スポットライト(BOOK SIDE STORY2018)

本や音楽を思いのままに紹介する。
それでも言葉にこだわり、思いを伝えたい・・・
そして思いの中に魂を込める。
虚飾を排し、嘘を捨て去る。

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2018.12.01 Saturday

待望の絵本化 フランドン農学校の豚

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    JUGEMテーマ:読書

     

    以前このブログで記したことがある。

    宮沢賢治の童話の中で、どうして「フランドン農学校の豚」は絵本化されないのかということについて。

    ところが、2年前、2016年にミキハウスで刊行されていたのである。

    まさに待望の絵本化である。

    なぜ、いま刊行なのか。

    私見であるが、「食育」が学校教育の中でも大切な役割として位置づけられ、生命尊重が愛玩動物の愛護にあるだけでなく、生きていくためには動物を飼育し、殺し、食べるという行為こそが「生きる」ということなのであるということに目を向けさせるという意味合いが込められているのではないかと感じた。

    それを賢治は動物の目線に立って考えた絵本である。以下の言葉に賢治の心情は込められている。

     

    さればまことに豚の心もちをわかるには、豚になってみるより致し方ない。

     

    「おおい、いよいよ急がなくちゃならないよ。先頃の死亡承諾書ね、あいつへ今日はどうしても、爪判を押して貰いたい。別に大した事じゃない。押して呉れ。」

    「いやです。いやです。」豚は泣く。

    「厭だ?おい。あんまり勝手なことを云うんじゃない。その体は全体みんな、学校のお陰で出来たんだ。これからだって毎日、麦のふすま二升阿麻仁二合と玉蜀黍の粉五合ずつやるんだぞ、さあいい加減に判をつけ、さあつかないか。」

     

    森達也の「いのちの食べかた」では、動物を屠殺する人々=屠場で働く人々への差別の問題にも踏み込んでいる。

    世界一食べ物を廃棄し、食料自給率は主要先進国においては最低の国日本。また、生産者の高齢化に伴い、2030年以降耕作地は荒れ放題、後継者は大幅減になるという予想もされている。まさに死活問題である。

    そういう「食」について考えなくてはならないことが多い我が国において、この絵本はひとつの問題を提起している。

    読むべきは子どもではなく、大人である。

     


    2013.10.14 Monday

    モリス・レスモアとふしぎな空とぶ本

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      JUGEMテーマ:読書

      当たり前といってしまえば、それまでの話であるが、やはりブログの存在理由は記事であるということを痛感している。

      職場の人間関係や恋愛などさまざまな問題があり、なかなか思うように記事を書けなかった時には、アクセス数も風前の灯に近いところまで落ち込んだ。

      おとといから、記事を再び書き始めたところ、200以上のアクセスをいただき、大変うれしく思っている。

      このブログは自分にとっては宝であるので、大切にしていきたいという思いを改めて強くしている。

      ところで、久しぶりに絵本を購入した。

      「モリス・レスモアとふしぎな空とぶ本」である。

      2012年のアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した原作本である。

      本を愛し、本に魅せられたひとりの青年の物語である。

      モリスが傷んだ本を丁寧に直すシーンの絵は秀逸である。

      「本を開けば、いつでも 物語ははじまる。」


      2012.02.25 Saturday

      ACROSS THE ALLEY

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        生まれて初めて洋書絵本を買った。
        洋書は数冊持っている。
        すべて画集である。

        今回買ったのは自分が以前このブログでも好きな絵を描くE. B.ルイスの日本で未訳の「ACROSS THE ALLEY」である。
        自分流に訳せば路地をはさんでとか、路地をまたいでとかになるのであろうか。
        ルイスの絵もいいが、内容もとても素晴らしい。

        路地を挟んでの二人の少年の交流である。
        黒人とユダヤ人の白人。

        二人の趣味は違う。黒人の少年は野球。白人の少年はバイオリンを弾くこと。
        しかし、路地をはさんでの窓越しの交流から白人は黒人にバイオリンを渡し、黒人は少年にグローブを渡して変化球の投げ方を教える。

        黒人のバイオリンの技術の高さを見抜いた白人のおじいさんには暗い過去がある。
        第二次世界大戦時にナチスによって、バイオリンを弾くことを見とがめられ、指を破壊された。
        そして、奴隷のように酷使させられたのである。
        黒人の少年も告白する。
        自分の祖父も奴隷だったと・・・

        たかだか絵本と侮るなかれ。

        実に深い奥行きに支えられた友情の絵本である。

        くだらないタレント本のはるかかなた上を超えている。
        エンディングのすがすがしさは心に余韻を残す。

         

        2011.11.14 Monday

        遠い町から来た話

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          JUGEMテーマ:読書
          「アライバル」が代表作として知られるオーストラリアの絵本作家ショーン・タン「遠い町から来た話」(河出書房新社)をやっと手に入れることができた。
          タン氏は10月には来日し各地でワークショツプを開催するなど精力的な活動を見せた。

          さて、この絵本。一言でいえば限りなく読者の想像力を喚起する絵本ということに尽きる。
           
          たとえば、絵本のラストを飾る「カメ救出作戦の夜」。

          なぜぼくらはカメを荷台にのせて必死に走るのか? 追手は誰なのか?

          一斉手がかりとなることは書かれていない。ひたすら読み手が、想像するのみである。
          こういうことが嫌な人にはつまらない作品かも知れない。自分は感性が揺さぶられっぱなしである。

          絵本とはいうものの、考えながら読むので時間を用す。まだ収められている全作品を読んではいない。途中経過で申し訳ないが、個人的に一番好きなのは「遠くに降る雨」である。

          一人一人が自分の思いを書きつらねたものは詩というほどのものではなくゴミとなる。その捨てられてしまった一つ一つが、1つの大きな球になり天にのぼる。しかし、所詮は紙の塊。風に吹かれ雨に打たれてバラバラになり地上に降ってくる。

          さて、結末は?

          2011.09.05 Monday

          アメリカ現代史の暗部 黒人差別問題を扱った絵本

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            JUGEMテーマ:読書
            アメリカ現代史の暗部ともいえる黒人に対する差別問題を扱った絵本が続々と出版されている。
            「おじいちゃんの手」もその一冊だ。
            1950年代から60年代にかけて、アメリカの大手パンメーカー3社はアフリカ系アメリカ人に対する明らかな差別を行っていた。
            彼等は、床の清掃、トラックへの荷の積み降ろし、機械の修理などの仕事はできたが、パン生地を扱うことは許されなかったのである。
            1964年の公民権法が成立するまでのことである。
            そんな時代背景を受けてのこの物語は差別を受けながら耐えて生き抜いてきたおじいちゃんが、まごのジヨーゼフに自分の手を見せながら訥々と差別の実態と希望を語り聞かせる内容である。

            「そうだとも、ジョーゼフ。おまえの、その手が、どんな仕事を、しようと、もう、文句を、言われることはないんだ。おまえの、その手は、なんでもやれる。やれるんだよ。

            2011.09.02 Friday

            かあさんを まつ ふゆ

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              JUGEMテーマ:読書

              9月初めての投稿である。
              久しぶりに絵本を読んだ。タイトルは「かあさんをまつふゆ」である。
              2009年のコルデコット賞の銀賞に選ばれたハートウォーミングな絵本である。
              作はジャクリーン・ウッドソンである。自分はE・B・ルイスの絵が好きである。
              何ともいえない深みと美しさをそなえた写実的な画風は心に染み入る。
              黒人の女性がなかなか仕事につくことのできなかった時代。
              出稼ぎに出た母からの便りはない。そんな心細い少女の心情がきめこまやかに描かれている。

              そして、母さんの帰宅を知らせる手紙がやっと届く・・・

              最後の場面の絵は秀逸だ。

              2009.07.01 Wednesday

              体調悪く・・・

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                6月は結局 一回しか書き込みが出来ませんでした。
                もはやブロガーと名乗る資格すらないのかも知れません。
                それでも、懲りずにこのブログに立ち寄ってくれた人たち感謝します。

                心配して電話してきてくれたアンジェイさん。
                私の体調がもう少しよくなれば、いつものアイルランド・パブに行きましょう。

                唯一の自分の楽しみだった読書で細かな字が追えない、しかし活字には
                ふれていたいというジレンマの中、読みまくっているのは絵本。

                最近、心が温かくなったのは2冊。
                前作「ルリユールおじさん」で絶賛されたいせ ひでこさんの新作
                「大きな木のような人」。内容もそうだけれど、パステル調の絵が大好きです。

                もう一冊は幼児向きの「ともだち」ヘルメ・ハイネ作
                とにかく表紙の絵を見ていて、気持ちがほんわかしてきて衝動買いしてしまった本。
                2冊とも、大げさでなく、静かに心をじわっーと温めてくれる絵本です。 

                2007.09.25 Tuesday

                悲しさで胸が痛い・・・

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                  同僚から借りた一冊の絵本。 「わたしのいもうと」。
                  作者は以前、このブログでも紹介したことのある、「ミサコの被爆ピアノ」の著者松谷みよ子さんです。
                  声高に反戦平和を唱えるのではなく、静かな語り口の中に平和の重さ、尊さを語りかけてくれる作家です。
                  しかし。この絵本は主題が「いじめ」です。
                  とにかく読んでください。
                  小学初級からと裏表紙には記してありますが、中学生にも高校生にも、読んでほしい絵本です。
                  「差別こそが戦争への道を切り拓くのではないか。」
                  この小説のモデルとなった少女のお姉さんからの一通の手紙に、松谷さんは心を打たれます。いじめの問題は簡単には解決しない問題ですが、だから、何もしないのではなく、こうした一冊の絵本を通じて何かを感じ取ることが大切なのではないかと思います。

                  2007.08.28 Tuesday

                  久々に絵本の話題でも・・・

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                    最近、絵本について投稿していなかったので、久しぶりにお薦めの絵本を3つ紹介したいと思います。
                    今年刊行されたものばかりではないので、あしからず・・・
                    まずひとつめは2004年に刊行されて読者の話題をさらった、「てん」。
                    作者はピーターレイノルズ。訳は谷川俊太郎。
                    お絵かきの大嫌いな少年ワシテ。ワシテが苦し紛れに描いた「・」(ちっぽけなてんひとつ)
                    この・しか描かれていない画用紙にサインしてと先生は語る。その後で起こるワシテの生き方を変える出来事とは・・・
                    可能性の芽はどこにでもあるということを教えてくれる元気の出る絵本です。
                    2冊目は、「せかいのこどもたちのはなし」はがぬけたらどうするの?
                    この本は久々に再発刊されたほしくてほしくてたまらなかった一冊。
                    乳歯が抜けたときにどうしているのかを世界中の64の地域から集めた、おもしろ比較文化絵本です。
                    屋根の上に投げる国。鶏小屋に放り込む国など。読んでいて飽きない絵本です。
                    最後は、私の一番お気に入りに絵本作家、ウィーズナー「漂流物」。正真正銘の絵本です。語りはありません。絵を見て自分の想像力が試されるウィーズナーの本領発揮の一冊です。

                    2007.07.12 Thursday

                    被爆ピアノの奏でる平和の音

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                      長年にわたり戦争を見つめてきた作家、松谷みよ子さんの最新の書き下ろし作品である「ミサコの被爆ピアノ」を読みました。
                      1945年 8月6日。爆心地より1.8キロの地点で一台のアップライトピアノが被爆しました−の帯の言葉に引き寄せられたのです。
                      なぜなら、先日このブログにて紹介した「きみはヒロシマを見たか」の中にも被爆ピアノが紹介されており、原爆資料館に寄贈されたピアノの修復にあたり、河合楽器のプロの調律師が尽力したことが記されています。
                      鍵盤をたたくと、素人には聞き取れない音の震えがあることを察知した調律師は、ピアノを分解してみた。すると、爆風に飛び散ったガラス片が10数片ピアノの内部からこぼれ出た。ガラス片は人体を傷つけただけでなく、こんな形でも残り被爆地「ヒロシマの証」となったと綴られています。
                      そして、すべてのガラス片の摘出手術を4日間昼夜を問わず行い、37年ぶりにそのピアノの音色が資料館に鳴り響いたと書かれたくだりを読んだとき、それこそが「平和の音」であることをしみじみ感じました。
                      「ミサコの被爆ピアノ」は資料館とは別の運命をたどるお話ですが、絵本ですので大変読みやすく、このピアノは現在でも被爆ピアノのコンサートで、その音色を響かせているそうです。」一度、そのピアノが奏でる、そのピアノでしか奏でられない「平和の音」を聞いてみたいと素直に思います。

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