JUGEMテーマ:読書
「モノ」で読み解く世界史は食べ物でいえばデザート的な意味合いで、基本はずっと山本周五郎を読んでいる。
「深川安楽亭」「日々平安」「与之助の花」とすべて短編集であるが読み進めてきた。
これらの中での私のお気に入りは「与之助の花」である。
まず、収められた作品のもつスピード感である。
周五郎は読みやすい作家であるけれど、この短編集は特にその印象が強い。
冒頭の「恋芙蓉」から始まり、「孤島」、「非常の剣」、タイトルになった「与之助の花」・・・
ジャンルは違うがいずれも周五郎らしさに溢れた名作である。
確かに内容的にこれらの作品と似た短編もあり、特に傑出するということはないが、読み手にとっては心落ち着くのである。
それが「らしさ」であろう。
中国との密貿易の不正を暴く「非常の剣」。
主人公の弦八郎の活躍を鮮やかに描くこの作品の重要なファクターになっているのは弦八郎の叔父「棋兵衛」の何かにつけてこじつける諺である。
「蛇を殺さんとすればその脳髄まで」そして「非情の剣は断固たる可し」
まさに一気呵成の展開力そしてスピード感。
快感である。