JUGEMテーマ:読書
今日から新しい月9月のスタートである。
8月は読んだ本の冊数が久々に2桁になり、計19冊となった。
充実した読書月間となった。
その中でも最後を飾った「ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験」(光文社新書)は頗る面白かった。
1ページ1ページが知らなかったことの連続で、知的好奇心をそそられた。
2008年2月、日本で10年ぶりとなる宇宙飛行士の募集がJAXAによって発表された。
応募総数過去最多の963名。そのうちの10名が最終選考に臨んだ。
その選抜試験の様子を克明に描いたドキュメントである。
この時点での我が国での宇宙飛行士の数、わずか8名。つまり1600万人に1人という確率なのである。
この試験の選考委員長を務めた長谷川義幸氏の言葉が端的に宇宙飛行士の職業とは何かを物語っている。
「なぜ、宇宙飛行士になりたいのですか?」と問うた時、ある研究職の応募者はこう答えた。
研究者としてのバックグランドを生かして、画期的な科学実験を提案したい。
それに対して長谷川氏はこう問い返す。
「宇宙飛行士は学者ではなく、技術者です。宇宙飛行士が、自ら提案した実験を宇宙でできると思っているようですが、宇宙飛行士なんて、つまるところ実験装置のボタンを押すことしかできないのです。ですから、あなたが生き甲斐としてきた論文などは、絶対に書けなくなると思った方がいい。宇宙飛行士になれば、研究は一切できなくなるし、あなたの功績を証明するような論文も一切書けません。今まで培ってきたキャリアや価値観を捨てることになるのですが、あなたは未練なくやっていけますか?」
つまり「憧れ」だけで務まる仕事ではないし、給料も多くはない。家族にも負担をかけ、その任務は死と隣り合わせ。
そういう仕事に賭ける「覚悟」を問いただすのである。
最終的に候補者が決定した時に、日本人女性初の宇宙飛行士となった向井千秋氏の言葉が強く心に残った。
「宇宙飛行士になるための資質は全ての試される試験において60点以上を取る能力であり、スーパーマンは必要ない。」
そうは言いつつも、選ばれた方々の姿をこの本を通して見ていると、やはり私の目からすればスーパーマンに見えてしまうのが偽らざるところではある。
最後に、一番驚いたことは宇宙船内の無重力空間の中にいると、体内のカルシウムが溶け出し、なんと骨粗鬆症患者の10倍のスピードで骨がもろくなるという事実であった。この一点だけとってしても凄まじいとしか言いようがない。
とにかく、一気読み確実の感動ドキュメントである。