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夏目漱石の哲学にふれる
作家 / カーソン・ライダー 
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    JUGEMテーマ:読書

     

    これが夏目漱石という作家のもつ磁力なのか。

    いま、立て続けに漱石の小説ばかりを読んでいる。

    正直、今まで敬遠してきた作家の一人である。

    小学校時代に「吾輩は猫である」を読み、面白いとは感じながらも芥川龍之介や太宰治のように小説世界に引き込まれることはなかった。堅苦しい文体。難解な言葉。そういう印象が強く残った。

    しかし、それは大きな間違いであることに50年経って気づかされた。

    夏目漱石の本領はシリアスな小説の中にこそ発揮される。それは明治時代を生きた知識人の恋愛観を含む倫理観や人生観。

    学問やお金とは何かを深く考えていくなかで立ち上ってくる空気に彩られた世界である。

    今日は、そんな漱石の思想や哲学を最も鮮やかに表したといわれる中編「二百十日」と「野分」を一気に読んだ。

    特に、「野分」の主人公である白井道也の生き方に感じ入るものがあった。

    理想主義が高じて、中学教師という職業を全うすることができず、世の中の人を救うためには、人に理解されなくとも、高尚な理想に基づいてただ独り生きるのみという彼の言葉は、周囲の人々や妻、血を分けた肉親にさえ理解されず、頑固者と責めを負う。

    しかし、決して揺らぐことはない。

     

    物語の終盤において演説会にて彼の語るシーンは小説といえどもすさまじい迫力に満ちている。

    「理想は魂である。魂は形がないから分からない。ただ、人の魂の行為の発現するところを見て、髣髴するに過ぎん。惜しいかな、現代の青年はこれを髣髴することができん。事実上、諸君は理想をもっておらん。家にあっては父母を軽蔑し、学校にあっては教師を軽蔑し、社会に出でては紳士を軽蔑している。これなどを軽蔑しうるのは見識である。ただし、これらを軽蔑しうる為には、自己により大なる理想がなくてはならん。自己に何らの理想なくして他を軽蔑するのは堕落である。」「理想は諸君の内部から湧き出なくてはならぬ。諸君の学問見識が諸君の血となり肉となり、遂に諸君の魂となった時に、諸君の理想は出来上がるのである、付け焼刃は何にもならない。」「理想のあるものは歩くべき道を知っている・・・」

     

    この言葉にもう一人の重要な登場人物である高柳周作は深く共鳴するのであるが、読者である私自身も教職に身を捧げている者として心に強く刻まれた。裏返せば、夏目漱石の文学者としての生き方を示した言葉であろう。

     

    この小説が武者小路実篤や志賀直哉に深い感銘を与えたのは有名な話である。

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