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天地静大
読書 / カーソン・ライダー 
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    クラシック音楽と山本周五郎の本。

    最近の休日の決まった過ごし方である。

    ブログでは音楽のことをテーマに書くことが多くなったが、本にも親しんでいる。

    周五郎の長編「天地静大」(新潮文庫)を読み終えた。

    時代は幕末。王政復古の大変革の中、倒幕派と佐幕派の分かれての殺戮が横行している中で、自分の未来の行く末に怖れ、戦き、右往左往しながら生きている若者たちが主人公である。

    杉浦透もその一人である。

    「おれたちに、はたして将来はあるだろうか。おれたちに生きていくことができるだろうか。」

     

    上巻は時代のうねりが押し寄せてくるその前夜という感じで、物語が静かに大きく動いていくさまを表している。ともすれば、周五郎らしからぬドラマ性の薄い展開が淡々と続く。

    しかし、下巻に入るやいなや、一気に様々な人間模様がドラマティックに展開し、奔流のような勢いで進んでいく。

    そこには、時代の変革に伴う政治的な色合いだけでなく、男と女の真実の愛、狂人になってまで女性を思い続ける悲哀、弱い者同士が結びつく人情、一命を嫁して問う武士の誇りなど、周五郎作品のテーマの集大成ともいえる内容がぎっしり詰め込まれている。

    面白くないわけがない。

     

    「人間が苦しんだり悩んだり、殺したり愛し合ったり、権力の争奪に狂奔したりしているとき、山河はいつも変わらず、このように静かに、重々しくしっかりと存在している」

    ーおれは自分の学問を守り抜いていくぞー

    杉浦透のこの言葉は、不確実・不透明な現代社会に生きる私たちにそのままあてはまる言葉であり、強いエールでもある。

     

    最後に、透と結ばれるふくの存在がこの作品に実に清々しい色どりを与え、大きな魅力を放っていることを付け加えておく。

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    読書の愉しみ・思わぬ掘り出し物との出合い
    読書 / カーソン・ライダー 
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      先月は一か月で12冊の本を読破した。

      中心は司馬遼太郎や山本周五郎であったが、意外な掘り出し物もあった。

      柳広司の「シートン探偵動物記」(光文社)吉森大祐の「幕末ダウンタウン」(講談社)である。

      柳広司は今までにも夏目漱石を探偵役に見立ててのミステリーがあり面白く読ませてもらった。

      やはり今回もシートンの動物に関する博学な知識をベースにしながら緻密に謎を解いていく過程を楽しませてくれる。

      なかなかの佳品である。

       

      「幕末ダウンタウン」は第12回の小説現代長編新人賞を受賞した作品である

      新選組とお笑いを組み合わせての京都・大阪など上方を舞台にしてのストーリー展開は実に小気味よくおもしろかった。

      吉森氏はよほどお笑いが好きなようで随所にギャグやお笑い番組名が取り込まれている。そこも本書のひとつのみそである。

       

      「およそ男子の仕事とは、やりたいことをやることではない。やるべきことをやることだ。誰にもやるべきことがある。」

      新選組隊士・濱田精次郎の人間としての成長を描いた爽やかな青春小説といえよう。

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      柳橋物語・むかしも今も
      読書 / カーソン・ライダー 
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        いま、好きな作家は?と問われたら間違いなく山本周五郎と司馬遼太郎と答えるであろう。

        読書にしても音楽にしてもその時その時の心象を表すものであるけれど、この二人の作家の放つ物語の力にいま強く惹かれている。

        昨日は、戦後の山本周五郎の「下町もの」といわれるジャンルの先駆け的な作品といわれる「柳橋物語・むかしも今も」(新潮文庫)を一気に読んだ。

        「柳橋物語」のおせん、「むかしも今も」の直吉。

        ともに愚直なまでに一途に相手を思うその姿に、読者である私たちは感情を投影し、変転する運命に一喜一憂しながら、思いを共有するのである。

        そういう小説世界を、現代小説に求めるのは不可能である。また、非現実的であろう。

        そんな時代だからこそ、周五郎の描いた人と人とのつながりの温かさやまっすぐに人を思う姿に素直に感動するのである。

        「人間のすべては性善なのだ」という周五郎の心の奥底に流れている想念を感じさせてくれる。

        だから、おせんを疑わざるを得なかった庄吉も博奕にはまり身代をつぶす清次をも決して否定的な観点から突き放すことはしない。

        「赤ひげ診療譚」でも度々語られていた、愛すべき人間を不幸に陥れるのは自然と政治の暴威であり、その嵐に翻弄されながらも懸命に生きていく名もなき人間を愛情深く描くところに最大の魅力がある

         

         

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        人生のバイブル 周五郎の小説
        読書 / カーソン・ライダー 
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          夏季休暇中である。

          しかし、何もしなくても時は無常に過ぎていく。

          休みは来るまでを待っている時が一番楽しいというのは真実だろう。

          さて、8月に入り、読書欲は止まらない。

          司馬遼太郎の「国盗り物語」の面白さに歓喜し、立て続けにいま山本周五郎を読んでいる。

          定番の物語の展開ではあるのだが、それでも語りのうまさに引き込まれて飽きないし、何といっても読後感のよさは絶品である。

          「艶書」「ならぬ堪忍」(新潮文庫)を読破した。

          「艶書」の中の「五月雨日記」が特に心に響いた。

           

          「どんな過ちでも、この世で取り返しのつかぬことなどない。人間はみな弱点をもっている。誰にも過失はある。幾度も過ちを犯し、幾十度も愚かな失敗をして、そのたびに少しずつ、本当に生きることを知るのだ。・・・・それが人間の持って生まれた運命なのだ。」

          これと同様の言葉が「艶書」でも出てくる。

          山本周五郎の心の底にある人間観が滲んでいる。

           

          そんな言葉を綺麗ごとだと笑う人もいるだろう。そんな言葉が通用するほど世の中甘くないよと嘯く人もいるだろう。

          しかし、自分は思う。

          人間の心の裡にある善なるものを信じる気持ちがなければ、世の中は何も変わっていかないのではないかと。

           

          苦しみや辛さや、醜さやいやらしさを経験し、そういうものに鍛えられてこそ人間は成長していくものだという周五郎の言葉が肺腑をえぐる。苦しみや辛さのフィルターを経てなお、正論や綺麗ごとを堂々と主張できる志をもちたい。そのためには己の生き方に対して相当の覚悟が必要である。

          周五郎の小説は、人生のバイブルである。

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          空白の桶狭間
          読書 / カーソン・ライダー 
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            自分は未読であるが「信長の棺」でデビューした加藤廣「空白の桶狭間」(新潮社)を読んだ。

            世に名高い雨中の奇襲戦で奇跡の勝利を収めた織田信長の桶狭間の戦を秀吉の策謀という視点から描いている。

            歴史ミステリーとして考えればなるほど興味深い読み物であり、一気読了に耐える内容でもある。

            ただ、司馬遼太郎の「国盗り物語」を読んでいるなかで、この小説にふれるとあまりにも織田信長が凡庸に描かれすぎていることに大きな違和感を感じざるを得ない。

            桶狭間の戦いが秀吉の謀議による「山の民」50人による野犬を駆使しての奇襲というのはエンターテインメントとしては面白いかもしれないが、無理があるだろう。司馬遼太郎が記述した通り、2万の今川義元の軍勢がいくつかに分かれて昼食をとるにあたり、平らな窪地として田楽狭間が選ばれ、約5千といわれる義元付きの兵が集結しているという状況が妥当である。その隙を見計らって、篠付くような嵐の中奇襲を仕掛けたというほうが説得力がある。

            それでも織田軍は今川勢の約5分の1の千人という手勢であったことを考えれば、やはり奇跡の勝利といえるだろう。

            そういう難点はあるが、楽しく読めたということは加藤廣の筆力であろう。

            また、司馬作品との比較でいえば、濃姫や父である信秀と信長の関係性がほぼ真逆ともいえる解釈の上に描かれており興味深かった。

            多角的に歴史上の人物や出来事をとらえる視点を与えてくれる歴史小説はおもしろい。

             

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            破格のエンターテインメント小説「国盗り物語」
            読書 / カーソン・ライダー 
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              うだるような猛暑が連日続いているが、不思議なもので体が自然に慣れてくる。

              逆に効かせすぎともいえるクーラーの冷気に体が順応していかないことがある。

              夏季休暇に入り、読書やクラシック音楽を楽しんでいるのだが、ひと気づくと「仕事」をしている自分がいる。

              同じ職場の若手には「ワーカホリック」になるなと注意しているのであるが、あまり説得力はない。

              とはいっても休みは休み。ほぼ毎日図書館に通っている。

              司馬遼太郎「国盗り物語」を堪能している。

              文庫本になおせば4冊、2100ページの長尺であるがあれよあれよという間に4冊目に突入した。

              一言でいえば、無類の面白さである。流石は司馬遼太郎。人物の描き方が抜群にうまいだけでなく、物語としての組み立てが見事である。主要人物の斎藤道三や織田信長、明智光秀だけでなく妻、側室にいたるまでその人物像が浮かび上がってくるかのような筆致がたまらない魅力である。

              「国盗り物語」は自分が中学1年生の時のNHK大河ドラマであった。その時、原作を買い求めたのであるが当時の自分にはその面白さがつかみきれず、途中で挫折した苦い思い出がある。あれから45年。

              やっとその面白さを堪能できるようになった。

               

              司馬遼太郎は前編において「雑話」を挿入し、物語のそれ以降の展開を読者に指し示している。

              「この物語は、かいこがまゆをつくってやがて蛾になってゆくように庄九郎が斎藤道三になっていく物語であるが、斎藤道三一代では国盗りという大仕事は終わらない。道三の主題と方法は、ふたりの『弟子』に引き継がれる。」

              二人の弟子とは、娘 濃姫の婿となった織田信長。もう一方は妻 小見の方の甥である明智光秀。

              そして、弟子二人は主従の関係になり、やがて本能寺で相搏つことになる。

              それは歴史の必然なのか、皮肉なのか?

              ともあれ中世的な価値観の簒奪者なりえた信長となりえなかった光秀は、全てにわたって対比的な人生を送ってきた。

              その両者の心理的な溝が深まっていく過程の描き方は歴史好きにはたまらない魅力をもって胸に迫るものがある。

              司馬遼太郎、破格のエンタテインメント小説である。

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              ゆけ、おりょう
              読書 / カーソン・ライダー 
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                このところ軽いスランプというかブログを書こうという気が起きない。

                読書はしているのであるが・・・

                今年に入りというか昨年から司馬遼太郎の歴史時代小説にはまったことが契機になり、そのジャンルの本を中心に読んでいる。

                今は最近注目している門井慶喜の「シュンスケ」と司馬遼太郎の「国盗り物語」を読んでいる。

                今日は先日読み終えた同じく門井慶喜「ゆけ、おりょう」(文藝春秋)を紹介したい。

                おりょうとは坂本龍馬の妻のおりょうさんのことである。

                幕末期を描いた小説の中では必ず竜馬と同じくおりょうさんも登場する機会が多いので、大酒のみできっぷのよさという女性像は有名である。

                ただ、今回じっくり読んでみて、竜馬亡きあとの「おりょう、竜馬なしでも」の章がとくに心に残った。

                明治に入り、おりょうは横須賀に流れてくる。

                そこで出会ったてきやの西村松兵衛の妻におさまり生涯を終えることになる。

                しかし、そこまでの経緯が複雑であった。

                竜馬の実家では乙女姉さんは歓迎してくれたものの、坂本家の当主である兄の権平とその妻に陰湿に嫌われ、その後菅野覚兵衛の実家に身を寄せ、心休まる時間を過ごすのだが、鳥撃ちや魚釣りなど何をしても心は竜馬のことを思い出し、揺れ動く始末。

                そして、竜馬からの手紙を燃やして出立するのである。

                 

                ほうっておいたら人にだまされるか、いじめられるかして野垂れ死にするに違いない、そういう男の世話を焼くのが何より心が張るのだろう。誰かを生きさせてやることのよろこび。それがおつるの・・・・いやおりょうという女の、一番の芯や。

                26年連れ添った松兵衛のこのつぶやきの中にこそ、おりょうの真髄があるような気がしてならない。

                 

                贈正四位阪本龍馬之妻龍子之墓 

                浄土宗・信楽寺にひときわ高く建てられている。

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                快作!「家康、江戸を建てる」
                読書 / カーソン・ライダー 
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                  最近、特に注目している作家がいる。

                  門井慶喜である。「銀河鉄道の父」で見事に直木賞を受賞した作家である。

                  最新作である「新選組の料理人」についてはこのブログ上でも紹介したことがある。

                  まず、題材への目の付け所がユニークであり、おもしろい。

                  今日、読み終えた「家康、江戸を建てる」(祥伝社)にしてもそうである。

                  1590年、秀吉から国替えを要求された家康。関八州240万石は名目とは違い、湿地だらけの場所であった。

                  到底、人が暮らすにうえで好適とはいえない場所である。家臣団が猛反対をするなか、「関東に未来あり」と決断をし、類のない国家的プロジェクトに着手し、適材適所とばかりに人材を配し江戸のインフラ作りに取り組む家康。まさに快作である。

                  描かれるのは、武をもって名高い将とは違い、名もなき職人たちのプライドや真摯な仕事にかける熱い思いである。

                   

                  特に興味深かったのは江戸城の天守を白無垢に染めた家康の着想とその問いをかけられた2代将軍秀忠のやりとりである。

                  信長の安土城も秀吉の大阪城も天守閣の色は黒。

                  黒とは土の色であり、死肉の貪る烏の群れの色であり、総じて戦争の色。

                  白とは、平和の色。

                  戦は終わったことを天下万民に知らしめる「平和宣言」。

                  そう解釈する秀忠に「半分じゃな」と答える家康。

                  ここら辺のやり取りは小説ゆえの面白みであろうが、なかなか説得力のある問答でもある。

                  「白は生のみの色にあらず。死の色でもある。」

                  「わしの今日あるのは、無数の死者のおかげなのじゃ。」

                  70有余年の人生において、50年以上戦に身を投じ、人生は重荷を背負いて歩くが如しと遺した家康らしい、天守を白御影の墓石ととらえる言葉が胸に強く残る一冊である。

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                  僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう
                  読書 / カーソン・ライダー 
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                    「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」(文春新書)を読んだ。

                    各界の著名人が語る、何者でもなかった時代の話に思わず引き込まれた。

                    今年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和さんの「先入観が崩れたときに、世界を発見する」という話はとても心に響いた。

                    そして、日本の霊長類研究の第一人者であり、京都大学の総長でもある山極壽一さんの大学生に向けてのメッセージにはとても共感した。

                    「自分にしかできないことは何だろうと、思ったほうがいい。あなたというのは、この世にひとりしかいないんだから。自分だからこそできることを探してみてほしい。」「人間の一番重要な能力は諦めないということです。動物はできなかったら諦めちゃう。人間はなかなか諦めない。失敗しても失敗しても諦めない。だから、人間は空を飛べるようになったし、海中深く潜れるようになったし、様々な道具を発明し、人間の身体以上のことができるようになった。諦めなければ、いつかきっとできる。これは、我々人間がみんなもっている能力なので、使わない手はありません。」

                     

                    このメッセージは学生だけではなく、仕事に就いている私たち社会人にもあてはまる心強いエールである。

                     

                    その他にもサルの生態について語られら人間にある白目の果たす意味の大きさやゴリラのホモセクシャル行動など好奇心そそられる話題も多く、楽しめる一冊になっている。

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                    「司馬遼太郎」で学ぶ日本史
                    読書 / カーソン・ライダー 
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                      JUGEMテーマ:読書

                       

                      NHK出版新書「司馬遼太郎」で学ぶ日本史を読んだ。

                      特に印象深かったのは、明治期においてヨーロッパという名の憲法国家のブティックに日本が入り、どの服が自分に合うかと模索していたところ、フランスとの戦いに勝利をおさめたドイツ・プロイセンに目がとまった。そして、着てみたら、天皇や政府といった頭や上半身の大きな当時の日本の身の丈にジャストフィットした。そこからドイツ服を買って帰ろうということになった。

                      勿論、イギリス服がよいと主張していた大隈重信や福沢諭吉の考えはしりぞけられ、伊藤博文らの意見が大勢を占めるに至った。

                      そして、ドイツ式の作戦思想が後の日露戦争に有効であり、勝利を収めたことでいよいよ「ドイツへの傾斜」を助長させる結果になったという部分である。

                      このことを司馬遼太郎は「この国のかたち」に書いている。

                      しかし、明治期はまだ日本の軍人は自国を客観視し、他国と比較する能力を有していたと指摘する。

                      結局、昭和期の軍人がひたすらに勝ち目のない戦争に没入していったのは、あたかもドイツ人になったかのような自国中心の、まわりに目を向けることのなかったその独善性にあったと述べている。

                      そして、ただ一種類の文化を濃縮駐車し続ければ、薬物中毒になるのは必然と指摘している。

                      ドイツという薬物注射の中での「統帥権」こそが日本という人体を蝕んでいった。

                      やはり、この辺の語りは強い説得力をもって胸に迫るものがある。

                      この新書の著者は「武士の家計簿」で評判をとった磯田道史氏である。

                      司馬遼太郎が、昭和期の物語を書く代わりに「この国のかたち」に込めた思いを知ることができた。

                      大変、興味深い一冊である。

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