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彼岸過迄 漱石の信念をかけた作品
読書 / カーソン・ライダー 
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    JUGEMテーマ:読書

     

    夏目漱石の後期三部作の幕開けといわれるのが「彼岸過迄」である。

    名作「門」を記してから1年半の年月が流れた。

    その間に漱石は瀕死の大病を患い、娘を失い、漱石を朝日新聞社に引っ張った朋友が去ったことを受けての辞表提出など。

    彼の人生を大きく揺るがす事件が続いたのである。

    それゆえか、序文にしたためられた再出発にあたっての漱石の思いは、ストレートに心に響くものがある。

    「ただ、自分は自分であるという信念をもっている。そうして、自分が自分である以上は、自然派でなかろうが、象徴派でなかろうが、乃至ネオのつく浪漫派でなかろうが全く構わないつもりである。」

    「自分はすべて文壇に濫用される空疎な流行語を借りて自分の作物の商標としたくない。ただ自分らしいものが書きたいだけである。」

     

    そう言う信念のもと記した作品が面白くないわけがない。

     

    この作品の特徴は敬太郎という人物の見聞きした一筋縄で結えない登場人物の心の内面を照らした写生文である。

    大きな軸はお互いに惹かれ合あいながら、決してひとつにならない須永市蔵と千代子の心情のずれである。

    そして、市蔵の心に影を差す事実が語られるのは、最終盤の叔父である「松本の話」のなかである。

    「市蔵の太陽は、彼の生まれた日から既に曇っていた。」

     

    「門」でもそうだが、なぜそうなのか? 何が一体あったのか? そこに至る理由が語られるまでの読者を惹きつける筆の磁力に恐れ入るばかりだ。ゆえに、漱石は時代を越えて色褪せない作家なのであろう。

    しかも、その理由を語る文章が「市蔵の太陽は、彼の生まれた日から既に曇っていた。」である。

    巧すぎる。

    「彼岸過迄」。不思議な余韻が残る作品である。私は好きだ。

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