永遠のイエローマジック ゴッホの「黄色い背景に15本のひまわり」

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    久々に絵の話題である。

    本来なら、今月の3日から上野の国立西洋美術館で開催されているはずの「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けてストップしたままの状態である。

    日本初上陸となる61作品の中でも、一際注目を浴びているのはゴッホの「ひまわり」とフェルメールの「ヴァージナルの前に座る若い女性」の二大名画である。

    完全ブックガイドを買って楽しみにしていたのであるが、仕方がない。

    個人的にはゴッホの「ひまわり」に関心は寄せられている。

    当時の画家は補色の技能を用いてひまわりなどの静物画を描いた。

    モネの「ひまわり」も素晴らしい作品である。

    パリ時代のゴッホもその技能に魅せられ「4本のひまわり」を描いている。

    しかし、ゴッホがゴッホたる所以は、そこに止まることなく背景も黄色という、黄色で統一された「ひまわり」を描き続けたことである。

    確かに当初3枚の花瓶にいけられた「ひまわり」の絵の背景色は緑や青である。

    アルルに移り、写生で描いた「ひまわり」が今回日本に初お目見えとなる「黄色い背景に15本のひまわり」である。

    今回の作品展には出品されないが、私が一押しの静物画は「マルメロ、レモン、梨、ブドウのある静物」というアムステルダムのファン・ゴッホ美術館にある作品である。

    この作品も黄色で統一された他の画家では表現し得ない作品であり、大傑作であると自分では思っている。

    同系色で全てをまとめるというのは至難の技で、輪郭がぼやけてしまいがちになるという難点がありながらも敢えて表現したゴッホ。

    単に美しさを描くのではなく、その先にあるもの、「描く対象物の本質」を見据えた色遣いとは何かを考えていたのではないかと勝手な想像を膨らませてしまう。

    ガイドブックには「永遠のイエローマジック」と紹介されていたが、言い得て妙である。


    「素朴派」 アルフレッド・ウォリス

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      自分自身にとって初めての絵本の下書きは大体終えることができた。

      題材は宮沢賢治とクラシック音楽とのつながりについてである。

      まだ出来上がっていないのだが、ふと次に書くとしたら何を題材にしようかと頭を巡らせてみた。

      気が早いと言われそうであるが、記念として一冊で終わりというのでは何かつまらないと感じたのである。

      いろいろ考えてみた時に閃いたのが数年前に世田谷美術館で見たアンリ・ルソーをはじめとする素朴派と呼ばれる人たちの絵である。

      「素朴派」とは、簡単にいえば画家を職業としない者が、正式の美術教育を受けぬままに絵画を制作しているという絵画のひとつの流れである。特に有名なのは、さきにも記したアンリ・ルソーであろう。

      個人的に私もルソーの絵は好きである。

      しかし、次の絵本の題材にしたいのはアルフレッド・ウォリスである。

      彼についてはほとんど文献もなく、日本での展覧会も今までにわずか2回というわが国では知名度がほとんどない画家である。

      しかし、本国の英国では有名である。

      彼に注目した理由は、船乗りであったかれが70歳を過ぎてからキャンバスに向かったという事実である。

      無名の彼が世に出るきっかけとなったのは、彼が住むコーンウェルの港町、セント・アイブスを訪れた画家であるベン・ニコルソン、クリストファー・ウッドが偶然にも、ウォリスの家の前を通りかかり、壁に掛かった絵を目にしたことによるものだ。

      ボール紙の切れ端、廃材に船舶用のペンキを用いて描かれた絵が、英国の美術界に大きな衝撃を与えたのである。

      こういういきさつを知ると、俄然ウォリスに対しての興味が湧いてきたのである。

      どこまで調べられるか分からないが、挑戦してみたい。


      ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展

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        5連休のGWもあっという間の過ぎ去っていくという感じである。

        そんな中、昨日は東京都美術館に行った。

        お目当てはボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展である。

        一言でいうと面白かった。24年振り来日の傑作を堪能できた。

        絵自体はそんなに大きいものではないが、その絵を東京藝術大学COI拠点の人たちが再現した3Dコンピュータグラフィックやアニメーション技術を駆使して「バベルの塔」をマクロとミクロの視点で紹介した動画が素晴らしかった。

        ブリューゲルは「バベルの塔」の中にわずか1ミリ単位の筆遣いで人物を1400人描いている。

        それは実物では幽かに分かるほどもものだが、CGで再現されものの中ではくっきりとした存在感を放っている。

        小さな人々を、今にも動き出しそうな気配をこめて描いたブリューゲル。

        その精緻さはまさに圧巻である。

        だからこそCGの中で動かしてみようという発想につながったと東京藝術大学COI拠点リーダーの宮廻正明氏は語る。

        また、「バベルの塔」にちなんで、旧約聖書の「創世記」から読み解くという公式ガイドブックも楽しめた。

        知っているようで知らなかった「バベルの塔」にまつわる神と人間の関係。

        バベル=混乱。

        「バベルの塔」が示唆しているものは神からの人間に対する戒めという考えが一般的だが、ブリューゲルの精緻な絵画をみていると、その描かれている世界観はただそれだけではないような気がする。

        バベルの塔の高さ。約510メートル。

        その高さの建築物を作り上げようと挑み続ける人間の姿こそブリューゲルは描きたかったのではないか。

        ちなみに「バベルの塔」は現代にも生き続けている。

        フランスの南にある欧州の首都ともよばれるストラスブールにある欧州会議場は「バベルの塔」をモチーフにしている。

        私の大好きな建築物のひとつである。

         


        無限成長美術館

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          心の聖地である上野の国立西洋美術館が世界遺産に登録される見込みとなった。
          素直に嬉しい気持ちである。
          近代建築の大建築家であるフランスのル・コルビジュエが日本で建築した唯一の建造物である。
          コルビジュエの発想は「無限成長美術館」である。
          展示物が増えた場合は螺旋状に増築していくといった考えである。
          結局螺旋状に増築されることはなかったものの、その考え方は大胆にして緻密である。
          私が一番気に入っている場所は2階をぐるっと見学して1階に下りた場所にある近代彫刻を展示してある空間である。そこから本館を見渡した時の中庭の風情は格別である。
          特に雨の日がいい。
          雨は生来嫌いなのであるが、この空間だけは雨の方が断然いい。けやきの大木をはじめとする木々の緑が濃さを増し、心を優しく包んでくれる。そなえられた大きめの木のベンチとブロンズの彫刻、そして窓外の緑。
          見事な配置である。
          いつまでも座っていたくなる。先日訪れたカラバッジョ展でも最後はこの空間でひとり静かに佇んでいた・・・
          心が洗われる瞬間であった。

          雨の国立西洋美術館

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            先日、およそ1年ぶりに 上野の国立西洋美術館を訪れた。
            あいにくの雨模様であったが、逆に雨が西洋美術館の雰囲気を一層際立てていた。
            特別展にはあまり興味がなかったので常設展だけ見学したのだが、新しい発見にふれることができた。
            なんと、寡作で知られるフェルメールの作品と思しき絵が初出で掲示されていたのである。
            これは感動であった。
            フェルメールの初期のころの作品と見られるものであり、完成された筆致には程遠いがファンにはたまらない出会いであった。

            また、改めてモネの素晴らしさを再確認した。
            特に水面に映った陰などの描写である。
            近くで見ると荒々しく大胆に色をおいているように見えるのだが、少し離れた位置で見るとまさに水面の漣の様子が絶妙な色合いで見事に表現されているのである。

            そして、ブロンズ像が展示されている彫刻の間から雨越しに見る中庭の造形。
            まさしくモネの画材になりそうな空間の配置であり、雨が一層緑を引き立て、何ともいえぬ安らぎの雰囲気を醸し出しているのである。
            雨は基本的に嫌いであるが、国立西洋美術館と雨の組み合わせはベストマッチだと感じた。
            過ぎゆく時間を忘れるひとときであった・・・

            ブリヂストン美術館 BEST OF THE BEST

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              先日、久方振りにブリヂストン美術館を訪れた。
              東京駅 八重洲口徒歩7分。
              BEST OF THE BEST公開中であるからだ。
              ブリヂストン美術館はリニューアルのため工事に入る。
              BEST中のBESTということだけあって長蛇の列であった。
              内容も圧巻であった。
              セザンヌ、ピカソ、ルノアールの名作が並ぶ。
              新たに買い付けたカイユボットの絵も目を引いた。
              しかし、何より感動したのはルオーの作品である。

              生涯のテーマとして描いたピエロ。
              郊外のキリスト、そしてエルサレム。
              絵を前にして何分佇んでいたであろうか。

              見ている者の心を釘づけにする力がみなぎっている。
              ステンドグラス職人であっただけあって、塗り重ねた色を削ぎ落しては重ねることを繰り返すことで陶器の釉薬のような不思議な透明感を放つのである。
              暗い色調にあって、決して澱みのない光が湧いてくるかのようであった。


              静かな余韻を心に宿すことができた。
              贅沢な時間が流れた一日であった。

              アートブック 「図書館奇譚」

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                「新月の夜は、目のないイルカみたいにそっとやってきた。」

                村上春樹
                の第三弾アートブック「図書館奇譚」を購入した。
                初出は「カンガルー日和」に収められていた名短編である。
                村上春樹本人によるあとがきを読むと、なんと初出のものをヴァージョン1だとすると今回のものは4であるということだ。
                つまり、その都度楽しみながら手を加えている作品ということになる。
                アートブックにふさわしく今回もドイツのカット・メンシックの女流画家の切っ先のするどいイラストが興を添えている。
                図書館の地下に迷いこんだ主人公が謎の美少女の力を借りて羊男と脱出できるかという短いながらスリリングな展開で自分はとても好きである。

                美少女の登場にしろ、井戸にしろ、その後の大傑作となる「ねじまきどりクロニクル」において重要なファクターとなるモチーフも既に登場しており、興味は尽きない。
                アメリカ版、イギリス版ではイラストが異なっているということなので、見てみたいという強い衝動に駆られている。

                横浜美術館 ホイッスラー展に行ってきた

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                  昨日、横浜美術館に行った。
                  日本では確か27年ぶりに開催されている、アメリカの画家 ホイッスラーの展覧会を見るためである。
                  正月明けの月曜日ということもあり、混雑はしていなかったので、ゆったりひとつひとつの絵画を堪能することができた。
                  ホイッスラーといえば、日本の浮世絵に影響を受けた画家という認識はあったが、今回の展覧会でまず驚いたことは、エッチングつまり銅版画の作品の素晴らしさである。
                  画集ではあまり紹介されていないので、なおさら感銘をうけた。
                  版画なので基本、白と黒の世界である。
                  しかし、微妙な濃淡で奥行きを表現していく技術は素晴らしいものがあった。
                  また、特別展示映像 ピーコック・ルームも息をのむ美しさでありその独創性には心を奪われた。
                  現存する唯一の室内装飾である。
                  陶磁器と孔雀そして日本の和服を来た女性との組み合わせ。
                  部屋の装飾を依頼したのがイギリスの富豪であったので、大胆不敵ともいえるホイッスラーの主張である。
                  事実、依頼主は激怒し、仲違いをし、二度と会うことはなくなるわけだが、その依頼主であるレイモンドはこの装飾に手を入れることは決してなかったのである。それほどまでにこの装飾が放つ力は圧倒的でさえある。
                  ホイッスラーが主導した「絵画は道徳的な教訓を伝えるものではなく、画面における色と形の調和による視覚的な喜びをめざす。」という唯美主義の到達点ともいえる風景画「ノクターン」は絶品である。
                  ほとんど黒という限定された色づかいでこれだけの奥深い表現ができるものなのか。
                  正直、この展覧会は当初考えていた以上の感動を与えてくれた。
                  ホイッスラー。また、お気に入りの画家が増えた。大きな喜びである。

                  素朴派 アンリ・ルソーの絵

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                    先日 世田谷美術館に行った。
                    「アンリ・ルソーから始まる 素朴派とアウトサイダーズの世界」を見たかったからである。
                    ルソーは市税の徴収員であった。その彼が突如、絵の世界に入るのを決心したのは49歳。
                    自己流の絵は子どもの落書きと酷評された。
                    しかし、彼は諦めることなく、描きたいという思いを強くもち、黙々と製作に打ち込む。
                    食費にも困るという状況の中にあってだ。
                    この真摯な信念に心打たれるのである。
                    決して上手とは言えない絵ではあるが、不思議と胸に迫るものがある。
                    テクニックを凌駕する思い。
                    本来、表現活動とはそういうものであろう。
                    有名、無名以前に絵で伝えたいというひたむきな思いに感動するのである。
                    個人的には「眠るボヘミアンヌ」が好きである。
                    緊張感のなかに独特の詩情を漂わせるルソーらしい絵である。

                    ジャンヌ・サマリーの肖像

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                      先日 何年かぶりに横浜美術館に行った。
                      プーシキン美術館展である。
                      お目当ては、日本初公開となるルノアールの
                      「ジャンヌ・サマリーの肖像」である。

                      決して大きな絵ではないが、やはり存在感は抜群であった。
                      絵が私を呼んでいるのである。
                      「見て。」と・・・
                      多くの来場者の網の目を縫うように、間近でしばし絵を見つめていた。

                      よく見てみると、モデルのドレスの青色に呼応するように、胸元や頬に青色を施していることが分かる。ゆえに、その上にぬられたピンクが映え、立体感を醸し出しているのである。

                      写真技術が進歩したとはいえ、本物を見ないと伝わってこない質感がある。

                      背景の羽のような寒色も肖像画をぐっと引き立てている。

                      鮮やかな趣向である。

                      ルノワールの肖像画の中でも最高傑作のひとつという触れ込みもうなずける。

                      久々に絵を見て心がときめいた。

                      ジャンヌ・サマリーに恋をしてしまった。
                       

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