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北斗の人 木こりと異獣
読書 / カーソン・ライダー 
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    伊坂幸太郎を一冊はさんで再び司馬遼太郎である。

    「新選組血風録」「幕末」そして「北斗の人」と立て続けに読んでいる。

    本当に面白い。

    ためしにほかの作者の歴史小説も図書館で冒頭部分だけ数冊手に取り、読んでみたのだが、なんとなく違うのである。

    つまり、司馬遼太郎は書き出しからして読み手の心を惹きつける力をもっているのだ。

    たとえば「北斗の人」。北辰一刀流の開祖、千葉周作の青年期を取り上げた物語であるが、その冒頭はこうである。

     

    土地では、馬、馬とよばれていた。

    獰猛な感じがするほど、筋骨の発達しすぎた男である。

    特に顔が長い。

     

    うまい。わずか書き出し3行で小説の世界に引き込まれてしまう。

    ちなみにこの描写は周作の父、幸右衛門の容姿を表している。

    人物の描写が実にうまい。

    会話文ひとつひとつがまるでドラマのセリフのような躍動感に満ちている。何より、描写表現がからっとしていて明るい。

    だからこそ、読みやすいし、心にすっと入ってくるのである。

    物語の中で引用されるエピソードも多分に脚色されているとは思うが、とても魅力的である。

     

    木こりと異獣の話もその一つである。

    木こりは何とかして異獣をとらえようとするのだが、すべて見透かされている。

    勝ち誇る異獣。そして、相手をすることが馬鹿馬鹿しくなった木こりは斧で木を伐り続けることに没頭、専念する。

    その内、どうしたことか斧の頭がゆるみ、振り上げた弾みで頭の部分だけが柄から離れて飛んで異獣の方に飛んでいき、油断していた異獣の頭蓋を打ち砕いた。

    その異獣の名はサトリである。

     

    千葉周作はこの話から剣理の深奥に触れたのである。

    「剣客の内、下の下なる者はその木こりであろう。いちいち企図を察知されるようでは問題にならぬ。なるほどサトリという異獣は敵の企図を察知する点、これはいい。この異獣がいまのわしに相当している。しかし、剣客はその斧の頭でなければならぬ。」

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