3月11日に起きた東日本大震災でもっとも被害の大きかった自治体のひとつが宮城県石巻市である。海に近い市街地は石巻市立病院などいくつかの建物を除き、街は跡形もなく流された。
もとはデパートだったという建物に入る市役所にも1メートル強の津波が押し寄せた。
その市役所で地震発生以来、連日開かれていたのが「災害対策本部会議」。
本部長は亀山紘・石巻市長。市の担当者だけでなく、自衛隊などの責任者、地元の消防、警察の署長など約30人で構成される。
「昨日の炊き出しは9千食。ボランティアは1500人が参加しました」
会議にボランティア代表として参加しているNGOのピースボート共同代表の山本隆さん(41)は、その日のボランティアたちの“成果”を発表していた。片手にはiPad。
「先月のボランティアの1日平均参加数は?」
「支援の手が届きにくい遠隔地の活動状況は?」
会場からの質問に対し、山本さんはiPadの画面を手繰りながら、具体的な数字や事例を交えてテキパキと答えていく。時にはiPadに収められている画像を見せて、活動状況を説明する。行政関係者らが机を占拠する分厚い何冊もの書類ファイルをひっくり返しながら説明するのとは対照的。
山本さんのiPadには、地震発生直後から毎日提供してきた約45万食の炊き出しデータや、給水ポイントや避難所の位置を記した独自の地図など膨大な情報が入っている。
今回の震災では全国から被災地にボランティアが押し寄せた。だが、ほとんどの自治体では受け入れ態勢をうまくつくれず、ボランティア志願者たちの熱い思いを受け止めきれていない。だが、石巻市では市や地元の人とボランティアが一体となった「石巻災害復興支援協議会」を創設。6月10日までに活動したボランティアは約8万人にのぼる。「奇跡のボランティア組織」と呼ばれるこの「石巻モデル」を作り上げたひとりが、山本さんだ。阪神・淡路大震災をはじめ、世界各地の災害支援現場で手腕を振るってきた。
連日、彼の元には支援を求める被災者や他の地域のボランティアから相談が舞い込む。
「牡鹿半島の被災状況が最悪です。津波で道路が寸断され、救援物資の搬入もままなりません」
視察から帰ってきたボランティアが訴える。
石巻市の北東部にあり、海に大きく突き出している牡鹿半島は、住民の約2割が現在も避難している(地震発生当初は5割)。半島の海側は複雑に入り組んだリアス式海岸。半島の全体が勾配が急な山間部という地理的問題もあり、深刻な被害のわりに支援が遅れていた。
山本さんはiPadで「グーグルアース」を開いた。画面には、津波で瓦礫と化した海辺の集落の様子が浮かび上がった。
「沿岸部から1キロ以上も内陸に被害が及んでいる。ここに避難者がいるんだね(表示された家らしきものを指さしながら)」
「はい。この入り江の脇の道は寸断されているので、物資搬入には大きく迂回しなければなりません」
山本さんは、被災地で第三者情報を客観的に評価するのは難しいと、経験から語る。
「『全滅です』『大変です』『すごいです』といっても、どの程度なのか、どの地域と比べてなのかわからない。また、初めて震災支援に携わるボランティアは実際よりも過大評価してしまいがち。被害状況を聞く時は、必ずグーグルアースなどで被災地の様子を可視化できる環境が必要なんです」
といっても一日中移動しながら活動していると、パソコンと無線LANを持ち歩くのは不便だ。いつでもどこでも小型パソコン並みの画面でインターネットに接続できるiPadは重宝するという。
上記の記事は「AERA×アップルはお好き?」という書籍の中からの一部である。
i PADの操作性のよさを端的に示している。それは実感したユーザーにしかわからない快適さだ。
また、暗に普通のネットブック型のWINDOWS PCでは無理ということを示している。
いま、医療の現場においてもi PADやi Phoneを活用した「チーム医療3.0」が注目されている。
Windowsの終焉が近いというのは、このたびの未曾有の震災時に機能するべく操作性や命をすくためのイノベーションが全くなされていないことからも明らかである。