば紹介されて出てくる、アナログ盤でいえば、B面の8曲のメドレー。
かつてはクリスマスイブの日に、イギリスでは夜通し、「ゴールデンスランバー」をかけつづけた放送局があったらしいです。
このブログを書き終えたら、早速聴こうっと・・・
待ったました!怒涛の伊坂ワールド炸裂
いやー嬉しいです。伊坂幸太郎の新作「ゴールデンスランバー」を読めて。
1000枚の長編もなんのその、一度引きこまれたら、抜け出せない、読書好きにはたまらない伊坂ワールド。あれよあれよという間に、残り50ページとなってしまいました。
「人間にとっての最大の武器は、習慣と信頼だ。」
どの作品でも印象的なフレーズを心に余韻として残してくれる伊坂幸太郎ですが、またまたやってくれてます。
現在と過去を錯綜させながら、ひとりひとりの登場人物が意外な糸でもつれあい、展開していく物語展開は伊坂の独壇場でしょう。
小説っていいなあとシンプルに思わせる力がそこにはあります。今年前半に刊行された「フィッシュストーリー」は世間での評判はよかったみたいですが、自分にとっては伊坂の作品としては平凡だなあと思っていました。
それだけに次に出される作品には期待を寄せていました。その期待に十分に応えてくれる作品です。
首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公の「青柳」の運命はいかに。
スケールの大きな中にも、緻密な仕掛けがありと伊坂が徹底的に娯楽に徹した作品と紹介されていますが、理屈抜きにおもしろいです。
個人的には、殺人よりも痴漢をする奴のほうが許せねえという青柳の父親の人物像に共感しました。そして心を撃ちぬかれた次の科白。
テレビ局のレポーターに放たれた言葉。
「名乗らない正義の味方のお前たち。本当に雅春が犯人だと信じているのなら、賭けてみろ。金じゃねえぞ。何か自分の人生にとって大事なものを賭けろ。俺たちの人生を勢いだけで潰す気か。いいか、これが、お前たちの仕事だということは認める。仕事とはそういうものだ。ただな、自分の仕事が他人の人生を台無しにするかもしれねえんだったら。覚悟はいるんだよ。
バスの運転手も、ビルの設計士も、料理人もな。みんな最善の注意を払ってやってんだよ。なぜなら他人の人生を背負っているからだ。覚悟をもてよ。」世界を思考停止させているのは懲罰機関になってしまった報道ジャーナリズムではないかという森達也の言葉を思い浮かべてしまいました。
おもしろいけれど、パンチのある小説です。伊坂幸太郎ここにありって感じですね。
今年最大の収穫 作家「道尾秀介」
今年の自分自身の読書を通じての最大の収穫は作家「道尾秀介」の作品に出逢えたことです。「片目の猿」「シャドウ」それから最新作の「ソロモンの犬」。
たった3冊しか読んでいないものの、作品の構成の仕方、複線の妙、救いのあるエンディングなど。小説はおもしろいということを堪能させてくれた作家です。
今日読了した「ソロモンの犬」も謎を解明していく中で、犬や動物たちの貴重な生態についての話も盛り込まれており、またそれがただの薀蓄話で終わるのではなく、物語の重要な核となっていたりするなど、隠し味が効いています。
ミステリーとしての質も一級品ですが、主人公の「静」くんと「智佳」さんとの恋愛になりそうでなれない距離感などの表現の仕方は青春小説としても楽しめます。
しかし、一人の少年の事故死の真相が明らかにされる終盤50ページのストーリーの展開力にはぐいぐい引き込まれました。
「片目の猿」ほどのサプライズではないものの、十分に「そうか!」とうならさせること必至です。また大好きな作家が一人増えました。
圧倒的な筆力に脱帽!
松本清張の「黒い福音」をまだ読んでいます。700ページある長編ですが、このブログ上でも再三述べているように、清張の圧倒的な筆力には脱帽します。
実際に起こった昭和34年のスチュワーデス殺人事件(捜査未解決)を題材にとり、容疑者とされた外国人神父とその組織であるカトリック教会の疑惑隠蔽に対して、清張独自の推理と解決を示した作品です。
これが今からおよそ40年前に書かれた作品であることに驚かされます。
つまり、読んでいて全然、古臭さを感じさないそのストーリー展開。
いまの時代にもそのまま当てはまりそうな事件。
また、前半に犯人を示し、犯行までの経緯を詳しく述べ、後半には地道な警察の捜査や新聞記者の動きを丁寧に描いていくという当時はあまり見られなかった倒叙方式。
700ページをだれさせることなく読ませる力は、清張の底力でしょう。
恐れ入ります。また、自分が共感するのは清張の権威、権力悪に対するまっこうから向き合おうとする毅然とした姿勢です。そこが一番の読みどころではないでしょうか。
いよいよ12月 ランキングでもつけますか・・・
先日、発売になったミシュラン・ガイド。
書店に殺到する人の列が報道されていました。あるニュース番組では、コメンテーターが江戸時代の資料を引用しながら、日本人はというか、江戸庶民の娯楽のひとつにランキングというのがあったそうです。
相撲の番付、長者番付がその代表例で、現在も残っています。
本の世界も同じ、ミステリーだけに限らず。各雑誌が選ぶベスト10など、何かによりどころを求めて安心する国民性があるのでしょうか。
自分も昨年読んだ本の手前勝手なランキングをつけましたが、今年もそんな時期がまたやってきました。
作家別にふり返ると、今年一番読んだのは「重松清」ですね。
でも、ここにきて松本清張の作品の凄さには圧倒されっぱなしです。
重松清といえば、今月「熱球」が新潮社から文庫化されています。書店で冒頭だけ立ち読みしましたが、なかなか面白そうな展開を予感させてくれます。今年は、大好きな伊坂幸太郎の本の刊行が少なくて残念でした。
新作となるゴールデン・スランバーがいいという噂は耳にしているので、今から楽しみです。
今年読んだ中での注目作家は「道尾秀介」ですね。女性では「角田光代」と「大崎梢」。
一番心にフックしたのはルポライターの「森達也」
やっぱり本っていいなあと思います。今日時点で72冊の本を読了しました。現在読んでいるのは、広瀬隆の「クラウゼビッツの暗号文」再読です。それと、清張の「黒い福音」。長編です。
次回は手前勝手なランキングを紹介したいと思います。名づけて濫読ランキング。
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