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空白の桶狭間
読書 / カーソン・ライダー 
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    自分は未読であるが「信長の棺」でデビューした加藤廣「空白の桶狭間」(新潮社)を読んだ。

    世に名高い雨中の奇襲戦で奇跡の勝利を収めた織田信長の桶狭間の戦を秀吉の策謀という視点から描いている。

    歴史ミステリーとして考えればなるほど興味深い読み物であり、一気読了に耐える内容でもある。

    ただ、司馬遼太郎の「国盗り物語」を読んでいるなかで、この小説にふれるとあまりにも織田信長が凡庸に描かれすぎていることに大きな違和感を感じざるを得ない。

    桶狭間の戦いが秀吉の謀議による「山の民」50人による野犬を駆使しての奇襲というのはエンターテインメントとしては面白いかもしれないが、無理があるだろう。司馬遼太郎が記述した通り、2万の今川義元の軍勢がいくつかに分かれて昼食をとるにあたり、平らな窪地として田楽狭間が選ばれ、約5千といわれる義元付きの兵が集結しているという状況が妥当である。その隙を見計らって、篠付くような嵐の中奇襲を仕掛けたというほうが説得力がある。

    それでも織田軍は今川勢の約5分の1の千人という手勢であったことを考えれば、やはり奇跡の勝利といえるだろう。

    そういう難点はあるが、楽しく読めたということは加藤廣の筆力であろう。

    また、司馬作品との比較でいえば、濃姫や父である信秀と信長の関係性がほぼ真逆ともいえる解釈の上に描かれており興味深かった。

    多角的に歴史上の人物や出来事をとらえる視点を与えてくれる歴史小説はおもしろい。

     

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