JUGEMテーマ:読書
重松清の「一人っ子同盟」(新潮社)を読み終えた。
重松清にしか描けない世界観が十分にあふれている作品であった。
昭和40年代。自分自身が丁度、小説中の主人公と同じ小学生だった頃、「一人っ子」といえば、何か特別視されていた時代であった。
二人や三人兄弟がスタンダードであり、一人っ子は何か異質という目で見られていた。
なぜ、そう思うかというと自分自身が一人っ子であり、そういう目で見られてきたからである。
「一人っ子だからわがまま」「一人っ子だから恵まれている」
ステレオタイプ的な否定的な見方をされてきたような気がする。
一人っ子だからゆえの心の中の苦しみがあることなど全然頓着されないという時代であった。
この小説はそういった一人っ子の主人公たちに視点があてられている。
やはり、それぞれに小学生としては重すぎる楔を心に秘めている。
どんなに一生懸命にがんばっても、願ったことがすべてかなうわけではないし、だれ一人悪いひとや間違っているひとはいなくても、すべてが思い通りになるわけではない。
どうにもならないことって、あるんだよー。
ぼくとハム子にとっての最後の「奇跡の3分間」が訪れて、静かに光に翳りが交り始め、夕日が沈むエンディングの場面の余韻は強烈に心に沁みこんでくる。