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天地静大

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    クラシック音楽と山本周五郎の本。

    最近の休日の決まった過ごし方である。

    ブログでは音楽のことをテーマに書くことが多くなったが、本にも親しんでいる。

    周五郎の長編「天地静大」(新潮文庫)を読み終えた。

    時代は幕末。王政復古の大変革の中、倒幕派と佐幕派の分かれての殺戮が横行している中で、自分の未来の行く末に怖れ、戦き、右往左往しながら生きている若者たちが主人公である。

    杉浦透もその一人である。

    「おれたちに、はたして将来はあるだろうか。おれたちに生きていくことができるだろうか。」

     

    上巻は時代のうねりが押し寄せてくるその前夜という感じで、物語が静かに大きく動いていくさまを表している。ともすれば、周五郎らしからぬドラマ性の薄い展開が淡々と続く。

    しかし、下巻に入るやいなや、一気に様々な人間模様がドラマティックに展開し、奔流のような勢いで進んでいく。

    そこには、時代の変革に伴う政治的な色合いだけでなく、男と女の真実の愛、狂人になってまで女性を思い続ける悲哀、弱い者同士が結びつく人情、一命を嫁して問う武士の誇りなど、周五郎作品のテーマの集大成ともいえる内容がぎっしり詰め込まれている。

    面白くないわけがない。

     

    「人間が苦しんだり悩んだり、殺したり愛し合ったり、権力の争奪に狂奔したりしているとき、山河はいつも変わらず、このように静かに、重々しくしっかりと存在している」

    ーおれは自分の学問を守り抜いていくぞー

    杉浦透のこの言葉は、不確実・不透明な現代社会に生きる私たちにそのままあてはまる言葉であり、強いエールでもある。

     

    最後に、透と結ばれるふくの存在がこの作品に実に清々しい色どりを与え、大きな魅力を放っていることを付け加えておく。


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