帯につられて・・・ソリッド・シチュエーション・スリラー
ついつい、本の帯の文句につられて、立ち読みをしていたらはまってしまい、衝動買いをし、一気に読んでしまった一冊の本。
それは、ジャンルでいうとホラーミステリーになるのでしょうか。
「THE QUIZ」という本です。
『優勝賞金1億円、ただし不正解なら消えてもらいます。』不正解者が出るたびに、凄惨は殺人シーンの連続で、正直読むのが苦手だなと感じながらも、結末を知りたいという欲求にはあがなうことができず、読み進めていくと、予想を超えた展開が最後に待ち構えていました。
最近、こういうタイプの映画も増えています。ソリッド・シチュエーション・スリラーとか言われるもので、前置きなしのある不可解な状況設定化でおきる恐怖映画です。はしりは「CUBE」あたりからでしょうか。
「SAW」も人気があり4までつくられています。
でも、自分はやはり味わいの深いミステリーがやはりいいなあと思います。
今は、またまた清張の短編集「黒地の絵」を読んでいます。
巧緻な構成に脱帽! シャドウ
「片目の猿」で「やられた!」という快感を味わわせてくれた道尾秀介。
その代表作である「シャドウ」を一気読みしました。
シャドウは昨年度の「このミステリーはすごい」でも国内部門第3位の評価を受けており、注目はしていたのですが、書店で何となく数ページ読みだけにとどまっていた作品です。
読み終えて感じたことは、構成がとにかくうまいなあということ。伏線の張り方にも無理やこじ付けがなく、やはり「片目の猿」同様に、ラスト数ページの真相が明かされるくだりは「そういうことだったのかと」うならされてしまいました。
いやーおもしろかったです。シャドウ、言い換えれば投影。
一体誰が誰を投影しているのか?ねたばれになるのは興ざめですから、この辺でやめておきます。とにかく読んでみてください。
道尾秀介。これからも注目していきたい作家の一人ですし、可能性は無限大だと思います。
ジャジャジャーン ジャジャジャジャーン
五十嵐 貴久の
「1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター」
一気に読了しました。
五十嵐さんといえば、ホラーからTBSの日曜ドラマでも舘ひろしと新垣結衣が共演して話題となった「パパとムスメの7日間」などコミカルなものまで書ける作家ですが、自分が好きなのは年代がタイトルについている笑えて泣ける青春小説です。
今年読んだなかで一番、読後感が痛快だった部門などという賞があったとすれば、「1985年の奇跡」を挙げます。この作品については以前このブログにも紹介したので、機会があれば読んでみてほしいです。
今回の「1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター」はある意味、タイトルを見た時点で買って読もうと思いました。何故なら、自分の好きなハードロックバンドのDEEP
PURPLEの曲名がタイトルに使われていたからです。
本の裏表紙に作家の簡単な紹介がのっていますが、なんと五十嵐氏と自分は全く同じ年生まれ。「1985年の奇跡」もそうでしたが、読んでいて「うん、分かるよな。」というシーンが多く登場するのです。それは、同じ時代の空気を吸って生きてきた、同時代シンクロ同士だからでしょう。
内容は、44歳の主婦がひょんなきっかけからハードロックバンドを組みはめになり、チャリティーコンサートに出演するまでのいきさつがおもしろく展開していくという肩のこりないストーリーとなっています。
しかし、ただおもしろいだけじゃない。最後のクライマックスシーンでのギター兼ボーカルの主人公 美恵子の叫びは心にストレートに響いてきました。
「ミスった。失敗した。でも失敗ってそんなにいけないか?」
全身が震え出していた。
誰にだって失敗はある。問題はそのあとの対処だ。間違えのない人生なんてありえない。あったとしたらそれはすごくつまらない人生だ。失敗するから人生はおもしろい。そこからやり直そうとするから、やり直すことができるから、私たちは毎日を生きていける。「間違えたどうのこのと、グダグダ言ってんじゃねえよ。」
この言葉、間違えを素直に認めず嘘の上塗りをしている、いまのこの国のお偉いさんたちにそっくり投げたいですね。
いま、ちょっと疲れている人。元気のない人。是非読んでください。とくに70年代のロックを聴いていた人。お薦めです。
現代は不条理の絡み合い
またまた清張の話題です。えーまたかとお思いの方ごめんなさい。
いまをときめく女流推理作家といえば、多くの人が宮部みゆきさんの名前を挙げるのではないかと思います。
自分もかつては読んでいました。最高傑作は「火車」だと思っています。
しかし、最近のは読んでいないので、なんとも言えませんが・・・
その宮部みゆきさんセレクトの清張短編集という文庫が刊行されています。
先日、本屋さんに行って中身を見てみたのですが、宮部さんの一押しが「1年半待て」と書いてある一文に眼が惹きつけられました。
何故なら、私自身も松本清張の数ある短編の中での一番好きなものが、「1年半待て」と「カルネアデスの舟板」だからです。
キーワードは「一事不再理」と「緊急避難」。
最後の最後の一文に表される意表をつく結末。特にカルネアデスの舟板の
「どうせ現代は、不条理の絡み合いである。」という言葉には、犯行にいたるまでの人間の業の深さを見据えた清張の眼力に圧倒されます。
とうとうアクセス数が20です・・・ピンチ!!
仕事や家庭の諸事情で先週は書き込みをすることができませんでした。
とうとうアクセス数も20と底をついてきている状態です。ピンチ!!
読書はしているのですが、なかなか書き込むまでのパワーがなく・・・
しかし、言い訳無用。反省しています。最近読んだ本の中での出色の一冊は、中村航の絵本「星空放送局」。
3篇からなっており、3篇目を読むとひとつひとつの作品が関連性をもっていることが分かるのですが、自分は2編目の「カラスは月へ」が好きです。
月に還りたいけれど還れないうさぎを思い、カラスは自分が月をさがさなくちゃと飛び立つ。そして、海辺で白い球体を見つけ小さな小さなささやき声に耳を傾ける。
そのとき、カラスが思ったことは、「自分が月になるということ」。
このあたりの描写は、内容的にはまるで違うものの、宮沢賢治の「よだかの星」を一瞬彷彿とさせるものがあるなあと個人的には思いました。
イラストもとても素敵です。透明感溢れる話に、久々に爽やかな気分になりました。
又同時にキュンとも。とても読みやすい本なので、本嫌いな人も手にとって読んでほしいと思います。
数十年の時を経て 清張にまたまた嵌る
以前にも書きましたが、いま清張にはまっています。
高校時代に「点と線」を読んで清張のファンになり、ひたすら読みまくっていたころを思い出します。
その「点と線」が北野武主演でテレビ朝日の特別ドラマとして近々二夜にわたって放映されますね。今までも何度か映像化されていますが、今回はどんな仕上がりか楽しみです。
さて、清張に話を戻しますが、自分が読みまくっていた頃は、印象に残っている作品はほとんどが長編でした。「ゼロの焦点」「眼の壁」「蒼い描点」「球形の荒野」「砂の器」などなど。
しかし、今回再読したのは、日本推理作家協会賞を受賞した短編作品集の「顔」です。タイトルの「顔」もいいですが、微妙な犯人の心理を描いた「反射」、動機をひたすら推理する「殺意」など、清張の短編作家としての力量に改めて驚かされます。
しかし、このブログで松本清張の作品を話題にしても、あまり読んでくれないんですよね。残念です。昔の作家というイメージで近寄りがたいのでしょうか?でも、いい作品は時を経てもいいですよ。
いま、自分が一番好きな硬派なドラマ「医龍」のモデル
スポーツ中継及びニュース報道番組以外は、基本的にテレビはほとんど見ないのですが、その中にあって毎週欠かさす見ているドラマがあります。
フジテレビで放映されている、「医龍2」です。
1は見てはいなかったのですが、ドラマのエンディングに流れるテロップを見ていて、監修のある人物の名前を目にとどめていらい、はまっています。
その人物とは、以前NHKのプロジェクトXにも取り上げられた、「神の手をもつ医者」と海外でも高い評価を受けた須磨久善氏です。
自分が惹かれるのは、須磨氏が医者にありがちな権威や名誉にとり付かれていないこと。
目の前の患者さんの命を救うことに全身全霊を傾けている姿勢にあります。
好きな言葉は、たくさんありますが、なかでも好きなのは次の言葉です。
「医者というのは患者さんに、やっぱり諦めなさいとは言えない。辛いけど、もう一日頑張って生きてみよう。来週になったらひょっとしたらものすごい治療法が見つかっているかもしれない。そういうことで、医学はここまできたのだから、がんばってください。」というわけですよ。
そう言うためには、自分は新しい医療にチャレンジしなくてはいけないわけです。いつも自問しています。」「医者というのは患者のためにいるわけです。」
自分の職業、生き方にも突き刺さってくる鋭い言葉です。それをさらりと言い切れるところにプロフェショナルを感じます。
秋の夜長はミステリーで・・・
この週末で2冊の本を読了しました。
1冊は、松本清張の初文庫化作品集第2弾の「断崖」。
この作品には4つの小品が収められていますが、第1弾の「失踪」に劣らず、読み応えのある作品でした。中でも、個人的に気に入ったのは、タイトルにもなっている「断崖」。
わずか、13ページの短編ですが、清張は老齢にさしかかった人間の(男性の)性をうまくとらえている。罪が公にならずとも、人間には良心がありその良心の重さゆえに人間が押し潰されていく心理描写を的確に描いています。うまい!
それと、「濁った陽」もいい。汚職にまつわる自殺の真相を追究する展開は、ある意味、清張の社会派たる真骨頂ともいえるテーマですが、謎の解明に加え、トリックにも妙味が加えられており、楽しませてもらいました。
2冊目は、私の好きな作家の一人である折原一の「タイムカプセル」。
若い世代に向けて書かれたミステリーですが、折原節がところどころで見えます。
「倒錯のロンド」「5つの棺」ほどの衝撃はないにせよ、一気に読ませることはまちがいありません。
秋の夜長はミステリー。そう思いました。
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