スポットライト(BOOK SIDE STORY2018)

本や音楽を思いのままに紹介する。
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2018.10.31 Wednesday

蒼天見ゆ

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    JUGEMテーマ:読書

    病に倒れて3週間になろうとしている。

    床に臥している時間が長いのだが、起きているときはひたすら読書に親しんでいる。

    葉室麟の「蒼天見ゆ」(角川文庫)を一気に読了した。

    主人公は臼井六郎。九州は秋月藩の執政 臼井亘理の長男である。

    舞台は幕末。尊王攘夷に時世が揺れる中で起きた開明派である亘理及び母 清の寝こみを襲う惨殺事件。

    犯人は攘夷を高々と掲げる干城隊の面々。非は明白でありながらも、お咎めなしの処置ですませる福岡藩。

    その当時の幼少の六郎に仇討ちを果たせるわけもない。

    その後、主犯の山本克己の仇討ちを心に固く誓い、後に東京に上京し「日本最後の仇討ち」を果たす物語である。

    ただ、目に前に立ちはだかる壁は、明治6年に発せられた「仇討禁止令」。

    江戸時代では美徳であったあものが、明治に入れば大罪。

    そんな中にあっても六郎の決意は揺らぐことはない。

    仇討ちを果たすまでの描写はとてもサスペンスフルである。事実を土台にしている由縁であろう。

    この小説にあって大きな役割を果たしているのが無刀流の創始者 山岡鉄舟である。

    六郎の師匠にして、仇討ちに終始理解を示した恩人である。

    その他にも勝海舟、森鴎外、大隈重信など歴史上の人物が数多く登場し、小説に濃い陰影を与えている。

    仇討ち後の東京集治監での生活の様子も描かれており、味わい深いものがある。

     

    風蕭々として易水寒し

    壮士ひとたび去って

    復た還らず

     

    獄舎の中で六郎が何度も書いた古代中国の詩である。

     


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