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破格のエンターテインメント小説「国盗り物語」
読書 / カーソン・ライダー 
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    うだるような猛暑が連日続いているが、不思議なもので体が自然に慣れてくる。

    逆に効かせすぎともいえるクーラーの冷気に体が順応していかないことがある。

    夏季休暇に入り、読書やクラシック音楽を楽しんでいるのだが、ひと気づくと「仕事」をしている自分がいる。

    同じ職場の若手には「ワーカホリック」になるなと注意しているのであるが、あまり説得力はない。

    とはいっても休みは休み。ほぼ毎日図書館に通っている。

    司馬遼太郎「国盗り物語」を堪能している。

    文庫本になおせば4冊、2100ページの長尺であるがあれよあれよという間に4冊目に突入した。

    一言でいえば、無類の面白さである。流石は司馬遼太郎。人物の描き方が抜群にうまいだけでなく、物語としての組み立てが見事である。主要人物の斎藤道三や織田信長、明智光秀だけでなく妻、側室にいたるまでその人物像が浮かび上がってくるかのような筆致がたまらない魅力である。

    「国盗り物語」は自分が中学1年生の時のNHK大河ドラマであった。その時、原作を買い求めたのであるが当時の自分にはその面白さがつかみきれず、途中で挫折した苦い思い出がある。あれから45年。

    やっとその面白さを堪能できるようになった。

     

    司馬遼太郎は前編において「雑話」を挿入し、物語のそれ以降の展開を読者に指し示している。

    「この物語は、かいこがまゆをつくってやがて蛾になってゆくように庄九郎が斎藤道三になっていく物語であるが、斎藤道三一代では国盗りという大仕事は終わらない。道三の主題と方法は、ふたりの『弟子』に引き継がれる。」

    二人の弟子とは、娘 濃姫の婿となった織田信長。もう一方は妻 小見の方の甥である明智光秀。

    そして、弟子二人は主従の関係になり、やがて本能寺で相搏つことになる。

    それは歴史の必然なのか、皮肉なのか?

    ともあれ中世的な価値観の簒奪者なりえた信長となりえなかった光秀は、全てにわたって対比的な人生を送ってきた。

    その両者の心理的な溝が深まっていく過程の描き方は歴史好きにはたまらない魅力をもって胸に迫るものがある。

    司馬遼太郎、破格のエンタテインメント小説である。

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