望外な喜び 作家「西加奈子」との出会い

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    JUGEMテーマ:読書

    昨日、紹介した西加奈子「炎上する君」がどうしても手元にほしかったのでアマゾンに注文して取り寄せた。

    自分の購入した本には帯はついていなかったが、ネットで調べてみると、又吉直樹が書いていることが分かった。

    それは、「絶望するな。君たちには西加奈子がいる!」である。

    なるほどと共感してしまった。そして自分と同じだと思い、嬉しくなった。

    「ある風船の落下」だけでなく、この短編集を貫いているのは【希望】である。

    何かにつまずいている人。自分自身の本質を見出すことができず悩んでいる人。本当の自分の気持ちに気づけないまま殻にこもっている人。

    そんなどこにでもいる普通の人々の行く先に小さく光る希望が描かれている。

    大好きな一冊が生まれた。

     

    その西加奈子の異色作ともいえる恋愛+ミステリーともいえる趣の「窓の魚」を読んだ。

    登場する4人の主人公。wカップルという設定ではあるが、関係はいささか込み入っており、誰も本当の自分の姿を明かすことはなく、疑心暗鬼のまま一泊の温泉旅行を過ごす。

    会話がかみ合うようでいてかみ合わず、すれ違いのようで微妙なところで交差することで、より猜疑心は深まる展開となっており、一時たりともページを置くことができない。西加奈子の確かな筆の力なのだと思う。

    そして、一人の女性の自殺や声だけは聞こえるが姿が見えない猫の存在といった味付けが、陰影を与えている。

    解釈は読者の想像力にゆだねられて終わるのであるが、こういう終わり方は嫌いではない。

    他のブログを見ると、謎解きに奔走して、何とか落ちを見つけることに躍起になっている方もいるが、そういう読み方をしていると窮屈になるだけではないかと思う。村上春樹の作品でも同様の試みをする読者がいて、落ちが分からないからつまらないという人も多くいるが、本との接し方としてはつまらないなあと感じてしまう。

    もやもやとした結末の後、この旅行を終えた後、4人は一体どうなったのか想像することが楽しみなのである。

    ただし、猫に関しては個人的にはメタファーだとは思っている。

    近くにいると感じながら決して触れることのできない存在。それは4人の主人公同士の心そのものである。

     

    西加奈子。注目すべき作家と出逢えたことは望外の喜びである。

     


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