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あとのない仮名
読書 / カーソン・ライダー 
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    今年に入って、読書と言えば「山本周五郎」なのである。

    短編集「あとのない仮名」(新潮文庫)を静かに読み終えた。

    タイトル作の「あとのない仮名」は周五郎にもこんな作品があったのかと思わせるシニカルな内容である。

     

    おれが何をしたというんだ、言い逃れはしねえ、女房や子供、女たちには薄情だったかもしれねえけれどもそれにだってわけはあるんだ。誰もわかっちゃくれねえが、おれだって人間だ、犬畜生じゃねえんだ、女たらし、薄情者、こんどは無宿人、そして罪人かなんぞのように、根岸にしょっぴいていかれるのか。もういいや、どうにでもしてくれ、勝手にしやがれだ、と源次は思った。

     

    江戸でも有数の腕のよい植木職人が、家庭を顧みず、仕事も辞めて、日銭を漁る乞食同然の身にやつした真相とは?

    物語の終盤に静かに語られるその独白は、まるでレイモンド・カーヴァーの小説に登場する主人公のものに似ている。

    些細な言葉や感情のずれ。

    源七の内面世界を崩壊させたものにどきりとさせられた自分がいる。

    心に深い余韻を残す作品である。

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