ここは、昔戦場だった

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    今、読んでいる本は、世界の子供たちからのフォトメッセージとサブタイトルのついた、ルポ「写ルンです」で撮った平和です。
    「写ルンです」とはあのインスタントカメラのことです。
    写真が満載で、写真そのものが痛烈なメッセージになっている本です。
    しかし、考えさせられることは多い。いま、カンボジアのページを読んでいますが、カンボジアに関しては大学時代に朝日新聞の記者であった本多勝一の「カンボジアの旅」を呼んでポルポト派による自国民大虐殺に衝撃を受けていらい、地雷除去の問題など、自分自身で関心を寄せている国のひとつです。
    いま、目にしているページはかつての学校が戦争により収容所になった一枚の静かな写真です。
    そして、添えられた文にはこう記されている。
    プノンペンの小学校で、子供たちに大切なものはと聞くと、「家族」「学校」と口をそろえて答えます。校長先生はその理由を次のように語っています。
    「カンボジアは長く続いた内戦の影響で孤児が多く、家族をとても大切にします。また、貧しい家庭の子供たちにとって先生は憧れであり、夢です。貧困から救ってくれるのは教育だと信じています。だから、学校は特別なところなのです。実は、今、学校が建っているところは昔戦場でした・・・」
    写真に写っている高校は人々を拷問するための収容所となり、ここで数万人の尊い命が奪われたのです。しかし、そうした事実がなかなか子供たちには伝えられにくい現実があるそうです。今は博物館となったそのたなに無数の骸が陳列されているのに鳥肌がたったとの同時に、あらためて平和を貪っている私たち日本人はいま何をしなくてはいけないのかを考えさせられました。

    命の星

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      今、静かな気持ちで「カシオペアの丘で」を読了しました。
      読んでいて感じたことは、この作品を貫いているキーワードは「命」「メリーゴーランド」「星」だなあと勝手に思いました。
      特に、全編を通して一番心に残ったのは、ミッチョの語る「命」を夜空の星になぞられての語りです。
      命の星が、いくつもの夜空に輝いている。
      もうすぐ終わってしまう命がある。それを見送る命がある。断ち切られた命がある。さまよう命がある。悔やみ続ける命がある。重い荷物を背負った命がある。静かに消えた命もある。その命が消えた後に、暗闇をずっと見つめてきた命がある。そこから目をそらしてしまった命もある。身を寄せ合う命がある。孤独な命もある。満たされた命はない。
      どの命も傷つき、削られて、それでも夜空に星は光り続ける。
      夜空に光っているものは、生きている星だけではない。すでに息絶えてしまった星も、最後の瞬間に放った光が地球に届くまでは、輝きだけ、夜空に残る。
      ひとの命も同じだと思う・・・
      重松清の最高傑作だとは思いません。でも読んでよかったなあという気持ちは残りました。余談ですが、アポロ12号の乗組員やうしかい座のアークトゥールズとおとめ座のスピカの挿話が物語のアクセントになっていて、個人的には興味深かったです。

      ナチスの発明

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        厳密なルポルタージュではありませんが、いま、「カシオペアの丘で」と同時並行で読んでいるのが、フリーライターの武田知弘さんの著作「ナチスの発明」。
        ナチスと聞くだけで嫌悪感という人も少なからずいると思いますが、読み始めて、新しい事実を知ることができました。とても興味深い一冊です。
        たとえば、現在のコンサートの技術であるPAシステムをつくったのがナチスドイツであるということ。
        ローリングストーンズのミックジャガーはステージ上の自らのパフォーマンスづくりにおいて、ナチスの党大会の記録映画「意志の勝利」を15回以上見て、どうやったら客を陶酔させることができるのかを学んだと記されています。
        また、冷戦時代のアメリカとソ連のロケット開発競争の土台はドイツにあり、第2次世界大戦の敗戦を契機に、その当時の開発者が両国に亡命という形で分散した結果ということも分かっています。
        歴史を一面からだけではなく、多面的に見ることの意義を感じました。
        これはかつて紹介した、森達也氏の「世界が思考停止する前に」の考え方と相通ずる気がします。

        どちらが悲しいのだろうか

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          「カシオペアの丘で」まだ下巻の読み途中です。
          昨日は主人公の一人である、シュンこと柴田(倉田)俊介の妻である恵理さんの言葉を紹介しましたが、上巻の中で、一番自分の胸に刺さったのは、この物語の端緒となる「真央ちゃん」の事件の当事者である父親の川原さんの姿です。
          一人娘を妻の不倫相手に殺されるという事実から逃れたくて、死に場所を求めて物語の4人の主人公の思い出の地「カシオペアの丘」へと共に足を運ぶ川原さん。
          その川原さんの姿は、どうしても「流星ワゴン」の主人公である永田一雄とだぶってしまう。まだ、「カシオペアの丘で」を読み終えていないので、何とも結末は分かりませんが、永田さんのように死よりも「どうしようもないほどやりきれない現実」のほうを選んでほしいと願う自分がいる。もし、自分が川原さんと同じ立場だったらと何度本を置き考えても答えは出せない重すぎる問いだけれど・・・
          それでも「生」に賭けてほしい。そう思う・・・
          そして、川原さんの姿を通して、著者の重松清はこう投げかける。
          ゆるしたい相手を決してゆるせずに生きていく人と、ゆるされたい相手に決してゆるしてもらえずに生きていくひとは、どちらが悲しいのだろう。

          深く心にしみこんでくる言葉

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            重松清「カシオペアの丘で」の上巻を読み終えました。
            一言で、いうなら読み応えのある良質な作品。
            何がいいのか。それは、主役のシュン、ミッチョ、ユウ、トシという4人の幼馴染だけでなく、彼らを取り巻く人々の描き方にあると思います。
            印象に残ったページに折り目をつけていくのが、自分の癖なのですが、読み終わって振り返ってみると何ページにも折り目がついており、重松清のつむぎだす言葉が染み入ります。
            たとえば、肺がんが転移したために余命宣告をされたシュンに対して妻である恵理さんの次の言葉。「あなたのガンを治すことなどわたしにはできない。できないことを必死にやろうとして、やっぱりできなくて、それで落ち込むのって、ばからしいと思わない?」「でも、思ったの。ガンっていう病気はひとに苦しい思いをさせて死なせちゃう病気でしょ。肉体的にも、精神的にも。だったら、わたしは苦しくないようにしてあげたい。あなたが、あと何ヶ月か、何年か、年十年か生きるか知らないけれど・・・」「なにをしてあげれば、あなたが一番苦しくなくて、安らかな気持ちで人生を終わりにできるか、それだけ考えてあげる。」自分も病で3ヶ月倒れ、辛い日々を送った経験があるので、この恵理さんの言葉は深く心に染み渡りました。主人公を取り巻いている人々のこうした会話ひとつひとつの言葉も大事に描くところが僕は好きです。
            しばらくはこのブログも「カシオペアの丘で」特集みたいになってしまいそうですが、勘弁してください。いま下巻の50ページあたりを読んでいます。では・・・

            重松清 久々の長編に期待大 「カシオペアの丘で」

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              6月に入り、初書き込みとなります。書き込みをさぼっていた間にも、平均すると毎日130アクセスがあり、私のブログに立ち寄ってくれた人には、本当に感謝、感謝です。
              さて、いま読んでいるのは、重松清の久々の長編「カシオペアの丘で」の上巻です。
              以前にもこのブログで書いたとおり、重松作品の中での自分にとってのNO.1は「流星ワゴン」、一番泣いたのは「その日の前に」ですが、この「カシオペアの丘で」もまだ読み初めとはいえ、何か心に響くであろう期待大の本です。
              物語の設定は、名作「トワイライト」や「カカシの夏休み」にも通じるものがあり、特に重松清を愛読している人には心揺さぶられる一冊になるのではないでしょうか。
              重松清の作品を呼んでいて僕が好きなところは、主人公のみならず、登場人物ひとりひとりに対しての描き方が丁寧であることがあげられます。
              「カシオペアの丘で」のスタートも「真由ちゃん」というひとりの少女の物語からスタートします。書きすぎるとネタばれになるのでやめときますが、真由ちゃんが家族でおとずれたさびれた遊園地こそ、カシオペアの丘。そして、忘れ去られていたはずのこの北国の小都市が真由ちゃんにまつわる衝撃的な事件を契機に、再び過去から浮かび上がり、それにともない主人公4人の人生の過去・現在が錯綜していく・・・
              うまいなあと思います。まだ200ページ足らずしか読んでいませんが、ページを繰る手が止まらなくなります。これから続きを読みます。では・・・

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