スポットライト(BOOK SIDE STORY2018)

本や音楽を思いのままに紹介する。
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2017.12.02 Saturday

播磨灘物語

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    時代が時代だけに仕方がないでは片づけられない物語がある。

    黒田官兵衛の物語である。

    御着城主に裏切られ、入牢1年半の凄惨を極める生活の中で唯一藤の花に思いを寄せ、自分の将来を占うその姿は心を打つものがある。

     

    全身に瘡ができている。

    入牢してこのかた、蚊としらみに悩まされ続けた。やがて、掻くと皮膚や毛がぼろぼろと落ちるようになった。・・・冬になるころには頭髪の三分の一ほどが抜け落ちてしまい、顔を生気を失い、腰の肉が落ち、ひざは骨と皮になって、地獄道の亡者がそこにすわっているようになった。

    (しらみでさえ生きているのだ)と官兵衛は思うようになった。

    しらみ以上のことを考えず、しらみのごとく執念深く生きることだけを考え続ければよいのだ、と思った。

    生きることのみを思え、と官兵衛は自分に言い聞かせた。

     

    また、栄華欲のために肉親や兄弟を裏切ることや計略を用いて謀ることが当たり前のようになっていた戦国期にあって、美しく生きることに人間の本義を求め、強い倫理観を持ち続けた才覚こそ黒田官兵衛が異彩を放っている大きな理由であり人間的な魅力でもあるだろう。

     

    合戦における敵に対しての考え方に哲学が凝集されている。

    「敵を憎んでよい。しかし7つの憎しみのなかに3つの可愛さを入れるようにつとめるのだ。その分だけ、こちらの丈が伸びる。」

    信長のように憎きものを根こそぎ虐殺するのではなく、敵に良いふるまいをさせ、よい最期を飾らせよという考えはこの時代において異質であるが光彩を放っている。

    「播磨灘物語」。自分自身、戦国の物語として初めて読んでいる大長編であるが、深い余韻を噛みしめながら読み進めている。


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