スポットライト(BOOK SIDE STORY2019)

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2019.03.15 Friday

待望の文庫化 「騎士団長殺し」

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    JUGEMテーマ:読書

    今年に入ってジャズばかり聴いているということはブログの記事タイトルにしていることからも周知のとおりであるが、久々にクラシックを聴いた。

    メンデルスゾーンの弦楽交響曲である。

    私の心を触発したものは村上春樹の現時点での最新長編である「騎士団長殺し」(新潮文庫)である。

    3月に入り、やっと文庫化された。この日を心待ちにしていた。

    あっという間に第一部も残り僅かである。(文庫本にして660ページ)

    かつて、日本文学の最高到達地点と題して、「ねじまき鳥クロニクル」を紹介したことがある。

    それから、かなりの年月が流れたが、私の中でその評価は変わっていない。

    圧倒的な面白さであった。

    その「ねじまき鳥クロニクル」とメタファーとして相似している部分があることを読み始めてすぐに感じた。

    例えば、井戸である。今回は、高さ3メートル、直径2メートルの石室の中の空間である。

    死に限りなく近接するために、そして恐怖を乗り越え、自己を克服するためにその中に閉じこもることを選択する登場人物の姿は、「ねじまき鳥クロニクル」の主人公の姿と重なるものがある。

    また、主人公の置かれた状況。今回は、突然妻に別れを切り出され、途方に暮れる姿もである。

    加えて歴史的事象とくに第二次世界大戦に関わる事柄との関連性もそうである。ノモンハン事件とアンシュルス。

    村上作品を形成する特有の世界観の象徴的な一片と言っても良いかもしれない。というか「ねじまき鳥クロニクル」との相関性の高さとも言える。

    そういう観点から見れば、作品としてのオリジナリティにはいささか不満はあるが、その物語の面白さは抜群で、ぐいぐい引き込まれている。ページを止めることに苦労する小説である。

    クールでありながら、ドライすぎず、ミステリアスでありながら荒唐無稽ではないリアリティ。

    混ぜ合わされる素材のその調合の量が見事なほどに絶妙で、きっと唯一無比のカクテルなのだろうなあと思う。

    「真実が時としてどれほど人に深い孤独をもたらすものか

    こんな小見出しひとつの付け方に比喩の天才としての凄みを感じる。流石である。

     


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