JUGEMテーマ:読書
久しぶりに本を読んで胸が詰まった・・・静かに涙が頬を伝った。
「10万人を超す命を救った沖縄県知事・島田叡」(ぽぷら新書)である。
敗戦迫る日本唯一の戦場となった沖縄の地に敵前逃亡した前知事のあとに命を託されたのが島田叡であった。
そして、彼が沖縄の人々に語ったことは「生きろ。」であった。
お国のために名誉の戦死とか自決とか言われている時代に彼が語ったこの言葉は、ともすれば非国民ともとられかねない重く勇気のある言葉であった。「命こそが宝」 胸に強く響いてくる。
そして、軍との交渉も決してひるむことなく堂々と渡り合う芯の強さ。それでいて、決して贅ることはしないストイックなまでの姿勢。10万人以上、一説には20万人の沖縄の人々の命を救ったといわれる疎開政策。食料を確保するために制空権をとられている危険ななか、台湾までいって米を調達する大胆ともいえる行動力。すべてが命を救うということに収斂されていくのである。
このような公務員、官僚が日本に存在したということを決して忘れてはいけない。
まさに至誠の人である。
そしてこの本のなかに出てくる太田実司令官の言葉も今となっては伝説である。
「県民のうち、青年、壮年の男子はすべて軍の招集に捧げ、残された老人、子ども、女性は相次ぐ砲撃、爆撃で家や財産のすべてを焼かれ、小さな防空壕に避難した。そのうえ、風雨にさらされ、乏しい生活に甘んじるしかなかった。それでも若い女性は率先して軍に身を捧げて、看護や炊事はもとより、砲弾の運搬や捨て身の切り込み隊参加を申し出る者もいた。」
「沖縄は草木ない焦土と化した。食糧は6月いっぱいしかもたないという。沖縄県民はこのように戦ったのだ。県民に対して、後世、特別の配慮をお願いしたい。」
この太田司令官のありえない軍の司令官としての電文は実は島田叡の思いそのものであったのだ。
二人がひそかに語り合ったことは知られている。
私は、この電文を読んで涙した。
この電文こそ今の安倍政権の閣僚や総理に襟を正して読んでほしい。強く思う。