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ふくわらい
読書 / カーソン・ライダー 
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    Amazonなどの書評を読むと、西加奈子の最高傑作のひとつに挙げられている「ふくわらい」(朝日新聞出版)を一気に読んだ。

    一気に読めるということは「物語」としての力が強いということである。

    暗闇の中での福笑いをこよなく愛した主人公の鳴木戸 定。

    恋愛も友情も知らずに生きてきた女性が、ありのままの自分の姿で生きていくことの意味を見つけ、新しい自分探しをしていく物語である。

    定の心情の変化に大きな影響を及ぼすのはプロレスラー「守口廃尊」の存在である。

     

    西加奈子とプロレスとの関りは「こうふく あかの」「こうふく みどりの」でも記されており、重要なモチーフになっているのだが、今回も同様である。

    リアルタイムで新日本プロレス全盛期の「猪木イズム」をテレビ中継を通して目の当たりにしてきた自分にとっては、たまらない隠し味になっている。

     

    終盤の守口の部屋での定との会話シーンが強く心に共鳴した。

    「プロレスのせいで鬱になったのに、鬱を忘れるのはプロレスやってる時だけだった。人と会うのが怖くて、だって人に会うと、キャラ作らなくちゃなんねぇって思うんだもの。怖い、怖かった。でもリングに立つと、飛ぶんだ。そういうことが、全部。相手の目をまっすぐ見れる。なあ、プロレスは言葉を使わない。言葉を、きちんと文章にしなくていいんだ。体がそれをやってくれるから。何万語駆使して話すより、一回関節技を決められたほうが伝わることがあるんだ。」「体があればいい。」

    「言葉が怖いとか、いらねぇとか言ってるけど、好きなんだ。言葉を組み合わせて、文章ができる瞬間に、立ち合いたいんだ。」

     

    プロレスも言葉も好き。どっちもあってこそ、自分自身だと言い切る廃尊の言葉は心に沁みとおった。

    自分の好きなことに全力で取り組む。それが生きるということ。

    現実の世界では、難しいテーマではあるけれど、原点に立ち返ればそこに行き着く。

    自分の体があって顔があって。傷つくたびに変化していくけれど、自分自身が変わるわけではなく、その変化こそが生きてきた証。

    それを大事にしようって励まされるような気持になった。

     

    最後のシーンは書評でも賛否が分かれているが、定が今まで抱えていた硬い殻を破って新たな一歩を進む象徴であるような気がして自分は好きである。

     

     

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