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山本周五郎の言葉

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    JUGEMテーマ:音楽

     

    「僕は、今後僕のような時代小説を書ける作者は出てこないように思いますね。時代小説というと、かつらをつけて刀を振り回すだけだ。時代背景の描写と、刀を振り回していっぺんに五人も十人もぶった切るということしかない。小説とは人間を描くことで、状況を書くことじゃない。小説というのは、極限されたスペースへ無限大のものを描写するということで、テーマに関係のないものは木の葉一枚加えることはできないんですね。

     

    私の敬愛してやまない山本周五郎の言葉である。

     

    小説とは人間を描くものというところを読んで、やはり私を読書の世界へと誘ってくれた小説界の巨人 松本清張の言葉を思い出してしまった。清張も推理小説という範疇にとどまるのではなく、人間小説を描くことにこだわった作家であった。

     

    周五郎の小説の魅力は、彼の描きたい「テーマ」というものが端的かつ明確に伝わってくるところにある。

    余計な言葉も無意味かつ冗長な描写もない。

    ストイックなまでにも選び抜かれ、そぎ落とされたかのように見えるその文体の中にも、人間の善なるものを描き切ろうという温かさというものが確かに存在する。

    そこに私は惹かれるのである。

    たとえば、「おたふく」。

    本当に短い作品であるが、そこには見事なまでの無垢なる邪気のない清々しいまでの女性の愛の姿が描かれている。

    この作品をして、「下町物」といわれるものにおいて誰にも負けない作品を書いてみせるという自信をつけたというエピソードが残っている。


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